日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和8年度は4月(坂)5月(ぬ)6月(岡)7月(す)8月(堀)9月(坂)10月(ぬ)11月(岡)12月(す)1月(堀)2月(坂)3月(ぬ)の順です。

3890声 ワタスゲ

2017年07月02日

人生=インドアだった僕だけど、冬に続き2度目の芳ヶ平横断に参加した。六合山岳会の皆さんに混ざり、チャツボミゴケ公園周辺から、芳ヶ平湿原の中にある山小屋まで。片道4時間の道のり。

 

朝方まで降っていた雨は止み、途中青空が広がる場所もあった。広い湿原には緑のニョロニョロよろしくシダ植物が茂り、地べたに這いつくばっては銀龍草という茎まで透明な山草を愛でて、足を濡らしながら水かさがました川の上の石を渡った。まだ厚く残雪が残る場所もあった。

 

今日の一番の目的は、ワタスゲの群生地。尾瀬のような木の歩道を歩くと、視界いっぱいにタンポポの綿毛のような白いふわふわが点、点、点と広がった。そよそよと、風になびいていた。見頃は夏のはじめ、まさに今頃らしい。

 

歩道の途中には、見渡す限りのワタスゲとその奥の山々の稜線が望めるベンチがあった。そのベンチには「観光パンフレットの撮影で呼ばれたんじゃない?」というくらいその光景にぴったりな若いカップルが、並んでお弁当を食べていた。

 

「良かったら、二人の写真撮りましょうか?」

 

声をかけた。はい、と言って恥ずかしそうに並ぶ二人。女性が着ていた赤いギンガムチェックのシャツは、まさにこの場所でこそ着るべき服のように思えた。

3889声 何も知らない

2017年07月01日

早朝の吾妻川沿いをバイクで走っていて、それは新聞代配の仕事なのだけれど、今年は梅雨だというのに全然雨が降らないなと、農家は大変だろうなと、そんな独り言が続いたけれど、6月の最後は梅雨らしい天気が幾日かあった。降ったら降ったで雨合羽を着たり、新聞を防水のためのフィルムでくるんだり、めんどくさい。どうも、岡安です。

 

今、中之条町の限られた地域の主に商店の取材をしている。全部で30数件回る予定で、やっと半分に届くところか。取材者としての力量は知れたものだが、僕が生まれ育った町なので、身近さ、話の合わせやすさは外部から来る取材者に比べて上回るのは当たり前のことである。今回は映像ではなく紙媒体で、それほど深い聞き取りは必要ないにも関わらず、近所話し含めてやはり話し込んでしまう。今日伺ったのは、スポーツ用品店、精肉店、米屋、畳屋。どれも開業は古く、後ろ3店についてはどこも主なお客さんが同じ町内にある四万温泉の旅館であった。

 

四万温泉と言えば、うちの祖母は積善館の住み込み女中から始めて、今僕が住む西中之条の家を女手ひとつで建てた人である。母も同じ積善務めで、渋川から魚を運んでいた父とも四万で知り合った。狭い町なので、取材先で「岡安です」と挨拶から始めると、取材内容とは関係がないところで、「うちの母は、君んちのおばあちゃんに大変お世話になったって言ってたよ」「うちの商品を卸してた先で、よくお母さんに会ったわ」という話しが出てくる。この取材については、成果物を残すことが第一目的であるけれど、それ以外のこういう会話をすること、知らなかった地元のことを知ることがとても面白い。そして、知ったようでいた自分の身の回りのことを何も知らないということに気付く。

 

家族に直接悪口を言う人こそ稀と思うが、祖母について父について母について、悪口を言う人に会ったことがなく、皆さん「いい人だった」と言ってくれる。素直に、嬉しい。

3888声 待ちきれず

2017年06月30日

本日で私の担当期間の六月が終わりである。
朝から終日雨だし、梅雨も明けていない。
それでも、梅雨明けを待ちきれず、冷蔵庫に
「僕ビール、君ビール。」やら「一番搾り 夏冴えるホップ」
やら、夏らしい麦酒を大量にストックしている。
酔眼朦朧とする中、冷蔵庫に顔を突っ込んで、
夜な夜なほくそえんでいるという次第である。
沖縄、奄美地方は既に梅雨明けし、
本州も今年の梅雨明けは早いという予報が出ている。
また猛暑がやって来ると思うとげんなりするが、
夏祭や花火など、町が活気づく季節でもある。
祭の渦中の街中で、麦酒を飲んで汗をかいてまた飲んで、
というのは、夏の醍醐味である。
振り返れば、おぼろげなひと月であったが、
千鳥足でもなんとか前には進んだ。
岡安さんも、早朝の吾妻川沿いを、
バイクで進んでいるだろうか。

