日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和6年度は4月(ぬ)5月(岡)6月(す)7月(堀)8月(坂)9月(ぬ)10月(岡)11月(す)12月(堀)1月(坂)2月(ぬ)3月(岡)の順です。

1134声 ミュンヘンの剣豪

2011年02月07日

先日、古本屋で、古本を一冊、衝動買いした。
「日本剣豪列伝」著・直木三十五(河出文庫)、である。

勿論、面白そうだから買ったのであるが、
購買の引き金となったのは、「上州」の一文字。
頁を捲っていたら、上州の剣豪に関する内容が、所々に見られた。
確かに、上州は元来、武芸の盛んな地域でもあるので、当然である。
しかし、本文の焦点は、本の内容ではなく、本に挟まれていた、
「しおり」に当たる。

帰宅して、徐に本を読もうと頁を開くと、しおりの入っている頁が開いた。
しおりを取り出して見ると、それはしおりでなく、
「生ビール一杯券」と印刷されたチケット、なのである。
黄色の色上質紙に、赤文字で記載されている店名は、「池袋ミュンヘン」。
そのコピーには、「パイプオルガンが楽しめる」とある。
有効期限は、61年7月31日。
勿論、昭和であろう。

インターネットで調べると、この池袋ミュンヘンとは、
池袋では有名だった老舗ビアホール。
過去形なのは、平成18年に惜しくも閉店してしまったらしい。
それにしても、しおり代わりに挟んであった、昭和61年のチケットが、
25年の時を経て、今、私の手元にある。
本の内容よりも、その状況の方に、魅かれてしまう。
全所有者は、ミュンヘンでビールジョッキ片手に、
本書を読んでいたのであろうか。
それとも、歴代の購入者が皆、このチケットを挟んだまま、
手放して行ったのか。

印刷されている、池袋東口の地図。
駅前の、「キンカ堂」と「富士銀行」が、郷愁を誘う。

【天候】
終日、穏やかな快晴。

1133声 燗の戻り

2011年02月06日

一挙に寒が戻って来た。
今朝より、白い雪雲に覆われている我が町では、
開戦前夜と言うか、いままさに雪が降り出して来そうな気配。

今宵はひとつ。
酒席があるので、土産に瓶麦酒など持って行こうと、
冷蔵庫で冷やしてあった。
しかしこの寒さ、到底、瓶麦酒で喉を鳴らす気にはなれない。
五臓六腑の要求もまた、燗に戻っている様子。
ちとお行儀が悪いが、飲みかけのウイスキーを持って行く事にする。
いや、やはり飲みかけでは申し訳ないので、
途中で買って行こう。
こうなるってぇと、懐具合にも、また寒さが戻って来る。

【天候】
朝より雪だ降り出しそうな、曇天。
寒の戻りで寒し。

1132声 秩父の2湯

2011年02月05日

昨夜はまた、力尽きて寝てしまった。
疲労困憊の上、空っ腹に麦酒で、機能停止、と言う運びである。

出掛けた。
目的地は、埼玉県秩父市。
市街地に、銭湯が2軒残っている。
「クラブ湯」と「たから湯」、である。

情緒の残る市街地を散策し、立て続けに2湯に、入浴。
どちらも、お客さんの絶えないくらい、活況があった。
とは、誇張である。
確かに、お客さんは絶え間な入っていたのだが、
かつての「活況」とまでは、到底言えないのだろう。
しかし、街に根付いている銭湯だと感じた。

どちらの銭湯にも、ペンキ絵があった。
作者は、行田市のエハラ尚栄堂さん。
特に、クラブ湯の方は、平成21年の作なので、とても綺麗だった。
「3年~4年くらいで一回塗り替えるんですよ」
とは、女将さんの談。
定期的に、ペンキ絵に気を配って塗り替えられている姿勢は、
素晴らしいと思った。

お客さんが入ってらしたので、どちらの湯も、
写真撮影をせずに帰って来た。
どちらも、写真や取材など抜きに、ふらりと行きたい銭湯である。
常連さんも、楽しい方が多かった。

帰路のついでに、日帰り温泉へ寄った。
考えてみれば、本日3回目の入浴である。
大きな日帰り温泉施設は、設備充実、徹底清掃など、
確かに魅力がある。
しかし、伝統銭湯の、あの、浴室の雰囲気。
例えば、見知らぬお爺ちゃんとふたりで湯船に入っている、あの閑けさ。
そう、銭湯には、俳味がある。

