先日、古本屋で、古本を一冊、衝動買いした。
「日本剣豪列伝」著・直木三十五(河出文庫)、である。
勿論、面白そうだから買ったのであるが、
購買の引き金となったのは、「上州」の一文字。
頁を捲っていたら、上州の剣豪に関する内容が、所々に見られた。
確かに、上州は元来、武芸の盛んな地域でもあるので、当然である。
しかし、本文の焦点は、本の内容ではなく、本に挟まれていた、
「しおり」に当たる。
帰宅して、徐に本を読もうと頁を開くと、しおりの入っている頁が開いた。
しおりを取り出して見ると、それはしおりでなく、
「生ビール一杯券」と印刷されたチケット、なのである。
黄色の色上質紙に、赤文字で記載されている店名は、「池袋ミュンヘン」。
そのコピーには、「パイプオルガンが楽しめる」とある。
有効期限は、61年7月31日。
勿論、昭和であろう。
インターネットで調べると、この池袋ミュンヘンとは、
池袋では有名だった老舗ビアホール。
過去形なのは、平成18年に惜しくも閉店してしまったらしい。
それにしても、しおり代わりに挟んであった、昭和61年のチケットが、
25年の時を経て、今、私の手元にある。
本の内容よりも、その状況の方に、魅かれてしまう。
全所有者は、ミュンヘンでビールジョッキ片手に、
本書を読んでいたのであろうか。
それとも、歴代の購入者が皆、このチケットを挟んだまま、
手放して行ったのか。
印刷されている、池袋東口の地図。
駅前の、「キンカ堂」と「富士銀行」が、郷愁を誘う。
【天候】
終日、穏やかな快晴。