983声 お下がんなさい、白線まで

2010年09月09日

台風は静岡県上空で温帯低気圧になって、夜の内に関東地方を離れて行った。
群馬県に至っては、とりわけ甚大な被害は無かった模様。
午前中は薄曇りで、午後からはすっかり快晴となったが、
やはり、吹き行く風は秋の冷たさ。
今日の事。
「どうしてこんなにも不快なのだろう」
眼前の光景を黙殺していればよいものを、どうしても、視界に入ってしまう。
カウンターに座っている私に、相向かう形で座っている、向こう側の席のお姉さん。
年の頃は、およそ20代後半。
茶髪に染めた頭頂部、若干伸びた黒髪は、巷で言うプリン頭。
身なりは上下、量販店のスウェットである。
鼠色の上と、細い黒縞の下の組み合わせは、どこか囚人を連想させる。
その容姿に関しては、特に述べるべき言葉も浮かばないが、問題はその容体。
まず、サンダルを脱ぎ散らかして、裸足を椅子の上に置いて、腰掛けている。
そのM字開脚スタイルのまま、牛丼の肉を一枚一枚、
持ち方の下手な箸で口に運んでいるのだ。
それを見ていて、こんなにも、牛丼が不味そうに感じたのは初めてであった。
不快ではあるが、未だここまでは社会通念として白線の内側だと思う。
そこに止めを刺すのは、彼女がテーブルに置いて、喰いながら凝視している携帯電話。
おそらく、ワンセグを視聴しているのだろうと思われる音が、
店内に漏れ聞こえている。
この雑音が、食事中の私に、甚だしい不快を感覚させる。
隣の席で、静かに食事を楽しんでいらっしゃる老夫婦が、見るに忍びない。
ファーストフードの牛丼チェーン店にだって、白線の内と外はある。
「お嬢さん、お下がりなさい、白線の内側まで」
ってのが、言えない。
牛丼に顔を埋めながら、こんな禅問答的もどかしさを感覚していた。
私も、からっ風に吹かれながら、歳を重ねた証拠であろうか。
若者風味な表現で、捨て台詞をばひとつ。
「お嬢さん、ビミョーにヤバイよ、その食い方」