1160声 自筆原稿にもえそめ

2011年03月05日

今朝の朝刊。
ひとつの記事に、目が止まった。
なんでも、米国オハイオ州在住の男性が、
萩原朔太郎の自筆原稿を、前橋市に寄贈。
と言う事らしい。

寄贈主はおよそ50年前に、留学生として日本に滞在した時に、
この原稿を入手したと言う。
留学生時代に、「月に吠える」の翻訳を手掛けており、
前橋市にも訪れていた事があると言うから、縁が深かったのであろう。

私も前橋文学館で、展示されている自筆原稿を見学したのとがあるが、
なるほど、紙面に掲載されている原稿と、字体が酷似している。
達筆ではないが、神経質そうに、文字を刻みこんでいる。
今回の寄贈原稿は、「月に吠える」冒頭の詩である、
「地面の底の病気の顔」の、前半部分10行ほど。
自筆原稿の原稿では、朔太郎の推敲の跡が確認でき、とても興味深い。

それは、「萌えそめ」の、「萌」と言う字を平仮名の「も」に直したり、
「あはれふかく見え」の、「見」と言う文字を、やはり平仮名に直したりしている。
確かに、ほんの「一文字」で、随分と詩の輪郭と言うのは変わる。
俳句や川柳などの短詩では、尚更、だと感じる事が多い。

朔太郎が悶々と原稿を推敲している時分から、
「僕は一躍して詩壇の花形役者になつてしまつた。」
と言うところまで、そう長い道のりはない。
それを思うと、今回の原稿は、やはり、とても興味深いもの、と思う。

【天候】
終日、穏やかな快晴の一日。