日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和6年度は4月(ぬ)5月(岡)6月(す)7月(堀)8月(坂)9月(ぬ)10月(岡)11月(す)12月(堀)1月(坂)2月(ぬ)3月(岡)の順です。

1487声 寝俳句

2012年01月27日

今朝、私の体感では、今期一番の冷え込みであった。
家の中の水道はどこも凍てて出ないし、窓だって結露が凍ててしまって開かない。
日本海側に住む人にとっては、「なんのそれしき」と思われるかもしれないが、
首都圏の人が想像している程、群馬県平野部の降雪量は少ない。
よって、長年住み暮らす人では、防寒対策には疎いと思う。
豪雪地帯も寒いが、空っ風吹きすさぶ乾いた寒さも、身を切られるようで辛い。

昨夜、榛名山へ俳句合宿に行っている仲間を羨んで、
こっちはこっちで、温かい部屋で句を作ろう。
そう決めて、蒲団にもぐり込んで、ストーブを付けたまま、
腹ばいになって句作していた。
一句できたところまでは憶えているのだが、「はっ」と気がつけば、朝。
薄暗い部屋を、ガンガンに燃えた電気ストーブが、ほの赤く照らしていた。
おかげで、喉、鼻はもとより、肌や髪の毛に至るまで、カラカラに乾燥してしまった。

火事にならなかっただけ、よかった。
寝煙草もよくないが、寝俳句もまたよくないのである。

【天候】
晴れて入るが、山から雪雲が流れ込んできて、寒い一日。

1486声 雪の山上湖

2012年01月26日

朝の間は、榛名山に霞みの様な雪雲がかかっていて、
「雪だなぁ」と、しみじみ思った。
いつもの景色なので、特に新鮮な感慨も無い。
しかし、今日は先生を含めた俳句の仲間が、榛名山で恒例の俳句合宿をする日なので、
普段とはやはり違う景色に見える。
そして、下界に残って山を仰いでいる私の心は、いま千々に乱れているのである。

一昨年は、日取りの都合が合ったので、参加した。
もう、豪雪。
榛名湖周辺一帯が、である。
結氷した湖上には、数多の釣客のテント。
その中を、句帖を握りしめた私たちがのそりのそりと歩き回っている。
唱歌に、「犬はよろこび庭かけまわる」と言うフレーズがあるが、
まさに、よろこびながら雪原となった湖上を駆け回っている犬がいた。

何十句も雪の句を詠んだ。
そして、何百と言う雪の句を読んだ。
東京からいらしていた女流俳人の方は、
午後から受け持っている俳句教室があると言う事で、
朝、榛名山をバスで下山して行った。
朝、山上湖の銀世界で句会をやって、午後には大都会の中心で句会。
なんだか、大変だけれど、贅沢な一日だと思った。

独り部屋で羨ましがっていても、こんな愉しげな思い出がスライドショーで甦って来るので、
ストーブの前で麦酒をかっくらって寝てしまおうと思う。

【天候】
終日、風強くも快晴。

1485声 わたわたわたわた

2012年01月25日

今日の日中は、日差しも力強く、やや春めいてきた空気を感じた。
しかし、遠景の榛名山を仰げば綺麗に雪化粧をしており、
一気に寒さを覚える。

公園の小川、である。
川面の表面に、薄く氷が張っていた。
俳句では、「薄氷」と言う春の季題があるが、
まだ寒明けしていない一月後半の今日にあって、
まさにその薄氷と言えるような氷だった。

季節を先取りして薄氷の句を作ろうと、
しばらくその小さなせせらぎを眺めていた。
解けて始めている切り口が絶えず輝いていたり、
所々、空いた穴には空が映っていたり。
薄氷の表面を指で押して見ると、その下に閉じ込められている気泡が、
「わたわたわたわた」していた。
眺めていると、なんだかこの小さな泡の粒に、妙な親近感が生まれた。

【天候】
終日、雲多くも晴れ。

1484声 ぶちまけたこと

2012年01月24日

珈琲が好きで、良く飲んでいる。
家に居る時はドリップ式のものを、
外に居る時は缶珈琲などを買って飲んでいる。
麦酒と違って、左程、味の優劣が分からないので、
銘柄にはあまりこだわりが無い。
それでも、缶珈琲よりもドリップしたカップの珈琲の方が、
同じ自動販売機で買う時でも、魅力がある。

