日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和6年度は4月(ぬ)5月(岡)6月(す)7月(堀)8月(坂)9月(ぬ)10月(岡)11月(す)12月(堀)1月(坂)2月(ぬ)3月(岡)の順です。

1156声 胸を張って背中を丸める

2011年03月01日

雨のまま、今日から3月。
年度末って事で、世間が何かと慌ただしい季節。
個人的には誕生日月なので、またひとつ年を重ねるのかと、
感慨深い月である。
私など、もうこの年になれば、誕生日など嬉しむべき日でなく、
忌むべき日である。

「若年寄」だとか、「老成している」。
はたまた、「爺臭い」などと、知人から言われている。
それは、若い時分から、私の趣味嗜好が、
「銭湯」や「俳句」などに拘泥している事に、起因している。

自分が「若い」と言う立ち位置で、それらの対象と接してきたが、
これから先、「そんなに若くもない」と言う立ち位置に移行してゆく。
もっとも、それはごくゆっくりとであるが。
そして、その立ち位置で接する、銭湯や俳句、友人知人、未だ見ぬ人たち。
それら数多との関わりの中での、自分、と言う奴に、少々興味が有る。

「まだ若い」と、胸を張るのか。
「もう若くない」と、背中を丸めるのか。

恋猫の恋する猫で押し通す (永田耕衣)

と言う手もあるな。

【天候】
朝より曇天。
昼から夕方にかけて、一時雨。

1154声 異文化交湯

2011年02月27日

「潔く入れ」
語気の荒い言葉が、飛んできた。
その言葉に背中を押される様に、浴槽に片足突っ込んでいた兄弟。
決死の思いで、浴槽の中へ、体を埋めて行く。

それは、私が先程、高崎の銭湯で見た光景。
親父に連れられて銭湯へ来た、兄弟である。
大人なら兎も角、銭湯のあの熱い湯船に浸かる際、
子供は随分と大変であろう。
最近、大人でも躊躇しつつ浸かってゆく御仁を、多く見かける。
そこへ来て、この頑固な親父さんは、それを許さない。
子供には、ちと酷だと思ったが、反面、古風な教育方針だと、関心した。
それは、この家族が、日本人でなく、
中東系の外国人だったから、尚更、である。

一般的に、銭湯へ来る外国人はマナーが悪い。
なんて、言われているが、一概にそんな事も無い、と感じている。
私も、群馬県内各地の伝統銭湯へ入浴しているが、
湯客に、少なからず外国人の方を見掛けた。
そこではむしろ、日本人のマナーが疑わしい局面に、
出遭う事の方が多かった。

外国人における、「マナーが悪い」。
と言うのは、異文化である銭湯文化を、知らない者であろう。
日本人における、「マナーが悪い」。
と言うのは、銭湯文化を知りつつも、それにあえて準じない者、だと思う。
どちらが性質悪いかと選べば、後者を挙ざるを得ない。
私が今日見た外国人の様に、日本人よりも日本人らしく銭湯に入り、
そこで、子供の教育までする、筋の通った外国人だっている。
と言う事は、銭湯マナーの周知徹底が出来れば、外国人の潜在顧客を、
大いに呼び込める、のである。
巷の銭湯で、異文化交湯が見られる日が、もうそこまで来ている。

【天候】
終日、穏やかな快晴。
風も弱く、暖かな気候。
銭湯の瓶牛乳、平均110円。

1153声 つぶやき日和

2011年02月26日

春一番明日はたぶん良く冷ゆる

と、別に俳句にする事もない。
のだが、その言い伝えに反する事なく、今日は寒さが舞い戻って来た。
仕舞いかけたストーブを引っ張り出し、部屋に逼塞している。
100円ショップで購入した、民謡特集のCDが、軽快なBGMを奏でている。
そこに、一本の電話。

着信の相手は、ほのじ氏であった。
なんでも、「ツイッターが、用意してある」と言う旨。
遂に、自らにもツイッターの波が押し寄せて来た、と言う感慨、少々。
「でそれは、パソコンからやるものですか、それとも、携帯電話」
なんて、質問をしているくらい、高度情報化社会から取り残されてしまった、私。
回答は、無論。
「両方だよ」

なんだか、遡る事、4、5年前は、ほのじ氏に対し、
「ブログてぇものが、あるんですがね、御存じですか」
なんて、大威張りで言っていた記憶がある。
今度は、逆の立場になってしまった。

