794声 食堂における食育の行方

2010年03月04日

「じゃあ、タンメンください」
「はい、タンメンがひとつ」
「あっ、タンメンにぃ、ネギとニンジン入ってますかぁ」
「はい、ニンジンが入ってます」
「えーっ、じゃあぁ、ニンジン抜きって、できますかぁ」
「はい、大丈夫ですよ、タンメンのニンジン抜きが、ひとつ」
この会話は今日の昼、行きつけの食堂で、小耳にはさんだ会話。
ラーメンを啜っている私の横を、騒々しく通り過ぎる、おばちゃん3人組。
PTA役員会定例会議後の、小学校高学年生を持つ、お母さん。
彼女たちの風体から、一目で推察すると、そんなところではなかろうか。
席に着くや否や、「煙草臭い」と、店内に渦巻く紫煙を眺め、
お互いに眉間に皺を寄せている。
斜向かいのテーブルで、美味そうに食後の煙草を燻らせている、親父さん。
3対1では、いくら常連だって立つ瀬がない。
少し肩をすぼめ、新聞に向かって、弱々しく煙を吹きかけている。
店のおばちゃんが注文を聞きに来て、いざ注文ってな段取りになると、
注文が多い。
店のメニューに、である。
つまりは、そのおばちゃん3人組、好き嫌いが滅法多いのである。
ネギが嫌でニンジンが嫌、ご飯が多いのが嫌でぬか漬けのおしんこが嫌。
「好き嫌い言わないの」
と、人生の先輩であり、他人の母親に、思わず心の中で突っ込んでしまった。
世代的な背景もあるだろうが、好き嫌いが多い親は、どうやって子供に食育するのか。
しかしながら、ファーストフードやファミレスではなく、
地元の食堂に来たと言う事だけでも、評価すべきであろう。
春キャベツや新たまねぎ。
菜の花やふきのとう。
セロリに、たけのこに、アスパラガス。
野菜から、春の香りを感じ、摂取する事によって、体も春に順応して行く。
「旬の野菜は美味いぞ」
ニンジン抜きのタンメン食ってる、母ちゃんたちよ。