「しかし、ガラガラだな」
思わず心の中で呟いてしまったのは、
今日、行きつけの食堂の暖簾をくぐった瞬間。
いつもの平日の昼時は、工業団地の工員さんたちが、
店内にひしめいている筈。
お茶を持って来てくれた、おばちゃんに聞くと、
工業団地が全体的に、昨今の計画停電等の影響で、
勤務時間や出勤日が、大幅にずれているらしい。
「大変ですねぇ」
と声をかけたら、おばちゃん、薄笑い。
隣にある、チェーン展開のうどん屋さんが、
計画停電中は休業するので、お客さんが流れて来ると言う。
「停電特需」
ったら世間体が悪いが、今日みたいな日の反面、そんな日もある。
やはり、昭和時代を生き抜いてきた商売は強い。
おばちゃんは、自宅横の畑で、かき菜やほうれん草を作っており、
それを食堂の定食メニュー内で、出している。
今回の放射能汚染の報道で、自粛していたらしい。
私も、一番美味しい時期に、おばちゃんの春野菜を食べられない事を、
口惜しく思った。
奥から、食堂の若旦那が出てきて、まだ赤ちゃんの息子の為、
飲料水の確保に各商店を奔走した話を、意気揚々と語りだした。
おばちゃんは、先日、上毛新聞社の本社まで、義援金を届けに行ったらしい。
ここでもやはり、昭和時代を生き抜いてきた強さ、を感じた。
ラーメンを啜り終わって、箸を置く。
誰もいない店内に、テレビの音が響いている。
ゆっくりと、入口の硝子戸が音を立てて開いた。
入って来たのは、一見して職業の判別がつかない、常連のおやっさんだった。
そして、いつもの席で、いつものラーメン定食。
【天候】
終日、快晴。
晴れて、とても暖かい一日。
計画停電は、4月で一旦打ち切りとの発表。