酒での失敗は数限りなくあるが、珈琲でも失敗もある。
いま、大切な書類に珈琲しみを作ってしまって、思い出したついでに書く。
最近の失敗は、店内で買ったばかりの珈琲をぶちまけてしまったこと。
マクドナルドの店内で、ホットコーヒーを買った。
砂糖とミルクを注文時に入れてもらえばよかったものを、
自分の分量で入れようと思った。
ブラックで購入し、後の棚でミルクだけ入れ、手に持った瞬間。
「するり」
やってしまった。
平日だったので、店内が空いていたことがせめてもの救いであった。
直ぐに店員の方が来て、迅速に処理をしてくれ、
親切にも新しい珈琲を一杯作ってくれた。
いささか苦みのきいた味になったしまったが、それ以降、
マクドナルドを見つけては、コーヒーを買う様にしている。

失敗はやはり、カップコーヒーがらみが多い。
車の中でぶちまけてしまったり、口にくわえながら階段を降りようとして、
服にぶちまけてしまったり。
白いワイシャツを、珈琲色に染めてしまったことも、一度や二度ではない。
そう考えると、酔っていて酒をぶちまけたことはあまりないが、
素面の時は、珈琲をよくぶちまけている。
特に、新しい発見も無いが、そう言うことである。

【天候】
終日、風強くも快晴。
東京方面では、前日の行きにより路面凍結。

1483声 メタボガメタボ

2012年01月24日

現在時刻は深夜2時。
なぜ、こんな時間になってしまったのかと、振り返っているので、
こんな時間になってしまった。
都心部では雪が降っているようであるが、
ここ上州平野部は風ばかり強い夜である。

最近、食生活が乱れがちで、いささか太ってしまった。
先日、森美術館で「メタボリズムの未来都市展」を観ていた際、
いささか太っちょな人が目について思わず、「メタボガメタボ」などと、
思ってしまったが、人の事は言えなくなってしまった。

じゃあ、腹八分目。
と言う事で、昼食すこし減らしたら、夕方にどうしても腹の虫がおさまらず、
コンビニで菓子パンなどを買い食いしてしまう。
そう言う悪循環になるから、あまり余計な事は考えずに、
食べ物に少し気を使うことしようと思う。

【天候】
終日、曇天。

1482声 句会

2012年01月23日

東京に出掛けるのは、ここ数年はもっぱら俳句での用事が多くなってしまった。
銭湯に浸かってから句会。
なんて言う、憧れのコースを一度はやってみたいが、万年遅刻癖のため、
どこの句会へ行っても、投句締め切り寸前の到着となってしまう。

この土曜日は、高校俳句部の現役、OBの方を中心とする句会に参加して来た。
ひょんな縁で、年末くらいから参加させて頂いている。
今回から連作も出句するようになり、普段、吟行句会が主なので、
とても新鮮かつ勉強になった。
ゲストと先生を覗けば、29歳の私が最高齢(しかもダントツで)だった。

私の連作の主な題材は、「銭湯」。
その帰り道に関する句を10句並べた。
ゲストの岸本さんと先生の選に入っていたが、自分よりも若い人たちの選には、
見事に入っていなかった。
さもありなん、と思ったが、いささか自戒もした。

ほろ酔いで帰路に就く頃には、冷たい雨が降っていた。
折りたたみ傘を開こうと鞄から出すと、傘袋をどこかに忘れたようだった。
いつものことなので、気に留めず、狭っ苦しい傘の下に背を丸めた。

【天候】
朝より小雨まじりの曇天。
朝6時ごろ王子駅付近の火災により、11時ごろまで、高崎線運休。

1481声 蕎麦屋の来訪帖

2012年01月21日

夜半から雨に変わったため、大かたはとけてしまった。
雪、と言うのはとけてしまえば名残惜しいもので、
まだ瓦の隙間に挟まっている雪などをみて、「頑張れよ」などと思ってしまう。
今朝も、朝から小雪がちらついているが、積もるほどではないであろう。

今日は、諸事を済ませた後に午後から東京へ出掛ける予定がある。
雪が激しくなって、交通機関が乱れない事を祈りつつ書いている。
この時期は、駅のホームで列車を待っていると、上越線の上りでなく、
下りに乗ってみたい衝動に駆られる。
太宰治のように湯檜曽付近を彷徨ってみたい気は無いでもないが、やはり、
温泉に浸かって雪見酒などしたほうが、面白そう。

