群馬に住んでいた頃は近かったが、千葉に住むようになって埼玉が遠くなった。
特に、川越以西へは東京都縦断して行かねばならぬので、殊ににその感が強い。
先週はその埼玉以西へ、標榜では「500万本の曼珠沙華」が咲く言われている里へ出かけた。
無論、吟行句会なのだが、里へ着いた時から人、人、人、その500万本を上回る人の数。
静な里山に蠢く雑踏に、俳句はもとより、すっかり観賞の興を失ってしまった。
花見や花火などは人の混雑や猥雑な屋台群があまり苦にならず、むしろそれこそが、
祭りに華を添える一事と感じるのだが、曼珠沙華の里ではそうはいかなかった。
ロープの貼られた幾万の曼珠沙華から離れ、里の脇を流れる小川に腰を下ろした。
木洩れ日注ぐ清流の沿いには、自生している曼珠沙華がいくつか見えた。
名もない川や田の畦や苔むす墓石の脇に咲いているのが、本当の曼珠沙華の興である。
人でごった返す屋台に並んで買った、伸びた焼きそばに箸を入れつつ、
缶麦酒を買いに戻るだけの気力はなかった。

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