4707声 フレデリック・ワイズマンのように

2021年03月08日

前から撮影で何度か足を運んでいた、前橋市内の幼稚園の映像を作った。といっても、紋切り型のお遊戯会を撮影したりしたわけではない。いつでもとことん泥遊びができたり、その日やることをあらかじめ決めずに、園児がこれをやりたいと始めたらそれを見守り、時に園内に大きなトンネルが作りたいという雰囲気になったらそれを何日もかけて作らせて気づけば1階から2階までえらい長い紙のツギハギのトンネルができている・・という一風変わった?その園で起きていることを、主に保護者に伝えるために、ある程度自由に映像を作ってほしいという依頼だった。そういう幼稚園というのは今時代的であるとも思うのだが、一部保護者等からすると「こどもに好きにさせているだけ」と思われるらしい。

 

結果、園で起きたことを脚色なく撮影し意図的に繋いだドキュメント映像と、その映像を大学の児童教育専門の方も交えた大人たちで検証する座談会映像の2つを制作した。園庭の土をひたすら掘るこどもは、一見したら「なんでそんなことしてるの」と思わずにはいられないが、大学の先生はそれを「こどもが、人と対話するのと同じように、もの(ここでは土)と対話している」と解説してくれた。なるほどである。

 

今同時に進めているものでは、温泉のPR映像や、大学のPR映像、アウトドアや森林に関するPR映像や、美術に関する映像など様々なものがあるが、結局のところ僕が一番自分らしさを出せるのは「脚色なく撮影し意図的に繋いだドキュメント映像」なんだろうなとも思う。その極地には、美術館や刑務所、町そのものなどをテーマに人々の営みだけでドキュメンタリー映画を作ってしまうフレデリック・ワイズマンという監督がいたりもするのだが・・そういう話になると長く書いてしまうので、ここで辞めてしまおう。ただ数日前に、顔見知り程度だった美術館学芸員の方がワイズマン好きと知って話が盛り上がったので、なおさらこんなことを書きたくなった。