【天候】
時折、一塊の雲が流れて行くが、終日、晴れ。

1131声 春の時間だけ、立つ

2011年02月04日

立春の今日は。
などと、数時間推敲した揚句が、この、ありきたりな書き出し。

立春の今日は、春めいて穏やかな一日となった。
などとのんきに言っているのは、九州以東の人間。
九州は現在、大変なのである。

特に宮崎県。
先日から続いている、鹿児島県と宮崎県の県境にある、
霧島連山の新燃岳の噴火。
間髪入れずに、今日。
高千穂町の養鶏場で、遂に鳥インフルエンザの陽性反応が出てしまった。

それを受けて、自分にできる行動を考えている。
しかし、一向に浮かばぬまま、時間だけが過ぎて行く。
パソコンから、異音がしている。
爪先が、冷たくなっている。

【天候】
終日、穏やかな快晴。

1130声 ふてぇ野郎

2011年02月03日

「あっ、忘れた」
などと、一瞬焦ってしまった。
しかし、改めて考えれば、元来、習慣ともしていなかったので、
別に、忘れた所で、さして生活上の支障は無い。
つまり、「恵方巻き」が、である。

いつ頃からだったろうか、おぼろな記憶によれば、2004、5年の様な気がする。
それは、私の住む群馬県内のコンビニや、スーパー、飲食店において、
突如として、「恵方巻き」が現れた年。
それまでも、その物自体はあったのだろうが、ある年を境にして、であった。
節分の時期になると、この恵方巻きを、各業界が前面に押し出して、
広告宣伝するようになったのである。

それからは、当然の如く、節分やバレンタインデーと肩を並べて、
この「恵方巻き」が、伝統歳時然として、二月の行事に居座っている。
まったく、ふてぇ野郎だ、太巻きだけに。

こんなオチで終われる程、神経が太くないので、もう少し続ける。
なんでもこの「恵方巻き」。
節分の夜に、その年の恵方(今年だったら南南東)に向かい、
願い事を思い浮かべながら、太巻きを丸かじりにする。
この時、目を閉じて、言葉を発せずに黙って、食べるのだと言う。
そうすれば、無病息災、商売繁盛で、福が訪れる。

と言う事なのだが、巷ではその商戦の方が激化していて、
恵方巻きのロールケーキが、人気を博している。
どうであろうか、節操無しついでに。
鬼の格好をして、この恵方巻きのロールケーキを、バレンタインデーに食べる。
てぇのは。

【天候】
終日、穏やかな快晴。
気候も温かく、3月を思わせる、春の陽気。

1129声 ノーヤク

2011年02月02日

今日の昼間、である。
郊外を車で通っていたら、畑から野焼きの煙が上がっていた。
「あっ」
と、思った。

丁度、昨日。
歳時記の2月の頁を読んでいた際、
「野焼く」と言う季語を見ていたからである。
電気自動車が街に走っていようが、
スマートフォンが爆発的に普及しようが、変わりなく、
季節と共に生きている人たちがいる。
まだまだ、田舎では、歳時記に則った生活が営まれている、と感じた。

その光景を眺めながら、ゆったりと句作。
できるような、生活など一向に営めないでいる。
貧乏暇なし。
なんて、俗な表現を使いたくないところだが、
他に適切な諺も浮かばないので、まさにそんな状態なのであろう。

そして、午前零時を迎えようかと言うこんな時刻に、
ストーブの火を見つめながら、野の光景を思い返している。
なんだか、少し腹が減っている。

【天候】
終日、穏やかな快晴。

1128 仲入りの2月

2011年02月01日

今日から2月である。
だから何と言う事も無いのだが、
それも2月と言う月の影の薄さかも知れない。

歳時記の二月は薄し野に出づる  佐伯哲草

と言う俳句に、象徴されるように。

冬が終わって、春が始まる前の、小休憩。
落語で言えば、仲入り。
と言っては、2月好きの人や2月生まれの人が怒るかも知れないが、
実際に、そう言う感がある。

しかし、この、小休憩や仲入り。
大変、重要であり貴重な時間である。
落語の場合だとそれぞれに、席を立つ人が多い。
トイレに行ったり、電話をしたり、また、席で弁当を掻き込んで居たり。
それから、出番もいよいよ深い時間となり、
お目当ての真打ち登場、と相なる。