「じゃあ、つぶやいてくれ」
という言葉を残して、通話は終った。
窓の外は、霞みがかった淡く碧い、春の空。
本日、つぶやき日和。

【天候】
終日、快晴。
風強く、冴え返る。

1152声 まさかの春

2011年02月25日

今日は、東京に春一番が吹いた。
さて、いよいよ、春本番である。
とは、言えず、明日からまた冴え返るらしい。
三寒四温とは、まったく思わせぶりな気候である。

現在時刻は午前零時。
今、我家に轟々と吹きつけているこの強い風も、
春一番と言う事になるのであろう。
昼に吹く風と、夜に吹く風。
同じ春一番でも、随分と様相が異なる。

それは、「春」と言う季節全体に言えるのではなかろうか。
春昼、春日、春風。
に対して、
春宵、朧月、宵霞。
後者の方が、明らかに、ミステリアスな印象を醸し出している。
この季節を敏感に感じ取った顕著な例が、猫。
この時期、野良猫も飼い猫も、年頃となった近所の猫と言う猫は、
恋猫となって夜を徘徊する。
そして、どこからともなく、奇妙な鳴き声が聞こえてくる。

その鳴き声。
昼間、芝生上で寝転んでいた、我家によく来る、
あの可愛らしい三毛猫のものだとは、けっして、思わぬようにしている。
しかしながら、まさか、の春、である。

【天候】
終日、晴れ。
春一番が吹き、伊勢崎市では最高気温22℃以上を観測。

1151声 春の朧の中

2011年02月24日

月例句会の時はいつも、帰宅が日付変更線を跨いでしまう。
先生のお宅に伺ったら、机の上。
中央に置かれた花瓶に、神々しい、と言う形容が誇張でない程、
綺麗な猫柳が生けてあった。
勿論、春の季題なので、それも加えて、句会。

句を作る為、私は机の座からひとり抜けて、外へ出てみた。
窓ごしに、光溢れている室内が見えた。
机の周りに座っている人たち、皆、斜め上を見上げている。
句作の為に、花瓶の猫柳を、凝視しているのである。
その光景は、「猫柳教」と言う、新手の宗教のようにも見えなくはない。

遠くの山を眺めると、霞みがかっていて光がぼんやりと見えた。
音も、光も、匂いも、春の朧の中。
さて、俳句を作るには、五感を駆使して、それを感じなければならぬ。

【天候】
朝より曇り、午後より雨は降らねど下り坂。
気温は3月の陽気で、暖か。

1150声 梅と桜と私

2011年02月23日

日を追う毎に、春めいてくる。
とりわけ今日は暖かく、長袖シャツ一枚でも、
軽く体を動かせば薄っすらと、額に汗がにじんだ。
高崎市の街中では、梅が綻び始め、
淡い梅の香が風に漂っている。

そんな早春の光景を眺めつつ、若干の、焦燥感。
と言うのも、次回の俳句ingの予定が、来月の中旬なのである。
昨夜、その行程を作り終え、今日から、募集を開始する。
この暖かな気候が、調子良く続くと、それに伴って、
梅の開花も調子良くなる。
そして、来月の中旬には、早々に、シーズンオフ。
なんて具合が懸念され、だんだん心配になってきた。

今回の目的地は、群馬三大梅林のひとつでもある、「箕郷梅林」。
茶店で饅頭でも頬張りながら、梅で一句。
と言う趣向を意識しているので、そこにはやはり、
満開の梅がないと困る。
三寒四温でなく、四寒三温くらいになって欲しいと言うのは、
叶わぬ願であろう。
来月の今時分は、桜の心配をしているかも知れぬ。
向こう数ヵ月は、梅と桜と私、一進一退の攻防が続きそうである。

【天候】
終日、穏やかな快晴。
風が春めいてきた。

1149声 群馬にもパンダ

2011年02月22日

今日の午前零時頃。
無事に檻に搬送されたのは、中国から遥々、
上野動物園へやって来た、パンダ。
雄の比力(ビーリー)と、雌の仙女(シィエンニュ)と言う名前の、
ジャイアントパンダの2頭である。
3月には日本名も決定して、一般公開されると言う。

パンダで思い出すのは、フィアット社のパンダと言う車種。
ではなく、群馬県中之条町。
勿論、実際にパンダがいる訳ではないが、ある、のである。
「ぱんだ」と言う名の、居酒屋が。

