788声 スモールパブリックビューイング in 食堂

2010年02月26日

そわそわそわそわ。
終始、落ち着かない。
私が席へ着いて、お茶を運んでくれるおばちゃんが、である。
今日の昼過ぎ、行きつけの食堂の暖簾をくぐった。
いつもの席へ座って、気付いた。
店内の空気感が、普段と違う。
いつもの駘蕩とした雰囲気でなく、その場、点在して座っている客が醸し出す、
緊張感を帯びて、張り詰めている。
小気味良く動いているおばちゃんも、今日ばかりは、心此処に非ず。
チラチラと、視線を送るその先には、ブラウン管テレビ。
映っている映像は、フィギュアスケート女子。
そうかそうかと、合点。
今日は、バンクーバー五輪、女子のフリーの決勝である。
今から、注目の日本人選手が、前回の2006年トリノ五輪において、
金メダルを獲得した荒川静香に続いて、メダルが取れるかどうかと言う天王山。
なので、皆、魂がテレビに吸い取られてしまったかの如く、夢中。
「あっ、真央ちゃん真央ちゃん」
って、店のおばちゃんは浅田真央ファンらしい。
あそこの、ラーメンの麺を箸で摘み上げたまま、固まっているおやっさんは、
どうやら、安藤美姫ファン。
その後ろで、チャーハンをもぐもぐやっている兄ちゃんは、キム・ヨナファンと見た。
店を辞して、夕方。
私はPCの前、ネットニュースで結果を知った。
「キムヨナ金、浅田が銀、安藤5位で鈴木が8位」
やはりスポーツ観戦は、一つのスクリーンを大勢で観るに限る。
空気感から伝わる緊張感。
手に汗握る状況で観戦してこそ、楽しみを得られる。
観ている人たちが、醸成する空気。
市井の中で、その空気感を感じれる場所。
それは、劇場や映画館などの映像や音響設備が整った場所だけでなく、
食堂のテレビだって、大いに楽しめるのだ。