3887声 憎い奴

2017年06月29日

梅雨の蒸し暑い時期なので、
そろそろあの嫌な、憎たらしい奴の活動が活発になる時期である。
家の中に住み着く小さい奴ならまだしも、
外から家の中に入ってくる、あの黒光りした大きな奴は、
とてもおそろしい。
 
先手を打とうと、ドラックストアで殺虫グッズを買ってきた。
玄関脇に、中に毒餌の入った小さな箱を置いている。
これで、餌を巣に持ち帰ったゴキブリが一網打尽、とまでは
いかぬかもしれぬが、数が減少することであろう。
しかし、来る日も来る日も、その箱の周りに倒れているのは、
団子虫ばかりである。
今朝も、毒餌を食べたがゆえに行き倒れてしまった団子虫を、
箒で掃き寄せた。
箒を仕舞おうと玄関へ戻ると、つつつと、靴箱の裏へ小ささ
ゴキブリが隠れる始末である。
 
団子虫たちはゴキブリにそそのかされて、
毒餌を食べさせられているのではなかろうか。
そのくらい、毎日律儀に餌を食べてひっくり帰っている。
そう思うと、ますます憎い奴である。

3886声 魔窟めく

2017年06月28日

梅雨らしい天気が続いている。
こうなると、巷の不快指数も上昇の一途をたどり、
満員電車内や職場でも、苛々の気配が充満してくる。
今日も、帰りがけに机で聞きたい用事があり、
駅周辺の喫茶店を回ったが、雨模様のためか、
どこも満席であった。
 
手っ取り早く机と静かな空間にありつきたかったので、
喫茶店の脇のネットカフェに入ることにした。
都市部のネットカフェの多くがそうであるように、
席は狭小である。
PCのキーボードをモニターの横に立てかけねば、
用紙に文字を書くことが困難なほどである。
当然ながら、ネットカフェの店内は静かである。
時折、カップラーメンの匂いなどが隣席から漂ってくる
ときには辟易するが、それでも、静寂は快適である。
 
突然それを打ち砕いたのが、冒頭で述べた苛々の気配である。
通路を挟んだ後ろの席から、「チッ」という舌打ちに始まり、
「ドスッ」と机をたたく音、さらには「バキッ」とキーボードや、
おそらくPC本体をたたく音へと、席の中の気配はエスカレートしていく。
その都度、「ううっ」や「ああっ」など、中年男性と思しき、
苛立ちの声がもれている。
なんだか不気味に様相であったため、そそくさと退席し、
レジで利用料金を支払っていると、ずんずんずんという具合に、
こめかみにやや血管の浮き出た四十がらみの小柄な男性が、
こちらへ向かって来た。
レジのお兄さんが「ありがとうございました」と、
私におつりを渡すや否や、その血管浮き出し男は、「ダ」といった。
続けて、「ダ、ダ、ダウンロードデキナイ」と言い切り。
唖然とするレジのお兄さんを見据え、「ミ、テ、ク、レ」と、
絞りだすようにいった。
その後、二人は通路の奥の席へと消えて行った。
梅雨の暗さと相まって、振り返る店内の入り口が魔窟めいて見えた。

3885声 は?

2017年06月27日

著者校正のゲラが出てきた。
校正箇所の一箇所に印が付いていて、
「は?」と記載されていた。
「意味が分かりませんが」の「は」
だと内容を受け取り、文脈を見返した。
どうやら、この箇所には、
「はの一文字を追加ではないですか」
の意だということが分かり、ほっとした。
「は?」
という文字にこんなに威圧感があるとは。

3884声 箸袋の裏

2017年06月26日

よくヘマをやる。
今朝も、洗濯物を干そうと洗濯機から出したとたん、
ヘマをした事に気づいた。
黒いTシャツに紙くずがちりばめられているではないか。
これはYシャツの胸ポケットかどこかに、ティッシュを
入れっぱなしにしたまま、洗濯機を回した際にできる現象である。
ティッシュが水に溶け出し、粉々になって衣服に付着している。
この現象は、花粉症なので春先は頻繁に起こってしまうが、
今回は油断している梅雨の時期にも発生してしまった。
 
