1385声 刈田道

2011年10月16日

「もったいないですね」
そう言いあって、二人で苦笑いしたのは、昼下がりの床屋。
軽快に運ぶ鋏の音を聞きながら、店主と話してた。
野山に行かぬのがもったいないくらい、清々しく晴れた今日の空の事を。

気持の弛んだ途端に一週間の疲労が出て、終日、部屋でぐだぐだとしていた。
それでも、窓から高い秋の空が見えると、気分が良い。
日が傾き始めてから、いつもの如く句帖をポケットに突っ込んで、
裏の田圃へと歩を進めた。

10月も半ばだと言うのに、どういうわけか夏日になり、
大量発生した羽虫が日に輝いている。
庭の百日紅も、更にコ濃く狂い咲き、家を出掛けに見たニュースでは、
桜も開花してしまったところがあるらしい。
その所為か、山の裏からは、入道雲の様な雲育っていた。

刈田道を行き、視界の開けた場所に腰掛けて、
しばし日の移ろい行く野を眺めていた。
背高泡立草が群生している田圃が、あっちに一枚、こっちに一枚。
黄色い花の群れが揺れながら、日射しを集めている。
用水路沿いには秋桜、畦道には猫じゃらしやすすきの穂が、風を捕まえていた。
日曜日の夕方と言う事も有り、犬の散歩させている人が、4,5人くらい過ぎて行った。
小さい犬に大きい犬。
どの犬も、犬は犬で忙しそうにしていた。
別に忙しくも無い私は、日の暮れるまで、気まぐれにペンを走らせて、帰路についた。

【天候】
終日、秋晴れ。