944声 旅行と観光

2010年08月01日

固定観念が更新された。
と言う実感を得る時は、もっぱら他人との会話によるところが多い。
先日の例をば、ひとつ。
近頃、世間的にお盆休みが近い所為か、
他人との話題が自然と、旅行方面へ流れる事が多い。
私と話しているこの人は、中小企業における中間管理職の男性。
趣味は旅行で、この道何年と言う、謂わば、週末旅行の達人である。
話題は国内旅行に流れ着き、その旅行談を聞いて私は、
自らの固定観念を更新せざるを得なかった。
この氏が行った旅行先は、北海道は函館である。
実は私、北海道の土地へは未だ足を踏み入れた事が無く、
未開の地に対する憧れを持って、氏の話を聞いていた。
しかし、連休を利用して、北海道旅行など、当節、珍しくも無い話。
それが、その話の落ちは、連休では無いのである。
つまり、その人の函館旅行談は、日帰り旅行なのである。
氏は、群馬県高崎市在住。
高崎から函館まで、まさか日帰りで行って来るとは。
これが、仕事ではなく旅行、と言うから吃驚する。
しかも、飛行機ではなく、新幹線と在来線のみを利用している。
顛末を聞くと、高崎を限りなく始発で出て、限りなく終電近くに帰って来る。
それでも、函館の滞在時間は、2時間無いのだと言う。
そうなのだ、圧倒的に移動時間の方が長く、もはや移動の為の旅行と言える。
それでも、氏曰く、朝、群馬に居た人間が、その日の昼頃には津軽海峡を越え、
函館の土を踏んでいる。
と言う事に、最大の感激が得られるのだと言う。
氏にとっては、函館へ行って、何をするか、と言う事は、左程重要では無い。
「行って帰って来た」
と言う事が、重要なのである。
「せめて一泊して観光を」
なんて思ってしまう私は、凡庸な旅行感を持っている証拠だろうか。
「観光ばかりが旅行じゃない」
そんな事の発見が、殊更、「旅行と言えば観光」に執着している、
私の旅行に対する固定観念を更新させた。