店の暖簾を、数年前に一度だけ、くぐった事がある。
こじんまりとした、雰囲気の良い店で、
店内に飾ってあるパンダグッズが、平和な空気を生んでいる。
とりわけ、焼き鳥が安くて美味く、麦酒がすすんだ思い出がある。
今回のパンダの1件でもって、何か、記念イベントでもやっているかしら。
などと、思い馳せつつ、無性に焼き鳥で一杯やりたくなってきた。

【天候】
終日、穏やかな快晴。

1148声 春の釦

2011年02月21日

こう言う偶然もあるのか。
しみじみとそう感じたのは、今朝、偶然の再会を果たした時である。
年末から数えて、かれこれ、3ヶ月ぶり。
意外と近くに居たのに、私は全く気付かなかった。

今朝の事。
玄関の戸を開け、庭先へ出ると、芝生の上。
何やら、足裏に違和感を感じた。
小石でも踏んだのであろうと、足を上げて見ると、そこには、黒い釦が1個。
拾い上げて、確認すると、それは紛う方無き、私の遺失物の釦。

昨年の暮れ、である。
コートの釦を失くした、と気付いたのだが、
何処で失くしたのかが分からない。
おそらく、何度目かの忘年会の、何度目かに行った店の床あたりに、
転がっているのだろう。
などと、さして気にもせず、前釦の無いコートを着て、ひと冬越してしまった。
そして今朝、庭先の芝生の上で発見した釦が、その失くした前釦である。

釦をポケットにしまって、車へ乗り込む。
気付けばここ最近、エアコンを入れないで、走り出すようになった。
角を曲がる時に見えた、裏の田圃の遥かに聳える、榛名山。
薄く霞んでいる輪郭に、鳥が一羽、大きく旋回していた。

【天候】
終日、快晴。
ガソリン、1ℓ135円

1147声 たからクラブ

2011年02月20日

再訪である。
秩父には、先々週訪れた。
その時に入浴した2軒の銭湯へ、今日も入浴してきた。

まずは、東町の「クラブ湯」。
女将さんに前回の訪問を覚えていて頂いており、
早速、写真を撮らせて頂く。
はしご湯。
と言う事が脳裏に有り、鴉の行水で、手早く入浴を済ませる。
「俺も早いけど、あんちゃんはもっと、早いねぇ」
と、気さくな常連のおやっさん。
女将さんも、常連さんも、人見知りの無く、
他所者の私にとって、非常に心の和む銭湯である。

コートの襟を立てて、足早に、道生町の「たから湯」を目指す。
早い時間だが、相客多数でとても盛況である。
浴室へ入り、カランに腰掛けるべく近づくと、脇からコロンコロンと、
転がって来る物体。
止まって、凝視すれば、それは、入れ歯。
厳密に描写すれば、上顎の総入れ歯である。
「はぁ、わるひねぇ、ふへへ」
と、口をふかふかさせながら、入れ歯を拾うおじいちゃん。
一寸、間を置いて、そのおじいちゃんと2人して、爆笑してしまった。

旧市街に2軒の銭湯。
それは、みどり市大間々の、「高砂の湯」、「千代乃湯」に似ている。
などと、群馬県内の銭湯と照らし合わせながら、帰路へ着いた。

【天候】
終日、曇りがちなるも、穏やかな晴れ。

1146声 輝いていた時

2011年02月19日

今週末で、榛名湖の公魚釣りもシーズンオフ。
と言う話題が、昨日の雑談の中で出た。
今年は3年ぶりに結氷したので、公魚の釣客も、
久しぶりの穴釣りを存分に楽しんだ事だろう。
公魚が終われば、次に、3月上旬の渓流釣り解禁を、
待つばかりであろう。

私は久しく釣りをしなくなってしまったが、以前はしていた。
今から一昔前、渓流釣り解禁の時期に、釣りへ出掛けた事があった。
場所は、当時の倉渕村。
渓流釣りなので、狙うのは、山女、岩魚、虹鱒などの渓流魚である。
快晴の空が薄く橙色に染まってゆく、夕まづめ。
手頃な岩の上から、川面に向かって竿を振る。
糸の先についているのは毛針、すなわち、テンカラ釣りと言う釣法である。

