春霖。
冷たい雨が、身にこたえる。
なんとも、爺臭い事を言っているが、いささか体調が芳しくないので、
そう感じる。
今日は、小、中学校の終業式。
だと気付いたのは、昼時に入った、飲食店での事。
郊外に大型駐車場を持つ、その和食レストラン兼和風居酒屋は、大混雑。
その客の大半が、両親と一緒に来ている、制服の少年少女たち。
つい先程、終業式を終えて来たのであろう。
そして、どうも今日は、様々な事がある日に当たったもので、
その店は、今日から昼時間帯のみ、生麦酒中ジョッキが5円なのだと言う。
そう言うキャンペーンが始まるのだと、店員女史がそっけなく教えてくれた。
それを知ってかいまいか、会社の有給であろう終業式帰りのお父さん、
意気揚々と、生ビールを注文している。
それにしても、酒を飲むのに、誂え向きの口実が整っている。
背中を丸めて、うどんを啜っている、私の横。
お盆に載った生麦酒が、行ったり来たり。
あっちの席。
上機嫌なお父さん、それをたしなめるお母さん、我関せずで携帯をいじくる息子。
こっちの席。
車を乗り合わせて来たのであろう、お母さん連中の小宴会。
そっちの席。
私と同じ境遇である、勤め人の職人さん、苦虫顔でカツ丼を食べている。
今日ばかりは、天気が好天でなく、体調が万全でなくて、良かった。
もし、今日が快晴で、自らの体調も万全であったなら、
私は踏み止まる事が出来たであろうか。
踏み止まる事が出来ても、「ぽんっ」と、背中を押す奴がいる。
体勢を崩しながら、慌てて後を振り返る。
見覚えのある、そいつの名前は、誕生日。
そう、今日は私の28回目の誕生日であった。