「じゃあ、タンメンください」
「はい、タンメンがひとつ」
「あっ、タンメンにぃ、ネギとニンジン入ってますかぁ」
「はい、ニンジンが入ってます」
「えーっ、じゃあぁ、ニンジン抜きって、できますかぁ」
「はい、大丈夫ですよ、タンメンのニンジン抜きが、ひとつ」
この会話は今日の昼、行きつけの食堂で、小耳にはさんだ会話。
ラーメンを啜っている私の横を、騒々しく通り過ぎる、おばちゃん3人組。
PTA役員会定例会議後の、小学校高学年生を持つ、お母さん。
彼女たちの風体から、一目で推察すると、そんなところではなかろうか。
席に着くや否や、「煙草臭い」と、店内に渦巻く紫煙を眺め、
お互いに眉間に皺を寄せている。
斜向かいのテーブルで、美味そうに食後の煙草を燻らせている、親父さん。
3対1では、いくら常連だって立つ瀬がない。
少し肩をすぼめ、新聞に向かって、弱々しく煙を吹きかけている。
店のおばちゃんが注文を聞きに来て、いざ注文ってな段取りになると、
注文が多い。
店のメニューに、である。
つまりは、そのおばちゃん3人組、好き嫌いが滅法多いのである。
ネギが嫌でニンジンが嫌、ご飯が多いのが嫌でぬか漬けのおしんこが嫌。
「好き嫌い言わないの」
と、人生の先輩であり、他人の母親に、思わず心の中で突っ込んでしまった。
世代的な背景もあるだろうが、好き嫌いが多い親は、どうやって子供に食育するのか。
しかしながら、ファーストフードやファミレスではなく、
地元の食堂に来たと言う事だけでも、評価すべきであろう。
春キャベツや新たまねぎ。
菜の花やふきのとう。
セロリに、たけのこに、アスパラガス。
野菜から、春の香りを感じ、摂取する事によって、体も春に順応して行く。
「旬の野菜は美味いぞ」
ニンジン抜きのタンメン食ってる、母ちゃんたちよ。