滴り落ちる汗も拭わずに、焦点の合わぬ目でぼんやりと宙を見つめている。
ここは、日帰り温泉のサウナ。
隣から聞こえて来るのは、大学生と思しき男二人の会話。
「じゃあ、一年のアイツはどう」
「あの金髪のヤツかい」
「そうそう、小柄の」
「アイツは一寸、ギャル過ぎるな」
「そうかなぁ」
若い男二人。
サウナでの、話題なんてのは、いつの世も同じだ。
「俺さぁ、この前の連休、サチとディズニー行って来たんだけど」
「えっ、俺、年末に行ったんだけど、ディズニーにサチと」
「ウソ、マジで」
「マジマジ」
「・・・・」
「あいつ、チュロス、食った」
「うん、あいつチュロス食ってたよ」
「チュロス好きだよな、あいつ」
「うん、チュロス好きだよ、あいつ」
ひょんな話題から、気まずい空気が室内に流れる。
サウナの熱さか、女心の移り気を思ってか、二人に苦悶の表情が浮かぶ。
「ユミいるじゃん、隣のクラスに」
「あー、いるねぇ」
「アイツは、どう」
「どうって、アイツはヤバいだろ」
「だろ、アイツはヤバいよな、マジで」
「今日のアイツ、特にヤバかったな」
「ヤバかったなぁ、今日のアイツは」
どうやら、もう寝ないとヤバそうなので、この続きはまた明日。