日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和8年度は4月(坂)5月(ぬ)6月(岡)7月(す)8月(堀)9月(坂)10月(ぬ)11月(岡)12月(す)1月(堀)2月(坂)3月(ぬ)の順です。

2402声 電波

2014年10月20日

帰りがけに秋葉原の電気店へ寄ったら、いささかカルチャーショックを受けた。
店舗ビル内、日本人よりも外国人のほうが多いのではなかろうかと言う盛況ぶり。
三階カメラコーナーはもとより、群を抜いてにぎわっていたのが時計売り場。
腕時計でもお土産に買って行くのだろうか。
行くのである。
見ていると、ショーケースからセイコー、シチズン、カシオと様々なメーカーの
腕時計を出して積極的に質問している、観光客然としたグループが多数。
日本人ではあまり見られない積極性はもとより、英語と日本語とミックスし、
巧みに会話している様には驚いた。
新婚旅行だろうか、かわいらしい女性を横にアジア系の若い男性が、
熱心に質問しているどうやら中国語らしい。
応答している店員も中国語、日本人としての私はなんだか肩身の狭い思いさえする。
踏ん切りをつけ、爽やかに、ペアでカシオの時計を購入したその夫婦。
ソーラー電池の電波時計、まさに日本土産らしい時計のチョイスである。

2401声 煙突

2014年10月19日

日差しが降り注ぎ、晩秋とは思えぬ暖かな一日だった。
家の前の桜並木では朝、蝉がほんのわずかな時間だが、
喘ぐように鳴いていた。
群馬に住んでいる頃、このくらいの時期に地方の銭湯を、
回っていたことを思い出した。
真っ青に澄み切った空の下、路地裏をほっつき歩いて煙突を探した。
地図から忘れ去られたような街で、夕暮れにひとり銭湯の湯船に浸かっている郷愁は、
なんとも、「こころをばなににたとへん」と言う心境であった。
あんな寂しさを味わうのは嫌だが、しかし心の奥のどこかが、求めてやまない。

2400声 ホソ

2014年10月18日

千葉県の佐原へ行ってきた。
さっぱ舟と言う小型の木造船で、街中の水路を走った。
去年も訪れており、その時は利根川を越えて、田んぼのホソを走った。
ホソと言うのは田んぼの水路のことで、水郷地帯なので至る所に、
このホソが入り組んでいるのである。
この悠久からなんの変哲もない、ただ川と空と蜻蛉だけがいる光景は、
貴重である。

2399声 夕風

2014年10月17日

先日、酒屋で仕入れてきた、英国の麦酒の栓をいくつか開けてみた。
中でも、美味しかったのが、Belhaven Breweryの「Belhaven Twisted Thistle IPA」である。
インディア・ペールエールなど久しく飲んでいなかったためか、妙にしっくりと美味かった。
テレビで五月蠅いくらいにCMしている大手メーカーの麦酒など一瞬にかすむほど、
独特のぴりりした苦味と香りが病みつきであった。
私の中でIPAの認識をまた新たにした。
特筆すべきは「キレ」である。
飲んだ後味が、晩秋の夕風のように余韻を残しつつ良くキレる。

2398声 用意

2014年10月16日

今日から朝晩が一挙に冷え込んで、待ちゆく人の多くは、
ジャケットを羽織るようになった。
朝、八丁堀駅の改札を出ると、外国の観光ツアーと思しき人たちが、
構内の一隅に集まっていて、みなダウンジャケットなど着込んでいた。
流石に十月にダウンジャケットでは早すぎると思ったが、
それよりも、その用意の良さに感心した。
翻って私。
用意、と言うのが大の苦手で、寒冷地へ行くのに軽装だったり、
句会へ行くのに歳時記を忘れたり。
用意、準備不足による失敗例は枚挙にいとまがない。
これからは年末。
「年用意」なんて言う季語もあるように、新年を迎えるため、
なにかと用意が必要になってくる時期である。
つまり、私にとっては畏怖の念を抱かざるを得ない時期の到来なのである。

