昨日続き。
現代においては、(私が子供時分もそうだが)カブト虫はペットとして、
ホームセンターなどで、人気を博している。
私は金を出して買った事は無いのだが、友達はペットショップで幼虫を買っていた。
それを腐葉土と一緒に虫籠に入れ、夏休みの宿題の課題である自由研究として、
成虫になるまで観察記録をつけていたのだ。
私の同年代でも、首都圏で幼少期を送った友人などは、
デパートでカブト虫を購入していたと聞く。
また、巷の専門店類では、珍しい外国産のカブトムシやクワガタが、
マニアの間で高額で取引されている。
「カブト虫などを、獲るのではなく買う」
ってのは、子供たちにとって、もはや当たり前の動機である。
先日、ホームセンターで見かけたカブト虫の価格は、580円であった。
私の子供時分も、それ位の価格だった記憶があるので、
ここ20年程で、カブト虫相場の変動は少ない様子。
これは、カブトムシ雄と雌、ペアでの価格である。
荷風の『断腸亭日乗』を読んでいると、日記の中に時折、
「白米一升 金参拾五圓也」
なんて、当時の物価が書き添えてある。
それに習って、(何故習うか分からないが、兎も角、思い出したので)、
この記事で言うならば、
「カブト虫(ペア) 金六百円位也」
と言う事になる。
我が祖父母の昔話によれば、カブト虫やクワガタ虫はその昔、
確かに子供たちの人気者であった。
しかし、大人にとっては、カブト虫やクワガタ虫の類は、
「害虫」として警戒されていたのだと言う。
理由は、果樹や木肌を喰い荒らしたり、その幼虫でも、根を荒らすから。
その為、これらを掴まえても、それは採集ではなく駆除、と言う事になる。
何れにせよ、カブト虫やクワガタ虫にとって人間とは、甚だ、迷惑な存在であろう。
私に至っては、子供時分に殺生したカブト虫及びクワガタ虫は、
その数何百匹にも及ぶ。
今でも、角を掴んで、足を宙にもがいているカブト虫などを眺めていると、
小波の如く、罪悪感が胸に去来する。