「わたしはもう仕事にいきません。おうちにいます」
と言う書きこみを、行き当たりばったりで入った、
水上温泉の蕎麦屋の来訪帖の中に発見したことがあった。
そんなことを、ふと思い出した。

【天候】
朝より、小雪のちらつく天気。

1480声 とことん雪

2012年01月20日

「ついにやったか」
起床して薄暗い部屋の「感じ」がいつもと違うので、分かった。
カーテンを開けてみると、やはり、雪。
しかも、しんしんと降りしきっている。

初雪に各交通機関は乱れていたが、平野部ではまずまず、
ノーマルタイヤでも走行できるぐらいの積雪。
人の踏み入らざる、例えば、私の家の裏の田圃などは、
一枚の大きな白銀であった。
黒い鴉が一羽、雪雲の中へ消えて行く光景ですら、叙情的である。

「この機会に、雪の句を量産せねば」
そう思い立ったのだが、中々、独り雪原に向かって佇もうと言う気持になれない。
反面。
ワンカップかウイスキーなんかポケットに押し込め、
もう、阿呆になってとことん雪の中に分け入って行きたい衝動も、仄かに感じている。

【天候】
初雪。
群馬県平野部では積雪3cmくらい。

1479声 雪もよい

2012年01月19日

もうどれくらいぶりかも、正確には思い出せぬ。
今年に入って初めて、と言う事だけははっきりしている。
街に待った、と言う感があるだけに、夜の窓を開けて聞いていると、とても心地好い。
このしとしとと降る雨音が、である。

風邪も流行の兆しをみせていたので、丁度良い。
丁度良いのだが、明日は大寒と言う時柄、天気予報では広い範囲で、
夜半から雪に変わると言う。
子供は楽しみかも知れぬが、大人はげんなりしているだろう。
私もいい歳の大人だが、「明日は雪」と聞くと、
心の奥に残っている童心が小さく震えるのが分かる。

私が子供の頃なので、もう二十年も前の事だが、
毎年、自分の背丈よりも大きな雪だるまを作っていた記憶がある。
学校行事や地域の育成会、周辺地域でも、ウインタースポーツが盛んだった。
南関東の人たちからは、「群馬県=温泉付きスキー場」と言うイメージが強かった。
と言う事は、高校卒業後、南関東出身の友人たちから聞いた。

いまとなっては、交通機関の乱れを鑑み、頼むから降らないでほしいと思う。
山下達郎の「クリスマスイブ」でもあるまいし、
夜更けに過ぎに雪へと変わってもらいたくはない。
しかし、もし朝起きて一面の白銀世界だったら。
静かに句帖とペンを持って、景色を眺めようと思う。
そうなったらそうなるまでだ。

【天候】
お昼過ぎまで快晴。
午後から雪雲が垂れこめてきて、夕方から小雨。

1478声 懐かしい香り

2012年01月18日

連日乾燥注意報発令中。
こう表記すると、ありがたい格言のようだが、空気がカラカラなのである。
毎年、この一月の受験シーズンになると乾燥注意報が発令され、
一挙にインフルエンザが猛威を振るう。
来週あたりは、県内でも、学級閉鎖となる学校が目立ってくるかもしれない。

今年は、年末に近所から頂いた柚子が沢山あるので、
三日に一回くらいは柚子湯に入っていた。
その為もあってか、年末年始から大寒前の現在に至るまで、
一度も風邪をひかずに済んでいる。
酔っ払って帰って来て、風呂に入って髪を乾かさずに寝ても、
夜中までこうやって机の前に座っていても、である。

受験を控えた学生がいる家庭には、是非、冬至を過ぎても柚子湯をお勧めしたい。
気分転換にもなるし、なにより、体が温まる。

未来より過去を思へる柚子湯かな  諒一

なんか、あの香りはそんな懐かしい感じがする。

【天候】
終日、快晴。
やや、風強し。

1477声 帰り道

2012年01月17日

いま、今週末に出掛けようと思っている句会に提出する句を、
幹事のアドレスに送信したところである。
相当、手こずってしまった。
と言うのも、提出方法が慣れていない連作だったから、である。

「連作10句」
それが一つの課題である。
同工異曲のものばかりでもつまらぬし、
かと言って物語性を帯びていないものも味気ない。
などと、10句くらいから悩み出す数だと思う。