冬に多いのが、ポケットの紙くず現象である。
同じく、洗濯物を干して取り込んだ際、ズボンのポケットが、
紙くずだらけになっていることがある。
そのまま気づかずに干しているので、紙くずがカチカチに固まって、
除去するのが大変、というか取れない。
この現象も原因ははっきりしていて、箸袋なのである。
 
酒場などで、ちびりちびりと飲んでいて、ふと俳句だか忘れていたことだが、
思い出したとき、箸袋の裏にメモを取ることがある。
箸袋をそのままポケットに詰め込んで、深酒も相まって、
すっかり忘れてしまうのである。
運が良いと、箸袋の原型が少し残っていて、
切れ切れになった文字が読めることがある。
大方は、改めて読む必要もないことばかりだが。

3883声 歌声

2017年06月25日

梅雨らしい天気となって、蒸し暑い一日であった。
なんだか、耳の奥にまだ昨夜の歌声が残っている。
沢で蛍の出現を待っているとき、薄闇の中で、
子どもたちが「ほたるこい」を歌っていた。
 
「ほう ほう ほうたる こい」
 
なんだか水木しげるの世界を彷彿とさせる光景で
あるが、妙に落ち着く歌声であった。
私の住んでいるこの町では、
子どもたちの歌声を聴いたことが無い。
子どもたちの集まる光といえば、夜に煌々と灯っている、
学習塾の光くらいである。

3882声 里の闇

2017年06月24日

蛍狩りへでかけた。
ほたるのその時々の気候に左右されやすいので、
思い立ったときに、「えい」と気合を入れて、
出かけねばならない。
アクセルを踏みっぱなしにして、北上、さらに北上。
夕暮れまでに間に合った先は、群馬県高崎市倉渕町である。
図らずも、お目当ての沢には「ほたる祭り」との幟がたっており、
本日がその当日であった。
車を止めた公民館のような場所には、
筵の上に子どもたちが大勢座っていて、
紙芝居を真剣に観ていた。
奥の席にはその光景を眺めつつ、お茶を飲む市長が見えた。
そそそっと一足先に沢へ移動し、じっと蛍を待った。
ほどなくして、一匹、二匹と青い光が飛び始め、
紙芝居が終わったのか、あっという間に人も蛍も増えた。
気温が19度と低めであったためか、蛍の数は控えめであった。
しかし、「乱舞」というほどではないが、
しっかりとたくましい光を放っていた。
八時半を過ぎるころには、蛍の数に伴って人波もひき、
すぐにもとの里の闇となった。

3881声 カメラの前

2017年06月23日

午後、俳句の雑誌の撮影があった。
お気に入りの一冊の写真を撮るのだが、
野外での撮影であったため、非常に緊張した。
今月はじめに鼻の横に突如出現した出来物は、
ようやく沈静化したのだが、色素沈着というか、
そこの部分だけ濃い痣のようになってしまった。
間抜けな顔が、いっそう間抜けになっている。
そんな顔で、うすら笑いを浮かべながら、
カメラの前に立っていた。
 
撮影が終わり、しばし編集者の方と会話する時間があった。
普段、面と向かって際する機会がなかったので、新鮮であった。
単純だが、目標に向かって走らねばと思った。

3880声 結局

2017年06月22日

酒をおごってもらった人には、逆らえない。

3879声 戒め

2017年06月21日

車を所有している。
はじめて買った車で、もう十年程度乗っている。
走行距離は八万キロに届いていないので、まだまだ走れるが、
十年も乗るといろいろなところにガタが出ている。
その際たるものは塗装で、青空駐車が災いしてか、
天井の一部の塗装、正確には塗装の上のクリアというらしいが、
それがどんどん剥げてきている。
修復などはせず、する予定も無く、かまわず乗っている。
 
その昔、ほりさーさんの車の後部ドア付近に、
目立つこすり傷があった。
赤錆が浮き出てきており、かつ車体が白いこともあり、
非常に目立っていたので、「直さないんですか」と聞いたことがある。
 
ひとしきり、この深いこすり傷ができた際の状況を説明したあと、
「そういうことで、この傷は自分への戒めのために残してある」
そう締めくくった。
その一連の話を聞いたときは、なんとなく「そうか」という気がしたが、
いまになって思えば、単に直す金が無かったのだと思う。
いまの私がそうだもの。

