6117声 納品する

2025年03月07日

 長い間動画を生業としてきたが、数年前まで写真については素人を決め込んできた。実際、細かくは書かないが同じ人や物事を記録する時も映像と写真とは別物と思っている。映像は流れを見せるもの、経過を伝える必要がある。一方の写真は瞬間の切り取り。そういった違いがある程度わかったので、必要となれば写真も撮るようになった。まだまだとは思うが、仕事でも高崎市の工場のホームページ用写真を撮影したり、記録にあまり人をさけない現場で映像を撮影しながら写真も同時に撮影したりもしている。

 昨年の今頃からずっと、東吾妻町の「岩島麻保存会」の活動を記録してきた。日本では縄文時代から縄作りに使われていたという麻。明治以降は綿や輸入繊維の台頭、戦後は大麻取締法の影響や安価な麻素材の輸入などで麻の栽培自体は珍しいものとなったが、ぼくの家のそこそこ近所でもある岩島地区では今もメンバー10人ほどの保存会の方たちが種まきから繊維にするまで一貫した仕事を続けており、丁寧に作られた麻は、宮内庁や神社庁にも送られている。

 保存会も極端な高齢化となったことで「その技を後輩に継ぐために記録したい」という仕事をいただいた。近いことも利点となり何度も足を運んだ。はじめは映像で記録するだけだったが、1つ1つの作業は長く、写真でも記録するようになった。そして、アーカイブとしての映像とは別に写真集を制作することになった。僕にとってはもちろん、自分の写真がメインで本ができるというのははじめての体験である。

 今日は印刷所へ、その写真集を受け取りに行った。非売品となる可能性があり500冊と全く多くはないが、保存会の方たち同様に、もしかしたらそれ以上に嬉しいものがある。そのまま吾妻へ直帰し、会の方にお届けした。ぼくは基本的に「何かを記録して残す」仕事をしている。目先の作るものに忙しくて、過去作ったそれがその後どんな影響を与えたかまでは追い切れていない。けれどふと何かの時に「この動画こんなに再生されていたんだ」とか「あの仕事があのアーティストのその後にも影響したんだ」とか過去からのギフトのようなものを受け取る瞬間ある。この写真集「黄金の一 岩島麻」が、この先貴重な資料・表現として残ってくれたなら、さらにさらに嬉しいのである。