860声 南中時刻の庭

2010年05月09日

今日は爽快な五月晴れであった。
ふた昔前くらいだろうか、今日みたいな休日の良く晴れた日には頻繁に、
セスナ機が飛んでいた。
中古自動車販売会社の宣伝を流しながら、広域を旋回飛行している機体である。
未だ、学校も週休二日制でなかった頃の土曜日。
午前で放課になった学校の帰り道、青空から響く、
セスナ機のエンジン音と、その宣伝文句が思い出に刻まれている。
南中時刻の自宅前。
猫の額ほどの庭で、庭木たちに水をくれていた。
じょうろを傾けながら歩いていると、芝生の上に蠢いている一匹のミミズ。
半ば干からびており、その生命の灯火も、今まさに燃え尽きようかと言った具合。
行き場の無いミミズに、せめてもの死水と、じょうろの水をかけてやる。
向いの家のブロック塀。
その上を、何処かの家猫が、暢気な顔して歩いて行く。
ミミズに目を落とすと、コロリ、往生。
青空の彼方から、何処かのジェット機、やって来て。
「シューッ」と、切り裂くようなエンジン音。
音だけ残して、行ってしまった。