970声 夏のレクイエム

2010年08月27日

立秋はとうに過ぎたのだが、食堂の席へ着くと思わず、
冷やし中華を注文してしまう。
食べ終えて、酷暑の街へ出れば、往来。
近頃、ひっくり返って行き倒れている蝉を良く見かける。
その死骸は皆一様に、腹の辺りが白く粉を吹いている。
食べ終えてから向かったのは、役場。
その裏口の棚。
誰が獲ったか、クワガタが一匹入っている瓶が置いてあった。
指で瓶を突いたが、反応は無し。
どうやらクワガタは、瓶の中でひっくり返って、死んでしまった様子。
それもそうだろう。
日光に直射している瓶の中には、萎れた葉っぱが一枚。
これじゃ、いくらなんでも、生きられぬ。
里は暮れて、月明かり。
秋虫の奏でる音色は、夏のレクイエム。
ってな描写は、野暮だね、やっぱり。
麦酒こぼしちまったよ、まったく。