結局、もう悩むのも馬鹿らしくなってきて、
「帰り道」と題する、なんだか訳の変わらぬ作品を送信してしまった。
潜在意識では猛烈に帰りたかったのだと思う。
それはもう後の祭りで、ひとり茫然としてストーブに当たっている。

【天候】
終日、快晴。
乾燥しており、巷では火事と風邪が蔓延の兆し。

1476声 ファーストフードでこそ

2012年01月16日

「今日こそは」
固き誓いを自らに立て、作業にかかるのだが、なんやかんやで今、夜半。
結局のところ、また、夜の底辺りでこの文章を書いている。

思えば、最近。
起きてから終日、てんやわんやしながら一日を過して居る気がする。
その証拠に、昨日の昼食が牛丼屋で、今日の昼食が回転寿司。
どちらも、滞在時間十五分と言うところであろう。

この二つの外食チェーン店は、待ち時間がなにせ短い。
牛丼屋と回転寿司は、注文メニューが入店する前から決まっているので、
着席と当時に注文する。
すると、2、3分、ないしは4、5分で注文の品が席に来るので、
10分でそれを食べ店を辞す。
滞在時間正味15分。

しかし、いま振り返って見て、そう言う食べ方はあまりにも心がさもしい。
ファーストフードでこそ、心静かにゆったりと食事ができる人間になりたい。

【天候】
終日、快晴。

1475声 隠沼

2012年01月15日

毎日寒い。
俳句を作っていても、「寒さ」や「水洟」などの寒々しい季題に偏った、
類句類想に陥っている。
それを打破するには、やはり外へ出て取材するしかなかろう。
と言う事で、日曜日の公園へ出掛けた。

厚い雲の隙間から淡く冬日が射しみ、枯野原は薄く輝いていた。
枯れていても、草木に残っている生命力を感じた。
流れの淀んだ隠沼も、何だかとろとろと、生命の煮凝のような印象を受けた。
やはり、寒の内ながらも、外へ出掛けると発見がある。
園内にはカップラーメンの自動販売機があり、おやっさんが独り、
ベンチで寒そうに、カップラーメンとトマトを二つ食べていた。
小一時間吟行し、鴨と寒鯉を中心に、冴えない句を五つ六つ作って帰ってきた。

【天候】
朝より、曇りがちな一日。

1474声 書き比べ

2012年01月14日

昨年あたりから、出掛け先で文具売り場を見つけると、
真っ先にペンコーナーに行く。
そこで、海外メーカーの得体の知れぬボールペンなど売っていると、
頭に血が上って、衝動買いしてしまう。
そして、失敗する。

この前は、東京駅構内の書店の雑貨売り場で、
やはり海外メーカーのボールペンを見つけて、即、レジへ持って行った。
「ピッ」と、レジの電光表示板に現れた価格は「800」円。
「高いのでやっぱ戻します」
などとは言えず、胸の動悸を抑えつつ、買って来た。
そして今日も、雑貨屋で得体の知れぬボールペンを二本見つけて、
買って来た。
海外メーカーのボールペンは、デザインも面白いし、
書き心地も国内メーカーのものとは一味違う。
外車を乗り比べることはできないけれども、ボールペンぐらいは書き比べたい。

帰宅して、二本の書き味を試すべく、ノートを開いて俳句などしたためてみた。
一本目が、みどり。
二本目も、みどり。
インクの色が、である。
しかしまぁ、よしとする。

【天候】
終日、快晴。

1473声 風物の美

2012年01月13日

冬天。
年明けからここ数日。
まさに、冬の空らしい、硬そうな雲の上に澄んだ青空が広がっている。
山陵に滲んで行く夕焼けが、とても綺麗で見とれてしまう。
高崎市からでも、少し小高い丘に登れば、白銀に輝く南アルプス連峰が望める。

厳寒の折、風物の美しさには感動している。
その山が峻険であればあるほど、登山家をひきつけると言う。
やはりそこに、かかる危険と天秤にかけても、他では得難い美しさがあるのだと思う。
部屋の中で、鼻水垂らしながらラーメンと一緒に啜っている私が言うことでもないが。
きっと、そうだと思う。