だから私は、例え2月でも、薄い歳時記を持って、野に出るつもりである。
真打ちの芸に、期待を込めながら。

【天候】
終日、快晴。
冬型の気圧配置がゆるみ、やや暖か。

1127声 日々の戦術

2011年01月31日

この単語を書くならば、
「日本国民としてけしからぬ」
と言う類の読者からの指摘が推測されるが、
しかしそれは、疑心暗鬼過剰であろう。

つまり、見ていなかった、一試合も。
先の、サッカーアジアカップを、である。

今日、ザッケローニ監督率いる日本代表が、
成田と関西空港着の便で、帰国して来た。
アジアカップで、単独最多となる4度目の優勝を果たし、
大勢のファンが出迎える中の、凱旋帰国となった。

それぐらいは朝のニュースで知り得た情報だが、
テレビ観戦していないので、試合内容は全く分からない。
そんな状態なので、社会生活で、ちと困った。

「しかし川島は、良くぞ頑張りましたね」
とか、
「あの試合でのザック采配は」
など、アジアカップの話が、巷に多い事、多い事。
しかも、当人は、当然、相手が観戦している事を疑わずに、
戦勝気分を抑えきれずに、話していらっしゃる。
その気持ちを汲んで、私。
しどろもどろになりながら、取り繕って、話を合わせる。

そして、サッカーフリークの方々は、必ず、その戦術を語る節がある。
「4-4-2」だとか、「3-5-2」だとか。
一応、4-4-2ならば、DFが4人、MFが4人そして、FWは2人と言う、フォーメーション。
と言う事ぐらいは分かるが、それが、どう言う特性を持っているのか、知らぬ。
しかし私だって、「5-7-5」、と言うフォーメンションで、日々の生活を戦っている。

【天候】
終日、快晴の一日。
午後より、からっ風強し。

1126声 群馬支部のストーブ

2011年01月30日

寒い。
寒いと、この場で頻繁に書いているが、寒いのだから仕様が無い。
今日もまた、一段と寒い場所へ行って来た。
桐生市は「自然観察の森」てぇ、小高い山にある公園が、其処。

見渡す限りの枯山。
結氷している沼。
舞い飛ぶ風花。

そんな状況の中をほっつき歩いて、何をする。
勿論、野鳥観察、でなくて、句会なのである。
句作する為に、園内を吟行していたので、
野鳥観察をしていなくもない。

水洟を垂らしつつ、いつもの如く、7句作って投句。
今回、自分の成績はあまり芳しくなかったが、
参加者の佳句が沢山見られた。
当日の先生方の選句で、自分の「暖炉」を詠んだ句が、
一つだけ、おまけ程度に特選を頂いた。

句会が終わって、素竹先生。
私に向かって、第一声。
「ありゃ、暖炉じゃなくてストーブだぜ」
いやはや。

【天候】
終日、晴れるが、赤城、榛名にかかる雪雲。
時折、零れ、流れて行った。

1125声 公魚を信用すること

2011年01月29日

部屋の中に居るのだが、指がかじかんで、
キーボードを打つ手が、ままならならない。
それほど、冷え込んでいる、今は、夜半。

この寒い時期に、極寒の榛名山を登って行く人たちがある。
公魚を狙う、釣客である。
ここ数年、温暖化の影響によって、榛名湖の結氷が足りず、
群馬の風物詩となっている、湖上公魚釣りが解禁されずにいた。
それが今年、上手い具合に結氷し、待ちに待った、公魚釣りの解禁。
と言う運びになり、大いに賑わっているらしい。

関係者に聞くところによると、その氷の厚さ。
一昔前に比べると、随分と薄い、のだと言う。
私も先輩方から話を聞くと、冬は公魚釣りとスケートで、
湖上を埋め尽くさんばかりの人出だった、と言う。

古い本で読んだのだが、その昔、公魚が肺病、つまり結核に効く。
てぇのが、広く世間に言われていたらしい。
結核が不治の病だった、当時。
冬になると、この榛名湖の公魚を食べて、伊香保で湯治をして体を癒す。
と言う、お客さんで随分と賑わっていたらしい。
もっとも、病人なので、街場の活況とは、少し違うだろうが。