魚の当たりは断続的にあるものの、自らの腕も相まって、
中々、釣り上げられない。
徐々に、山間から黄昏が近づいてくる気配。
ふと、辺りを見渡して、手を止めた。
沢一面に、ひとつひとつの光が、群れをなして浮遊している。
私もどうやら、その光の群れに、包まれている。
のだが、どうした事だろう、衣服には、無数の羽虫が次々に付着。
そうなのである、この羽虫は、かげろう。
いま、まさに、孵化したばかりのかげろうが、
百万匹の群れとなって川原に浮遊している。

それに呼応するように、川面では、渓流魚たちがかげろうを捕食すべく、
さざめきたっている。
一挙に騒がしくなってきた沢で、ひとり取り残されている、私。
結局、その日の釣果は、うぐいを2、3匹だったと記憶している。
それよりも、私の記憶に焼き付いているのは、あの時の沢の光景である。
西日の射し込む渓流に、無数のかげろうの羽の輝き。
川面の輝き、魚の輝き、そして、太陽の輝き。

【天候】
終日、雲一つない快晴。

1145声 不敵に笑ふ甘納豆

2011年02月18日

「余寒」と言うには暖か過ぎるが、「春めく」と言うには未だ寒い。
如月の半ばと言うのは、そんな曖昧な時節である。

そう言う気候の為か、体調も、何だか芳しくない。
そう言えば、ほのじ氏も、体調が定まらぬとぼやいていたので、
なんだかこのサイトは、半病人ばかりで景気が悪い。

じゃあ、景気付けに一杯。
と言う気持には、到底、なれない。
消化器系統、特に、胃の調子が悪いからである。
そう言う時に限って、何故か、口が甘いものを欲している。
様な気がして、今日も、レジ横に置いてあった甘納豆を、
衝動買いしてしまった。

そのスーパーは、何故、レジの横に甘納豆など置いてあるのだろうか。
と言う疑問を、買っている私には、持つベき資格が無い。
そして、甘納豆とコーラを飲んだ事が、いけなかった。

口に甘きは腹に害あり。
と言う諺を、字面そのままの意味で、思い知った。
それに伴って、坪内稔典氏作で有名な、甘納豆の連作が思い出された。
中でも有名な、

三月の甘納豆のうふふふふ    坪内稔典

その笑いが不敵な笑みに思えるのは、やはり、私の腹具合の所為だろう。

【天候】
早朝は昨夜降り残した、雨。
その後、回復し、終日快晴。

1144声 俳句の小宇宙

2011年02月17日

日本人として、快挙。
と言う旨の、報道が打たれた。
その内容は、宇宙飛行士である若田光一さんの、
ISSのコマンダー就任が決まった。
と言うもの。
どんどん私たちの生活にも、宇宙が近づいている心持がして、
ごく控えめに、心が躍った。

この「ISS」てぇのは、「国際宇宙ステーション」の事で、
そこの「コマンダー」てぇ役職は、「船長」と言う事。
つまり、これは私の大掴みな解釈だが、言うなれば、国際線宇宙駅の駅長。
そう考えると、一層、感服する。

日本中が若田さんに注目していたのは、何と言っても、
2009年の宇宙船「ディスカバリー」の時だろう。
日本人初となる、長期宇宙滞在と言う事で、連日テレビ中継などで、
宇宙からの元気な姿が映っていた。

若田さんがコマンダーとして宇宙へ行くのは、2013年。
その頃もまた、テレビ中継で、見られるだろう。
民間人が宇宙旅行できる日が来たら、
日本から初めて宇宙へ行く俳人は誰だろうかと、思い馳せている。
宇宙からみた、あの綺麗な地球を、季節の無い宇宙で、どう詠むか。
それこそ、俳句史に残る一句になるだろう。
有季、無季どころか、歳時記もへったくれも、超越している宇宙で、俳句。
考えただけで、一寸、放心。

【天候】
曇りのち晴れ。
夕方より、雲多し。

1141声 GO SENTO

2011年02月16日

今日の日本経済新聞のWeb刊のニュース。
『都内銭湯、顧客開拓に熱「若者・外国人をリピーターに』
と言うものに、目に止まった。

なんでも、東京都内各地域の銭湯組合が、
新規顧客の開拓に、より一層、力を入れていると言う記事。
その方法は、と言うと。
スマートフォン用のアプリを公開して、情報の一覧参照性を高めたり、
外国語で書かれた入浴マナーのポスターを設置したり、と言うもの。