【天候】
終日、風もなく穏やかな晴れ。
いよいよ、寒さ厳しい。

1472声 凍結

2012年01月12日

殊に寒い、ここ数日は。
まだ大寒前だと言うのに、連日、今年の冬の最低気温を更新している。
身も心も、寒さに弱い体質なので、最近、風呂に入った後は直ぐに寝てしまう。
この日刊「鶴のひとこえ」の更新だとか、届いたメールの返信だとかは、
明朝に後回しにしている。
そして、朝。
当然ながら、吐く息が白いような部屋で作業できる筈も無く、数日溜めてから、
一気に諸事を片付けると言うペースになっている。

この際なので、今回はじっくり言い訳してみようと思う。
朝、一応やろうとはする。
パソコンの電源を入れ、立ち上がるまでに顔を洗って、取り掛かろうとはしている。
「している」のであるが、うまくいかんのである。
その原因を端的に述べると、「寒さ」。

まず、パソコンが立ち上がる間に、顔を洗おう。
洗面所に行って、湯の蛇口をひねる。
ひねって、戻して、ひねって、戻しても一向に湯が出ない。
そう、寒さで水道管が凍結しているのであろう。
もう、諦めて冷水を顔に当て、それで洗顔したことにして、パソコンの前に座る。
すると今度は、パソコンがインターネットに繋がらない。
電話回線が凍結することはあるまいが、これは契約しているプロバイダによるもの。
激安の契約内容なので、こう言うところに弊害がある。

一連の作業で憔悴し、まだ返信で来ていない年賀状を書こうと思い立ち、ペンをとる。
手紙の上にペンを走らせると、これも、寒さでインクが固まってしまって書けない。
もう降参して、いま、夜半に苦しみながら書いていると言う次第。

【天候】
終日、快晴。

1471声 辰之助の年

2012年01月11日

明日の朝が、この冬一番の冷え込みらしい。
その冷え込みが、夜半の今にしてもう始まっており、
部屋の中に居て息が白い。
新春ロードショーの「釣りバカ日誌」をテレビで見ていたら、
すっかり、深い時間になってしまった。

辰年である、今年は。
なので、石橋辰之助の句を読もうと思う。
「読もう」っても、私は石橋辰之助の句集を一冊も持っていない。
書店に行って注文しても、買えないのが、古い句集である。
石橋辰之助は昭和23年に亡くなっている作家なので、
当然、句集は古本で探すしかない。

句集を一冊も読んで居ないのに書き出すのは無謀だが、
先日、歳時記をめくっていたら、こんな例句に出合った。

桑枯れて日毎に尖る妙義かな   石橋辰之助

上州に住みなしている俳人のような視点で、冬に移り行く妙義を捉えている。
辰之助俳句と言えば、言わずものがな、浮かぶのは「山岳俳句」である。

朝焼の雲海尾根を溢れ落つ

霧深き積石(ケルン)に触るるさびしさよ

ここにあるのは、「山歩き」の視点でなく、「山登り」の視点。
登山家でもあった石橋辰之助の句が、「山岳俳句」と言われるゆえんである。
しかし、この妙義の句を見つけて、彼の山岳俳句の奥行きが、とても興味深くなった。
のちの新興俳句運動時代の句も合わせて、今年は是非読みたい作家のひとりである。

【天候】
終日、快晴。
午後から風強く、冷え込み甚だし。

1470声 優しい魔法

2012年01月10日

春昼や魔法の利かぬ魔法瓶  安住敦

なんて言う絶妙なユニークを漂わせている句がある。
春の昼ならば、軽く微笑んで済ませられるが、いま、この一月の真冬時期となると、
見過ごせぬ現象である。

先日、ポットを買った。
電気ポットでなく、ジャーポットと言われる、所謂「魔法瓶」のポットである。
ステンレス製のものでなく、昔ながらの「ガラスまほうびん」というもの。
そっちの方が値段が安かった、と言うこともあるが、
より「魔法」感が醸し出ていたからである。
それまで使っていたポットは二十年選手で、大分古いものだった。
魔法の利き具合も大分弱って来ており、朝入れた湯が昼を待たずに冷めてしまい、
温い茶を啜らねばならぬ事もしばしばあった。
今度のポットは、まだ使い始めたばかりだが、新しい分、やはり魔法のよく利く感じがする。

ボタンひとつで湯が湧く。
と言う文明の利器は、素晴らしい。
しかしどうやら、魔法を使ったほうが家計にも、地球にも優しそうである。
去年の春以降から、生活の些細な場面で、そんなことを考えるようになった。

【天候】
朝は晴れ、午後になり曇りがち。