私などむしろ、公魚釣りに出掛け、湖上のテントに一昼夜居たら、
その寒さで、肺を病んでしまうそうである。
そう言う事を、行きつけの床屋のおやっさんに話すと、
「いやぁ、テントん中はねぇ、中々、あったかいもんですよ」
なんて言うが、一向に信用できない。

結氷した榛名湖畔を思い浮かべるだけで、背中に寒気が走る。
だけれども、床屋のおやっさん曰く。
一度、湖上で自分の釣り上げた公魚を、そのまま素揚げにして食べる。
その美味なる味わいを堪能したら、止められない。
のだと言う。
なんて言うが、それも、一向に信用できない。
しかし先程から、一向に、部屋も温まらぬ。

【天候】
終日、快晴なれど、午後からからっ風吹き、とても寒し。

1124声 ドラえもんで3本

2011年01月28日

巷は流行性感冒。
つまり、インフルエンザが蔓延している。
よって、全年齢的に、マスクをかけている人が多い。

今日も、
「あれ、風邪ですか」
と聞くと、
「いえ、花粉症です」
なんて、花粉の飛散も既に始まっているらしい。

人間もそうであるが、昨今、騒がれているのが、鳥インフルエンザ。
国内では、渡り鳥の死骸から確認された事例が、各県で発見されているらしい。
渡り鳥にマスクをかける訳にもいかないので、養鶏業関係者一同は、
大弱りである。

そう言う事も相まって、外は危険だ。
ってんで、今宵は、自宅の炬燵で飲んでいる。
今日は、午後7時からドラえもんを見ながら、瓶麦酒を3本。
のび太は、やはり、のび太であった。
それで、よかった。
ので、今から、もう1本。

過ぎたるは及ばざるが如し。
よって、いや、酔っていて、冒頭のインフルエンザにかかる文章構成が、
ままなっていない。
今宵は、もう、俳句を作ってから、寝ようと思う。
こんな状態で俳句など作れない。
と、自分でもそう思うが、「毎日作る」、と決めてしまったので、
その俳句の、良し悪しは関係ない。
兎も角、決めた事をやる。
と言うだけの事、なのである。
丁度、この文章のように。

【天候】
午前中、快晴。
午後も晴れるが、風強し。

1123声 授かる心持ち

2011年01月27日

金曜日に記す。

昨日は、素竹先生宅での定例句会。
句会は夜に行われ、自宅に帰って来ると、
もう、日付変更線を越えている。

季題は未だ冬。
先生宅は小高い丘に位置しているので、
冬銀河も夜景も、一望にできる。
よって、季題には困らない。

昨夜は一つの季題、例えば、昨夜の私は「星」。
つまり、「冬の星」だとか「凍星」、「冬銀河」に、
主な焦点を当てて句作した。

自分と季題との関係。
季題と地球との関係。
隠喩と暗喩との関係。
抽象と具象との関係。

関係者各位が多すぎて、思考は散漫。
おまけに、体が冷えてしまったので、玄関へと戻った。
戻って行く途中、キラリと流れ星。
の如く、脳内に一閃して、句が生まれた。
大方の、私のおぼろげな句などは、こう言う時にできる。

何か、作りたい句があって、それがずっと、形にならないでいる。
或る時、ふとした瞬間に、それが形になり、句が生まれる。
そう言うのを、「授かる」と、言うらしい。
それはどうも、「授かる気満々」で居ては、駄目らしい。

【天候】
終日、穏やかな快晴。

1122声 紙キャップ

2011年01月26日

銭湯へ行く事の楽しみのひとつに、瓶の牛乳を飲む事が、ある。
現在では、日帰り温泉などでも、瓶牛乳の自動販売機があるが、
伝統的な銭湯の脱衣場で飲むてぇのが、また一興なのである。

瓶牛乳を販売している銭湯で、稀に、
珍しいメーカーの牛乳に出遭える事がある。
主に現在の群馬県内は、「メグミルク」と「森永」の二強で、
銭湯瓶牛乳界が席巻されている。
それが、私のおぼろな記憶であるが、
桐生市の「一の湯」に、地元メーカーの「田中牛乳」。
伊勢崎市の「寿美乃湯」に、「メイトー」があった。

