878声 枝豆と再会

2010年05月27日

不順な天候が続いているが、日を追う毎に、夏野菜が旬の風味を帯びてきている。
巷の飲み屋ではそろそろ、お通しが一斉に枝豆になる頃。
梯子酒では、行く店毎にお通しに出会う事になるが、特に夏期である。
「また君か」なんて、前に居た店と今入って来た店が、同じ枝豆のお通し。
小鉢に入った枝豆に向かって、苦笑し、また麦酒。
酔った勢いで暖簾をくぐった、見知らぬ土地の見知らぬ店。
それが、一寸小綺麗な小料理屋だったりする。
カウンターには、妙齢の女主人と親しげに会話を楽しんでいる、常連客。
カウンター席の一番端に座り、目の前に並ぶ、江戸切子の醤油差しが、不安を助長する。
心細さを悟られぬ内に、瓶麦酒を注文。
見慣れた茶色い瓶と一緒に運ばれて来たお通しが、小鉢に入った枝豆。
そんな時は、迷子の子供が、親と再会した時の様な心持ち。
一粒一粒、豆を噛み締めながら、店の空気に自らを慣らして行く。