3878声 駅ビルの三笠山

2017年06月20日

最寄り駅まで帰ってくると、構内が騒がしかった。
改札脇に貼ってあるポスターを覗くと、
長らく改装中であった駅ビルが、
本日リニューアルオープンとの由。
駅ビルと言っても、駅併設の二階建てとこじんまりしたビルである。
当然ながら開店セールとのことで、どの店も行列ができている。
わわわっと活気にのまれて、人の流れにしたがって、
ひとしきりビルの中を見てまわった。
そこはかとなく「何か買わねば」という心持になり、
目を光らせていたのだが、何かとタイミングを逃した。
若者向けのお店ばかりだったからかもしれない。
結局、以前からそこの同じようにある文明堂で、
昔からたびたび買っていた、三笠山を買って帰った。
昔から変わらぬどら焼きが売っているということは、
とても重要である。

3877声 ストロングスタイル

2017年06月19日

夏めいてきたせいもあろうが、
夕方ないし夜に駅構内をあるいていると、
飲んでいるおやっさんを頻繁に見かける。
気になったのは、飲んでいることでなく、
飲んでいるものの、種類である。
おやっさんたちがぐびびっと飲んでいる、
コンビニ袋に包んである、缶。
その種類。
缶チューハイが非常に多いのである。
銘柄は、近頃人気である、アルコール度高めの、
いわゆる「スロトング系チューハイ」と言われるもの。
それが近頃、圧倒的な勢いでおやったちの心を掴んでいるようだ。
その中に、麦酒を持っている方を見かけると、
すれ違い様、心の中で、「同士」とつぶやいている。

3876声 通り具合

2017年06月18日

先週まで、ばたばたと俳句関係の締め切りが続いていたので、
この週末は俳句のことをあまり考えずに過ごした。
昨晩も麦酒をやや飲みすぎてしまったが、さほど、残っていない。
体調が良くなってきた証左だ。
それだけ、許容、ゆとりがあるのだ。
そういうときは、何を飲んでもぐいぐいと飲める。
もっとも、麦酒しか飲まぬのだが、同じ缶麦酒でも、
一口で、体調のそのときの状態の良し悪しがわかる。
どちらかと言えば味ではなく、喉の通り具合である。
いつもの麦酒がすいすい入るか、入らぬか。
同じ麦酒で味がまずいとき。
それは、賞味期限が過ぎているのであろう。

3875声 静かな花

2017年06月17日

梅雨の晴れ間であった。
二日酔いではなく、睡眠不足に起因するであろう、
頭痛のため、紫陽花などを見てぼんやりと過ごす。
紫陽花はなんと静かな花なのであろうか。
眺めていると頭の中もなんだか静かになってきて、
頭痛もいつしか沈静していた。

3847声 レモンサワー

2017年06月16日

古い友人と会うため、夕方から上野へ出かけた。
アメ横あたりからはじめようと、
大統領やたきおかなど数軒覗くが、
どこも満席で早々に御徒町方面へ流れた。
こちらまでくると悠々と店を選べる。
手ごろな店に入り、焼き鳥などつついた。
駄菓子屋の粉で溶かして飲むジュースのような、
毒々しい色のサワーをがぶ飲みしていた。
この点はずっと変わらない。
 
むかし、この友人と前橋市街の硬派な焼き鳥屋の
暖簾をくぐったことがある。
店内には常連ばかりで、独特なやや重たい空気。
カウンターへ腰掛けると矢継ぎ早に、
煙の向こうの店主から「飲み物は」の鋭い声。
「び、びーる」と私。
その友人はと言えば、長考した挙句、
「カシスオレンジで」と。
その声にかぶさる勢いで、店主から、
「そんなもんあるわけなーだろ、サワーしかねぇ」
とつっこまれ、語尾にバカヤローが付かなかったところは、
店主のやさしさであろう。
圧倒された友人は「じゃ、じゃあさわーで」と難を逃れ、
私も胸をなでおろしたが、その後は煙がいっそう目にしみた。
 
この御徒町の焼き鳥屋は、毒々しい色のサワーが沢山あったので、
私もひと安心であった。
あの前橋の店で「サワー」といったら、レモンサワーなのである。
しかし、あの時の店主のつっこみは、店内全員の声であったろうな。

3873声 鉄のにほひ

2017年06月15日

梅雨の晴れ間であった。
草木が一気に精彩を帯びて、煌いていた。
街にはサングラスやビーチサンダルが、
沢山闊歩しており、夏の匂いがした。
凡兆の句に〈市中は物のにほひや夏の月〉がある。
今日の梅雨の晴れ間は、なにかこう、むわっとして、
市中を通ると、アスファルトや鉄の匂いが立ち込めていた。