率直に、便利だろうな、と思う。
例えば、電車で知らない街へ出掛けて、ちと、時間がある。
そう言う時に、このアプリで近所の銭湯を、検索。
これは便利であろう。
クーポンも、善し悪しだと思うが、付ければ、集客率も高まる筈。

このサイトも、各県の銭湯を検索して辿り着く方が多い。
事前に調べて、と言うよりも、一寸時間があるから。
と言う動機の入浴客も、かなり多い筈である。
私も、ぜひ利用したいのだが、まずはそのスマートフォンとやらに、
携帯電話の機種変更せねば、話にならない。

新しい取り組みに、問題は必ず起こり得るだろうが、
問題の解決策もまた、新しい取り組みの中から見付かるような気がする。
私は、主に地方の銭湯へ行っているのだが、
今でも、常連さんや番台の御主人が、
若輩の私に銭湯の入り方を教えてくれたりする。
大切な事は、思いやり。
いつも、皆が、気持良く使える様に、心がける。
私はそれを、銭湯から学んだ。
そして、Webにおいて、それを伝える事が、重要だろう。
その気持さえ忘れなければ、大方、大丈夫なのだから。

【天候】
終日、快晴。
夜は、明媚なる朧月。

1142声 湯温問題勃発中

2011年02月15日

巷間で、と言っても、高崎市街の裏街の一部地域での話。
そこで今、一寸した、問題が起こっている。
と言う事を、行きつけの食堂で、常連のおやっさんから、聞いた。
何故、そのおやっさんが問題の話を私に持ち込んだかと言うと、
それが勃発している場所が、銭湯、だからである。

その地域には、かつて2軒の銭湯があった。
仮に、「風の湯」と「呂の湯」としておこう。
昨年、風の湯がその長い歴史に幕を下ろし、
残念ながら、廃業してしまった。
すると、幾年も風の湯を贔屓にしていた常連さん。
銭湯と言うと、自然、近所にある呂の湯に足が向く。
それが、問題の火種となった原因なのである。

呂の湯の湯温が熱いと言う事は、その地域では常識とされていた。
反面、風の湯の湯温は、呂の湯よりは幾分温く、
私も初めて伺った時分に、随分と入り易かった印象がある。
さて、呂の湯に通う様になった、風の湯の元常連さんたち。
呂の湯の湯船に浸かっている時に、こぞって、
水をジャバジャバ出して、うめてしまうのだと言う。
風の湯の適温を、呂の湯でも実現しようと言う試み。

これで面白くないのが、呂の湯の古い常連さんたちである。
それまで、伝統とされてきた呂の湯の熱湯を、
他所者に容易く温湯にされてたまるか。
ってんで、正面切って指摘したと言う。

「ちょっとすみません、ここは皆、熱い湯が好きで入ってますから、
あまりうめないで頂けますか」

おそらく、こんな丁寧語ではなかったと思うが、
大体、こんな調子であろう。
すると、風の湯の元常連さん。

「いえ、ね、あたしもあなたと、同じ湯銭を払っているんですから、
私にも、湯をうめる権利ぐらいあるんじゃないでしょうか」

「権利ときましたか。いや、呂の湯が熱湯ってのは、
もう、伝統ですからねぇ、ここいらの」

「伝統ったって、ここは銭湯なんですから、
銭を払った者が、快く風呂に入る場所なんですから、
あたしゃ、何と言われようがうめますよ」

「分からねぇ、野郎だね、まったく」

と言う具合に、常連さん同士で、問題が勃発しているらしい。
私に話してくれたおやっさんは、呂の湯の古い常連。
なので、勿論、熱湯に入りたいのだけれど、最近はこの問題で、
いささか湯が温いと嘆いていた。
それを聞いて私。
大岡越前の様な名裁きが下せる筈もなく、
曖昧な相槌を打ちながら、ただただ、ラーメンを啜っているばかり。
ラーメンがいささか温くなっていた。

【天候】
朝は雪雲が残っていたが、直ぐにすっきりとした快晴。
降り積んでいた雪も、午後には綺麗に溶けていた。

1141声 窓辺の雪景

2011年02月14日

もはや、雪国。
硝子窓に広がる光景が、である。

夕方から霙が降り出し、夜には雪となった。
現在時刻午前零時において、積雪は10cmくらいであろう。
高崎市でそのくらいなので、高崎市以北では、
更に雪の嵩を積んでいるだろう。
ニュースによると、東京でも本格的に、積雪している。
上越新幹線一部地域を筆頭に、各公共交通機関が、
その運転を停止しているらしい。

