固定観念が更新された。
と言う実感を得る時は、もっぱら他人との会話によるところが多い。
先日の例をば、ひとつ。
近頃、世間的にお盆休みが近い所為か、
他人との話題が自然と、旅行方面へ流れる事が多い。
私と話しているこの人は、中小企業における中間管理職の男性。
趣味は旅行で、この道何年と言う、謂わば、週末旅行の達人である。
話題は国内旅行に流れ着き、その旅行談を聞いて私は、
自らの固定観念を更新せざるを得なかった。
この氏が行った旅行先は、北海道は函館である。
実は私、北海道の土地へは未だ足を踏み入れた事が無く、
未開の地に対する憧れを持って、氏の話を聞いていた。
しかし、連休を利用して、北海道旅行など、当節、珍しくも無い話。
それが、その話の落ちは、連休では無いのである。
つまり、その人の函館旅行談は、日帰り旅行なのである。
氏は、群馬県高崎市在住。
高崎から函館まで、まさか日帰りで行って来るとは。
これが、仕事ではなく旅行、と言うから吃驚する。
しかも、飛行機ではなく、新幹線と在来線のみを利用している。
顛末を聞くと、高崎を限りなく始発で出て、限りなく終電近くに帰って来る。
それでも、函館の滞在時間は、2時間無いのだと言う。
そうなのだ、圧倒的に移動時間の方が長く、もはや移動の為の旅行と言える。
それでも、氏曰く、朝、群馬に居た人間が、その日の昼頃には津軽海峡を越え、
函館の土を踏んでいる。
と言う事に、最大の感激が得られるのだと言う。
氏にとっては、函館へ行って、何をするか、と言う事は、左程重要では無い。
「行って帰って来た」
と言う事が、重要なのである。
「せめて一泊して観光を」
なんて思ってしまう私は、凡庸な旅行感を持っている証拠だろうか。
「観光ばかりが旅行じゃない」
そんな事の発見が、殊更、「旅行と言えば観光」に執着している、
私の旅行に対する固定観念を更新させた。