877声 ナメクジの背

2010年05月26日

「やっぱ、伊香保まで来ると、ナメクジがデカイな」
言われて私も、近づいて行って、壁にへばり付いているナメクジを、
まじまじと確認した。
そう言った本人は、深く納得したような顔で、このベランダから浴室へと戻って行った。
全長7,8cmはあろうかと言う、雨に濡れたこの大ナメクジは、
何をするでもなく、その流線型の体を、「ヌメリヌメリ」と怪しくくねらせている。
先日、俳句ingで訪れた、伊香保温泉「石段の湯」での一幕。
確かに、伊香保のナメクジは大きかった。
しかし、伊香保のナメクジもデカイが、高崎のナメクジもデカイ。
と言う事になる。
それは、私が先程、自宅の洗面所で見たナメクジも、伊香保のそれと同じく、
デカイナメクジ。
一瞬、「先日は伊香保でどうも」なんて、挨拶しそうになってしまったわけではないが、
全長が同じくらいの個体であった。
すり鉢状になっている洗面台の内側にへばり付いていたので、
手を洗うついでに、蛇口の水をかけてやった。
水と共に、排水溝に吸い込まれて行ったのだが、消え入る寸前、頭が突っ掛かって、
背の部分だけが排水溝から、無様に出ている。
蛇口の水を止め、突き出たナメクジの背を見ると、その稜線が左右均等。
緩やかに弧を描いて、頂点で合わさり、綺麗な流線型を作っている。
ナメクジも綺麗なものだと感じると、ふと、助けてやりたい衝動に駆られた。
次の瞬間、その綺麗な流線型が消え、深夜の洗面台に、
排水溝の暗い穴だけが残った。