おそらく、明朝の巷では、交通機関の乱れが、甚だしいだろう。
こう言う日は、終日、家でおとなしく。
していられる筈もなく、私も勤めに行かねばならぬ。
そんな切羽詰まった状況だと言うのに、私は先程から窓辺で、
降る雪を凝視している。
雪。
そのひとひらの裏側に潜む声を、五七五に収録する為に。

【天候】
夕方まで晴れ。
夕方より曇りのち霙。
夜には雪となり、たくましく降り、積雪。

1140声 風穴に雪

2011年02月13日

スタッドレスタイヤにチェーンを巻いたマイクロバスは、
咳き込む様なエンジン音をたてながら、榛名湖畔を走って行く。
榛名神社へと続く、峠道。
雪深い路面。
辺り一面の雑木林は、ことごとく雪に覆われている。

悲惨だった。
昨日、榛名湖俳句合宿からの帰路で見た光景が、である。
雪道を下って行くバスの前方に、まず、赤色ランプが見えた。
バスが近づいて行くと、おそらくスリップしたのだろう。
路肩の側溝に突っ込んでいる、軽自動車が1台。
パトカーの脇に、警官2人。
過ぎると直ぐに、路肩に動けなくなっている乗用車が1台。
運転手の若い男性は、一心不乱で携帯電話に話しかけている。
次に、正面衝突している、車が2台、路肩に寄せてある。
そして、路肩の浅い小川へ、横転している1台のワンボックス車。
最後のその光景を見た時に、バスの一同、声を失った。

雪道は、本当に危険である。
改めて、痛感した。
身に降りかかるであろう災難が、潜んでいる。
その雪の、直ぐ隣に。

途中でチェーンを外し、私たちのバスは、無事、高崎駅へと到着した。
私以外の皆さんは、東京へと帰られた。
一番遠くは四国から。
皆を見送ってから、私ひとり、高崎の街へと歩を進める。
二日しか、一緒には居なかったが、何か、
心にぽっかりと、風穴が空いてしまった感覚。
立ち止まって、句帳を開こうとして、止めた。
そして、また、一歩二歩。

【天候】
朝は雲多くも、午後には快晴。
やや風強く、寒い一日。

1139声 一面の雪の中での俳句会

2011年02月12日

高崎駅からバスへ乗車し、榛名湖へ着いたのが、午前11時頃。
結氷している榛名湖上は、しんしんと降り積んでいる雪のお陰で、
一面の銀世界。
テント村の如く、公魚を狙う釣客たちのテントが、色とりどりに点在している。
句帳とペンを握りしめ、ザクリザクリと、湖心へ向かって歩を進めて行く一団。
それが、私たち。

10句を投句して、句会。
終わったら、雪原と化した湖へ。
宿へ戻って、10句投句で句会。
終わったら、また雪原。

夜も深い時間まで、その調子。
一日のスケジュールが終了し、床に入って目を瞑っても、
瞼の裏に、五七五が浮かんでくる。
と言う、俳句漬け人間が、完成していた。

起床して、時計を見たら、午前7時半。
即ち、残り1時間半。
投句の締め切りが、である。
カーテンを開け、窓の外へ目をやると、
湖の上をうろうろしている、人数名。
あれはまさしく、今回の参加者の方々。
顔も洗わず、歯も磨かず、兎も角、句帳とペンを探した。

そして、存分に雪と俳句と戯れて、夕方、バスで帰路へと着いた。
私など、プロ野球選手のチームに、
少年野球の選手が交じっているような、そんな、具合だった。
プロとの力の差を、改めて痛感したと共に、
そう言う人たちと作っていると、俳句力とでも言おうか、
そんな力が貰える気がした。
今回の合宿は、私にとって大きな力となった。
一番の御土産は、真っ黒に埋め尽くされた、この句帳である。

【天候】
榛名湖上はしんしんと降雪。

1138声 榛名湖俳句合宿

2011年02月11日

雪、である。
窓の外、いよいよ本降りになって来た。
向かいの家の屋根は、すでに白くなっている。
こんな日に出かる予定が、1件。
それも、山へ。

今日は、榛名湖へ出掛ける予定。
公魚釣り。
には興じる事なく、俳句を作りに行く。
それも、合宿で、なのである。
さて、時間なので、出掛けよう。

【天候】
朝より、雪。