1158声 雛喫茶

2011年03月03日

今日は雛祭り。
っても、女兄弟や子供を持たない私にとっては、
縁の薄い行事である。
その薄い縁が、過去に一度だけ、結ばれた。
遡る事、2、3年前。
高崎市の雛祭りを、取材に行った事があった。
新町地区で毎年行われている、「新町ひな祭り」、である。

この雛祭りは、町おこしの一環として、新町商工会が始めた。
行在所公園を拠点とし、商店街の店舗や、街中の各商店に、
雛飾りを展示し、来客をもてなそうと言うもの。
例えば、肉屋さんのショーウインドー。
秤の横に、艶やかな雛飾り。
和菓子屋の入口に、三人官女と五人囃子。
電気屋さんの店内には、掃除機の横に、豪奢な段飾りの雛人形。
など、街中のあらゆる場所、それは得てして市井の何気ない場所に、
かくも壮麗なお雛様がいらっしゃるのである。

この取材の時ばかりは、雛人形がある生活と言うのも、
良いものだな、と、感じた。
それは、男の私よりも、女性の方が感慨深いのだろう。
取材の休憩で立ち寄った、一軒の古い喫茶店。
午後三時の店内は、珈琲の香りと駘蕩とした空気が漂っている。
斜向かいの席には、80がらみの御婆ちゃんがひとり。
珈琲とアップルパイを食べながら、カウンターに飾ってある、
雛飾りを見つめている。

伝統を継ぐ事。
それは、大切な事、だと、その時強く感じた。
人の良さそうなマスターが、ブレンド珈琲を運んで来た。

【天候】
終日、雲多くも晴れ。
気温は一桁で、寒い日が続く。