973声 子供と夏の虫 後編

2010年08月30日

昨日続き。
現代においては、(私が子供時分もそうだが)カブト虫はペットとして、
ホームセンターなどで、人気を博している。
私は金を出して買った事は無いのだが、友達はペットショップで幼虫を買っていた。
それを腐葉土と一緒に虫籠に入れ、夏休みの宿題の課題である自由研究として、
成虫になるまで観察記録をつけていたのだ。
私の同年代でも、首都圏で幼少期を送った友人などは、
デパートでカブト虫を購入していたと聞く。
また、巷の専門店類では、珍しい外国産のカブトムシやクワガタが、
マニアの間で高額で取引されている。
「カブト虫などを、獲るのではなく買う」
ってのは、子供たちにとって、もはや当たり前の動機である。
先日、ホームセンターで見かけたカブト虫の価格は、580円であった。
私の子供時分も、それ位の価格だった記憶があるので、
ここ20年程で、カブト虫相場の変動は少ない様子。
これは、カブトムシ雄と雌、ペアでの価格である。
荷風の『断腸亭日乗』を読んでいると、日記の中に時折、
「白米一升 金参拾五圓也」
なんて、当時の物価が書き添えてある。
それに習って、(何故習うか分からないが、兎も角、思い出したので)、
この記事で言うならば、
「カブト虫(ペア) 金六百円位也」
と言う事になる。
我が祖父母の昔話によれば、カブト虫やクワガタ虫はその昔、
確かに子供たちの人気者であった。
しかし、大人にとっては、カブト虫やクワガタ虫の類は、
「害虫」として警戒されていたのだと言う。
理由は、果樹や木肌を喰い荒らしたり、その幼虫でも、根を荒らすから。
その為、これらを掴まえても、それは採集ではなく駆除、と言う事になる。
何れにせよ、カブト虫やクワガタ虫にとって人間とは、甚だ、迷惑な存在であろう。
私に至っては、子供時分に殺生したカブト虫及びクワガタ虫は、
その数何百匹にも及ぶ。
今でも、角を掴んで、足を宙にもがいているカブト虫などを眺めていると、
小波の如く、罪悪感が胸に去来する。