639声 鰻と想像

2009年09月30日

前橋市の中心市街地で飲んだ時、決まって訪れる店がある。
訪れると言うよりは、はしご酒によって流れ着くと言った方が正しい。
先日、仲間内の小さな会合が前橋市であり、
終わってからは夜の中心市街地へ三々五々。
私等の足が向かったのは、いつものその店である。
店の硝子戸を開けると、カウンターの前に看板。
「気分の悪い者は申し出る事」
と言う文言が、墨文字で書いてある。
カウンターに座って一同、考え込んでしまった。
皆の思考は一致している筈。
「以前、この店で何が起こったのだろうか」
それは、大方、想像できる。
店の場所は中心市街地の真ん中。
つまりは、酔街の中心に位置しているので、馴染み客と言えば、
大抵が千鳥足で鼻歌などを歌いながら入って来る。
中には、泥酔状態で来店する人も少ないないだろう。
かく言う私等もほろ酔いなのだ。
この様な立地条件を考えると、この想像の精度は高いと思われる。
しかし、想像の精度が高いだけに、
「女将さん、この看板はどう言う経緯ですか」
なんて、野暮な事は聞けない。
すると、カウンターの先から、女将さんの焼く鰻の香ばしい匂い。
野暮な想像をつまみに、瓶麦酒をちびり。