2397声 優先

2014年10月15日

テレビや雑誌などのアンケートで外国人から見た日本人の印象として、
「礼儀正しく親切」と言う旨の内容が、必ず挙がっている。
そんな日本人の行動の中で、彼らを落胆させるものの一つが、「優先席」だと言う。
電車やバスなどの優先席に、平然と若者が腰かけている光景が、
信じられないと言うのである。
確かに、特に大都市圏にはそれが顕著だと感じるが、日本人なら誰しも、
そんな優先席の光景を見たことがあるであろう。
慢性的になりすぎていて、私もそうであるが、注意もしなければ、
日常において、それを特に気にかけてもいない。
しかし、ごくたまに、席を譲っている光景を目の当たりにすることがある。
それは今日、総武線車両内の優先席でのこと。
座っていた男子高生がすっと立ち上がり、杖をついているお婆さんへ、
席を譲ったのである。
優先席に初めは座っていたと言う部分は差っ引いて、えらいもんだと思った。
さっと、高校生が退いたその席には、薄い陽光が残っており、
一呼吸おいて座ったお婆さんを包んだ。

2396声 春草

2014年10月14日

いま東京国立近代美術館にて菱田春草展が開催中なので、
期間中にぜひ出かけたいと思っている。
春草の作をはじめて観たときは、いつだったか。
どこかの常設だったような気もするし、そうでなかった気もする。
しかし、静寂を描き得ている作品の数々は、心に焼き付いている。
そして、以前から大橋翠石展がどこか近場で開催されないものかと、
待っているのだが、まだ巡り合わない。

2395声 恰好

2014年10月13日

昨日、群馬からの帰路の途中、やまやへ酔って、
いや寄って、たくさん酒を買い込んできた。
もっぱら麦酒なのだが、英国麦酒のフェアで、
二本買えば割安になると言うことなので、
いろいろなエール麦酒を選んだ。
まだ飲んではいないのだが、英国の麦酒は恰好が良いのである。
瓶のフォルム、ラベルのデザインから王冠の意匠に至るまで。
これなら、瓶から直接に飲みたい気になる。
もちろん、ラーメンと餃子、湯豆腐と目刺しなどには合うのは、
断然に日本の瓶ビールであるが。

2394声 稲田

2014年10月12日

大型の台風接近中だが、一路群馬へ。
高速道路は空いていて快適だが、
秋晴れの山並みを見られなかったのは残念であった。
実家での用事を終え、とんぼ返り。
稲田と稲刈りの終わった田と、隣り合っている光景は、
毎年、郷愁の念を強くする。

2393声 閉鎖

2014年10月11日

定例の句会のため、原宿へ出かけた。
夏からのデング熱騒動で、代々木公園が閉鎖になっていた。
歩いているのは外国人観光客と思しき人たちばかりであった。
表参道なども人並みはあるには、いつもの半数くらいと言う具合であった。
公園に入れないので、句を作るためにふらふらと、
NHKの脇のグラウンドのまで来てみると、九州フェアと銘打って、
物産市が催されていた。
折角なので、ゆず麦酒なる地麦酒とご当地のから揚げを購い、
木蔭に腰を下ろした。
秋の陽光を吸って色づき始めた雑木紅葉が、淡く光っていた。

2392声 気流

2014年10月10日

最寄駅前に近年、超高層マンションが一棟建てられた。

マンションの地下から地下鉄の改札口へ直結している、

と言えばその立地がおおよそイメージされるであろう。

この超高層マンションは私の生活と、勿論係わりはまったく無いのだが、

どうにも気にかかることがある。

それは「風」、なのである。

所謂ビル風と言ばれているあの強風が、このマンションの竣工以来、

駅前に殊更吹き付けるようになったのだ。

ひどい時は、マンション横の路地を横切った瞬間、強風に煽られ、

ビニール傘など骨組が折れて裏返ってしまう。

したがって、強風の日などはマンションエントランス付近に、

骨組みのあらわになった傘の残骸が積み上がっている。

数日後も台風直撃と言う予報が出ており、また傘の残骸が山と積まれるであろう。

そして、風水だか何かは分からぬのだが、「気」の流れとでも言おうか、

この超高層マンション付近一帯で、目には見えざる 「何か」が、
たしかに変わってしまった気がしている。

2391声 海月

2014年10月09日

今年の体育の日は、時季外れの台風の接近で、雨の予報である。
体育の日を過ぎたごろから、世間の脈拍がだんだんに早くなり、
早くも年末の慌ただしさが始まってくる。
毎年のことであるが年末の慌ただしさには、辟易とする。
できることならば、海月のように徐々に溶けてなくなりたい気がする。
しかし、萩原朔太郎の「死なない蛸」にある蛸のようになるのも恐ろしいので、
溶けるのはよして、なんとか乗り切りたい。
乗り切って、正月のあの大手を振って昼酒を飲める、
愛すべき駘蕩とした雰囲気を味わいたい。

