今日は雛祭り。
っても、女兄弟や子供を持たない私にとっては、
縁の薄い行事である。
その薄い縁が、過去に一度だけ、結ばれた。
遡る事、2、3年前。
高崎市の雛祭りを、取材に行った事があった。
新町地区で毎年行われている、「新町ひな祭り」、である。
この雛祭りは、町おこしの一環として、新町商工会が始めた。
行在所公園を拠点とし、商店街の店舗や、街中の各商店に、
雛飾りを展示し、来客をもてなそうと言うもの。
例えば、肉屋さんのショーウインドー。
秤の横に、艶やかな雛飾り。
和菓子屋の入口に、三人官女と五人囃子。
電気屋さんの店内には、掃除機の横に、豪奢な段飾りの雛人形。
など、街中のあらゆる場所、それは得てして市井の何気ない場所に、
かくも壮麗なお雛様がいらっしゃるのである。
この取材の時ばかりは、雛人形がある生活と言うのも、
良いものだな、と、感じた。
それは、男の私よりも、女性の方が感慨深いのだろう。
取材の休憩で立ち寄った、一軒の古い喫茶店。
午後三時の店内は、珈琲の香りと駘蕩とした空気が漂っている。
斜向かいの席には、80がらみの御婆ちゃんがひとり。
珈琲とアップルパイを食べながら、カウンターに飾ってある、
雛飾りを見つめている。
伝統を継ぐ事。
それは、大切な事、だと、その時強く感じた。
人の良さそうなマスターが、ブレンド珈琲を運んで来た。
【天候】
終日、雲多くも晴れ。
気温は一桁で、寒い日が続く。