そして、茨城県筑西市の「松の湯」に、「栃木乳業」。
埼玉県坂戸市の「越の湯」では、「コーシン牛乳」などなど。
その土地の銭湯で、一風変わった牛乳を飲むのが、楽しい。
私の鈍感な舌では、上手く感じ取れないが、当然味も、それぞれ違う。

それらの瓶牛乳は、キャップが昔ながらの紙製のものが多い。
私は、学校給食が紙パックの牛乳だったので、銭湯で初めて、
紙キャップの瓶牛乳を飲んだ。
一番最初は、その開け方に、いささか戸惑ってしまった。
因みに、大手メーカーの瓶牛乳はポリキャップなので、
「パコッ」と容易に開けられる。

あの紙キャップの瓶牛乳などもそうだが、やはり、
「昭和」を楽しめるから、銭湯は良い。

【天候】
午前中、晴れ。
午後より、風強く、雲多し。

1121声 落語の写生

2011年01月25日

昔の人である。
群馬県佐波郡境町てぇから、現在の伊勢崎市。
落語家、5代目古今亭今輔の出身地が、である。

先日、知人の方が、5代目古今亭今輔の落語CDを借してくれた。
きっかけは、私が上州弁の落語があったら、面白い。
と、書いた事にある。
「じゃあ」
ってんで、それにうってつけの落語が、この5代目古今亭今輔であった。
今回の5代目今輔の聴き所は、主人公が同じ上州出身と言う事で、
十八番としていた、「塩原多助一代記」にある。

「塩原多助一代記戸田の屋敷」。
その枕で、「私が今晩申し上げる上州弁は、100年前の上州弁でございます」
と言っているとおり、
「~べぇ」、「~だんべ」や、「ぶっちゃちゃう」。
など、その噺の中に、生粋の上州弁が散りばめてある。
上州人が聴けば、直ぐに分かる。
そして、「~がんす」、「~なんしょ」や、「~やんすから」。
など、現代の上州では、あまり聞かれなくなった方言も、多数登場する。

「言葉」
と言うのは、その人物のディティールを表現する上で、とても大切だと感じた。
上州弁によって、沼田城下から出て来た多助、「土臭さ」が、よく写生されていた。
「江戸の炭屋の下男」としての、生き様、つまり、その「生」を感じたのである。

いろいろな師匠方の「多助」を聴いたが、上州弁の多助に、
特に深い感慨を覚えた。
5代目古今亭今輔は元より、土着言葉の強い落語にも、
興味が湧いてきた。
ちと、これから、志ん生の多助と聴き比べてみるつもりである。

【天候】
午前中、雲多く、風強し。
午後、穏やかな、晴れ。

1120声 朝陽の水割り

2011年01月24日

先の週末、旧知の友人と久しぶりに杯を酌み交わした。
彼の住んでいる神奈川県と、私の住んでいる群馬県。
その中間距離をとって、埼玉県で待ち合わせた。

その彼と飲めばいつでも梯子酒。
唐突に、七五調になってしまったが、つまりそう言う事であった。
しかし、現在はお互いの年齢を鑑み、低価格な宿泊施設で飲むことにした。

男同士。
と言う、気恥ずかしさから、自然と会話も浅くなる。
その分、酒の酔いは深くなる。
気付けば、私。
どうやら知らぬ間に寝てしまった様で、起床したら、朝になっていた。

畳の上には、転がっている缶麦酒。
机に肘をついて、テレビを見ている男が一人。
白障子から入り込む朝陽に、浮かんでいる。
彼が飲んでいるのは、おそらく、水割り。
つまり、昨夜から途切れることなく、飲んでいたのであろう。

「変わってないな」
と言う部分が見たかった。
それが自分の「動機」、であった事に気が付いた。
彼を駅まで送って、帰路に着いた。
バックミラーに、千鳥足で朝の駅へと消えて行く、彼の姿が映った。
後ろ姿。
ってのは、見ない方が良い、と思った。
なんだか、寂しいから。

