982声 風土と方言

2010年09月08日

先日、中之条町で開催された「伊勢町祇園祭」を訪れ、
全体の雰囲気が「駘蕩」としていたと、自分の感想を書いた。
以後、「羨ましい」との声が、メールにて私の元へ幾つか届いた。
勿論、その駘蕩とした雰囲気を味わいたかったのだろうが、
メールをくれた人は、群馬県の県庁所在地在住の、謂わば町場の人である。
確かに、神輿や花火などが催される盛況な町場の祭りでは、
それも大いに風情があるのだが、駘蕩とした雰囲気など、味わえぬ。
その雰囲気の一翼を担っているのが、方言ではなかろうか。
そう考えているのは、つい先程、この小冊子を書棚の隅で発見したからである。
「あがつま語★辞典」(収集及び発行 小板橋武)
経年の用紙劣化で、全体的に黄ばんでいるこの小冊子は、
ひょんな経緯で私の手元にある。
3,4年前、四万温泉へ宿泊したと事があり、その日の夜、
中之条町の伊勢町まで酒を飲みに下った事があった。
その夜、初めて入ったスナックで、その店のママから貰ったのがこの小冊子。
とても貴重な小冊子だとおっしゃっていたが、
「これで、吾妻弁を勉強してらっしゃい」
と言う、強烈な濁声で発した温かいお言葉と共に、
私にプレゼントしてくれたのだった。
机の前で頁をめっくているが、聞いた事の無い方言ばかりである。
「なかんじょなんそんなずらぁねぇよ」
吾妻民がこう話すのを聞いて、県外の人は無論の事、
県内の人でも、こと若い世代は理解に苦しむ人が多いだろう。
「いいえ、中之条など、そんなことはありませんよ」
と正確にその方言の意味を理解するには、この小冊子が必要である。
この小冊子に羅列されている方言を読んでいるだけでも、自然と頬が弛む。
その行間からは何やらもう、駘蕩とした雰囲気を感じ取れる。
風土が人々の方言を培うならば、吾妻と言う山間の地域は、とてもあたたかい。