2390声 皆既

2014年10月08日

駅へ出る頃に、ちょうど皆既月食を見ることができた。
欠ける、と言うよりは端から薄らいでゆくように見えた。
卵の黄身のような色から、だんだんと赤みを増し、やがて夜空は漆黒に。
月光の届かぬ時、風の質感や草々の息吹は、たしかに平静と違った。
人のこころもまた。

2389声 月食

2014年10月07日

満月が地球の影に隠れる「皆既月食」が、明日は各地で見られるらしい。
およそ三年ぶりで、時間は19時25分から20時25分ごろの約1時間とのこと。
雲が多く、関東でははっきりと見られぬかもしれぬと、
テレビニュースのアナウンサーは無機質に伝えていたが、私は見たいと思っている。
それは、今日の月がとても美しく、この様子ならば明日の皆既月食は、
さぞや美しいだろうと思うからである。
晩秋の澄んだ月を出てゆく雲が、ざっくりと、薄青く光る様などは、
自分の中に詩魂があったことを思い出させてくる。
さりとて、それが形になるかどうかはまた別の話であるが。

2388声 風格

2014年10月06日

デパートの地下に立ち寄ると、ふらりと足が向いてしまうのが、 酒コーナーである。
特に買うつもりも無いのだが、麦酒に洋酒に日本酒と一通り品揃えを確認する。
先日も、ふらりと立ち寄った地下食品売り場の酒屋にて、
いつものように並んでいる酒のラベルを見ていると、見覚えのある筆。
秋田の日本酒であったが、素竹さんの筆であった。
酒の味は分からぬが、ラベルの風格はただならぬものがあった。
ためしに、一番小さな瓶をレジへ持っていった。

2387声 朱赤

2014年10月05日

台風が近づいており、朝から雨風ともに強く、
大荒れの一日だった。
明日は関東を直撃らしいので、交通機関の乱れは必至であろう。
近所の神社では秋祭が予定されていたが、午前中で切り上げたらしく、
祭半纏姿の男女が、とぼとぼと参道を歩いていた。
誰一人、傘もささずに、うなだれて濡れていた。
白字の背中に朱赤で染め抜かれた祭の文字が、昼の闇に浮かんでいた。

2386声 億劫

2014年10月04日

最近は外に出るのが億劫になってしまって、
家に引きこもって飲むことが多くなった。
新規の店には好きな麦酒の銘柄が置いて無かったり、
馴染みの店は混んでいたり、喧騒に疲れてしまったりと、
なかなか上手い具合に運ばないことが多いからである。
商店街の焼き鳥屋で誂えた焼き鳥を並べ、缶麦酒を見つめながら、
ちびりちびりとやっている。
普段の半分くらいの分量で、普段の倍くらいに酔う。
つまり好きな酒を飲みながら、安上がりに酔える。
自分の興を遮るものなくしたたかに酔えるのだが、ちっとも面白くない。

2385声 想像

2014年10月03日

夜、不定期で開催されている句会に参加した。
人数は私を含め五人で、丸机を囲み、席題を中心として行う。
雰囲気は、真ん中に酒瓶の並び立つような、という具合である。

席題なので、その場で題を出す。
私が出した題のひとつに「白」があった。
つまり、白と言う一字が句の中に入っていればよいのである。
群馬時代での席題句会では、必ず自然に触れるようにして作った。
つまり、戸外に一歩出ればそれが実現したが、都内ではそうも行かない。
そう言う時は、無論、想像の世界で句を作る。

想像の世界で作ろうとするのだが、そこにある山河の、
なんと茫洋として頼りないことか。
つまり、自らの想像力が頼りないのである。
慌てて、白と言う題を出すきっかけとなった、
机に出ている白ワインをがぶがぶ飲みつつ、おぼろげな句を作って出した。
こう言う類の句は、家に帰るころにはもう忘れていたりする。