【天候】
朝より晴れ。
午後に雲が多くなるが、曇ったまま、天気が崩れはしなかった。

1119声 うどんの、あの味

2011年01月23日

高速道路を利用して、隣県の銭湯へ行き、入浴して、また高速道路で帰ってくる。
と言う、酔狂な試みから始まった週末が、今、終わろうとしている。
毎年恒例である新年会から帰って来て、これを記している。
おそらくこれが、私において、今年最後の新年会となる筈である。
新年会は、どの会もおしなべて陽気なのがよい。

今日の昼間は、「料理工房ほのじ」で、「第1回地粉会議」だった。
群馬県産の地粉である、「農林61号」と「絹の波」の、各種料理での食べ比べ。
その料理の中、やはり小麦粉は、うどんにすると、その違いが良く分かる。
茹でて、麺だけを何もつけずに食べ比べると、その違いが瞭然となる。
色、食感、風味など、「粉」の性質によって、まるで違う。
所謂、「現代風」な味わいを、「絹の波」の方に感じた。
そして、「農林61号」のどこか懐かしさを覚える風味が、
自分の好みだと、判明した。

その「好み」の所以は、子供時分、祖母の家で祖母と一緒に作ったうどんによる。
ハレの日に、祖母はよく、粉からうどんを打った。
うどん生地を、足で踏んで、寝かせて、伸ばして、麺にする。
その作業を祖母と一緒に進行し、自分の作った、うち立てのうどんの、あの味。
今でも、忘れがたい。
ぼそぼそでぼきぼきだったが、やはり、何とも言えない、味わいがあった。

【天候】
終日、快晴。
私見による、群馬県ガソリン平均価格、1リッター135円前後。

1118声 書店から銭湯

2011年01月22日

今日。
前橋市の書店に、『群馬伝統銭湯大全』を納品に行って来た。
こう書くと、「売れてるね」と、捉える読者の方がいるかも知れないが、
実際の売れ行きは、甚だ芳しくない。
しかし、全く売れていない訳でもない。
私自身は、「自費出版、自主流通」と言う事に、殊更、卑屈になってはいない。
だから、ひとまず、順調なのである。

本が置いてある、県内の書店、どこも。
目立つ位置に置いてくれてある。
群馬県の温泉紹介本に紛れて、銭湯の本が置いてある光景は、
自分の本ながら、反笑いを禁じ得ない。

現在、幾つかの県内書店に本を置かせて頂いているが、
よく売れる所、あまり売れない所が、顕著に表れている。
それは、その書店が繁盛しているしていない、と言う統計ではなく、
あくまで、私の本の、統計である。

その書店に訪れる、「年齢層」だと推測しているが、
その地域に伝統銭湯が身近な存在かどうか、かも知れない。
購買年齢層は、随分と高いような気がしている。

さて、もうじき夕方である。
今日もまた、銭湯へ行くつもりである。
最近、埼玉づいていいるので、それを引きづって、
埼玉県の銭湯へ行くつもり。
その地域に、どんな湯があるのか、とても楽しみである。

【天候】
終日、晴れ。
午後より、雲多し。

1117声 大寒の馬鹿晴れ

2011年01月21日

「大寒」
から一日過ぎてしまった。
昨日に、大寒の事を書こうと思っていて、すっかり忘れてしまった。
一度思い出した事を、このまま有耶無耶にするのは、
何だか気持が悪いので、今更ながら、大寒の事を書こうと思う。
しかし、大寒の事を書く。
と言う事は分かってても、はて、大寒の「何を」書こうとしたのかが、
一向に判然としない。

大寒の昨日。
そして、大寒から一日たった今日も、呆れるくらい、晴れていた。
まさに、この句を暗唱してしまうような。

大寒の馬鹿晴れにして山へ鳥   岸田稚魚

寒過ぎる。
そして、空が青すぎる、大寒の日。
澄んだ景色の中、遠くの山へ飛んでゆく鳥が見える。
やけくそ気味に馬鹿晴れした空の下、
その光景を眺めている、作者の呆れ笑いが見えるようである。

現在時刻、午前零時。
我が部屋には、スチームヒーターが付いているが、やはり大寒。
放射冷却。
か、なんか知らんけど、こりゃ寒いね、しかし。

【天候】
終日、快晴。
午後より、風強し。
浅間山、峰に雲を置きつつ、全体雪。
赤城山、山頂部に薄く雪。
榛名山、雪無し。
妙義山、雪無し。