日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和8年度は4月(坂)5月(ぬ)6月(岡)7月(す)8月(堀)9月(坂)10月(ぬ)11月(岡)12月(す)1月(堀)2月(坂)3月(ぬ)の順です。

3547声 夏が来れば⑤

2016年07月25日

この時期になると、日照りで暑い国道17号を横切り、当時暮らしていた学生寮から親父が入院していた循環器病院までを歩いたあの頃を思い出す。

 

母は車の運転ができず、前橋のその病院までマメに行くこともできなかったので、僕が親父のパジャマや下着を預かっては、寮の洗濯機で洗い、それをまた届けていた。

 

当時はまだ思春期をこじらせていて、将来について何の見通しも持てず、その時の親父は狭心症のカテーテル手術で、危機的状況でなかったのだけれど、家族含め皆不安で、やけに明るい踏切、カンカンカンという音が、なおさら僕を陰気にさせた。

 

 

もうじき、親父の七回忌だという。カテーテル手術から10年以上が経ち、そこそこ元気だった親父が心臓の調子でまたその病院に入院し、手術は一応の成功で安心したのもつかの間、術後の院内での自らの誤飲が肺に影響し、その数日後には亡くなってしまった。

 

管が入り話しもできない親父を見て、姉が泣きながら言った「お父さんがなんでこんな顏してるか知ってる?手術は成功したはずなのに、なんで俺はこんなことになってるんだ、って悔しいんだよ」という言葉が忘れられない。

 

毎年この時期になり墓参りなどをすると、親父について考えたりもするのだが、別れがそんな状態だったからか、今なおはっきり気持ちの整理ができない。ただ墓参りの日はいつも晴天で、手を合わせれば心の中で「俺はまだこんな状況だけど・・」という言い出しから始めることは、数年前から変わってはいない。

3546声 掌

2016年07月24日

アーツ前橋「表現の森」。今日はデイケアセンターのおばあちゃんが二人、センタースタッフの支えのもと、アーツ前橋を訪れ、観衆がいる中でアーティストと共に即興演奏会を行った。

 

一人のおばあちゃんは、演奏が活気づくにつれ、椅子から立ち上がり、そばにいた子どもたちと踊りを始めた。ところどころでハイタッチのように子供に向けて掌を差し出し、子どもたちは順々にその手に触れた。それこそ昔、踊りでもやっていたのかな。その一挙一動がきれいだなと思った。

 

あと、展示場所に設置された楽器を鳴らしてみるとわかるのだが、いかに自分が音を出すにあたりつまらない人間か、ということに気付く。つまりは「下手なりにどこかで聞いたことのあるリズムを鳴らそうと思って、出た音が面白くない」という事がわかるのだ。

 

そのへんに関して今回の展示のアーティストである石坂亥士さんは「老人たちが出すリズムは予測不能で、面白いんだよね」と言っていた。僕が楽器をつきつめてやることは考えられないので、それでもきっと年を経て色々を忘れれば、面白い音が出せるのかもしれない。

 

「老いての表現」などというと、舞踏家の大野一雄さんじゃないけど、「道をつきつめ続けた求道者だけが到達できる、余分なものをそぎ落とした本質的な表現」みたいなものを僕はイメージするのだけれど、ごく普通の人であっても、老いて出る個性・表現はあるのだと思う。

3545声 二パー

2016年07月23日

夏はタイ料理に限るよね!

 

と言っても群馬の山の中で生まれ育った人である。はじめてタイ料理らしき料理を食べたのは二十歳を過ぎてから。今もトムヤンクンとグリーンカレーとレッドカレーとイエローカレーとガパオくらししかしらない。あ、春雨のヤムウンセンもおいしいよね。

 

知人のSNSで、高崎市成田町の「二パー」というタイ料理屋を知った。店に車をとめて20歩ほど歩いたところには直営?の物販店もあり、ココナツミルクや粒が小さいタイのニンニクなども販売している。で、この店、昼のランチに行くと、日替わりのお任せメニューが勝手に出てきて、なんと追加料金なしでおかわりOKなのだ。

 

ランチは初めてだったが、今日はタイ米にひき肉とバジルを炒めたものが乗ったご飯や、パクチーが入ったあっさりスープ、見た目の何倍も辛いヤムウンセンが出てきた。何だか香辛料のおかげで、するする入っちゃうんだよね。おかわりもしたら、しばらく動けなかった。

 

世界にはまだ、食べたことのない料理がある。
それだけで、今日まだ俺死ねない。

3544声 表現の森

2016年07月22日

アーツ前橋の新企画展「表現の森」が公開となった。

 

高齢者のデイケアセンターに音と踊りのアーティストが足を運び、その様子を動画で撮影している話しは前に書いたけど、結果としては映像を3に分け、そのひとつは展示中央の大部屋の壁に映写していただけることとなった。相変わらずですみませんが、会期前ギリギリの仕上げだった。

 

壁に移される映像1では、老人たちの顏はあまり映さず、鈴や太鼓や変わった楽器を振ったり演奏したりする手のカットとまとめた。しばらくすると、老人たちとアーティストとが一体となって演奏する即興ライブも始まる。モニターで見る映像2は、老人一人一人の特徴・変化をまとめた。耳が遠い方もいれば、認知症を発症している方もいる。演奏すること、演奏できないこととによって、見えてくることがあったからだ。そして同じモニターで見る映像3では、このセンターに勤めるスタッフのインタビューを中心にまとめた。時に演奏の輪に入り嬉々として、人によっては外から冷静に一連の様子を語って語ってくださっている。

 

会場には、アーティスト石坂亥士さんによる、世界各地で集めた打楽器コレクションが置かれており、なんとすべて触っての演奏が可能である。ドンドンシャカシャカ、子どもたちも夢中になるに違いない。

 

9/25までの長丁場であるので、ぜひ行って楽器に触れ、「老い」についての考えを巡らせていただきたい。まだ見てないけど、他の展示も見応えありそうです。

 

アーツ前橋 表現の森 協働としてのアート
https://www.artsmaebashi.jp/?p=7513

3543声 プリンセス天功

2016年07月21日

庭先に停められた車の後方タイヤに蝉の抜け殻がくっついていた。隣には、まだ白緑色した羽化したての蝉。あと数時間遅ければ、きっとプチである。近場で棒切れを探し、つついてやろうかと戻ったらすでに蝉は地面に足をつけていた。力なさげにブーンと飛んでいく。

 

プリンセス天功ばりのイリュージョンを見させてもらったよ。

3542声 なかのじょうのうた②

2016年07月20日

以前書き込みをした中之条町の観光映像・春編が公開されています。今回は1つめということもあり「ザ・観光映像」的な作りにしたけれども、夏編以降はより柔軟なものを、中之条町観光商工課の方たちと企画しています。

 

今中之条町は「花と湯のまち」をキャッチコピーにしていて、「湯」については四万温泉、沢渡温泉、六合温泉郷など知った方も多いのではと思うけれど、撮影前の正直な話し「花」については、僕自身が「そうだろうか?」という状態でした。でも、この仕事を通して町内各場所場所の春の花、その花に関わる人々、その花をよろこぶ人々を見て、「花のまち中之条」も、胸を貼って言えるよな、と。

 

春以外ももちろん、いろんな花が咲きますので、おいでませ中之条!です。

3541声 白くまアイスバー

2016年07月19日

作家の絲山秋子さんが今、前橋のフリッツアートセンターで「絲山房」と称した公開書斎をやっている。ファンやお客さんが来る中でどう執筆できるのか、器用な人だなと思いつつ、僕は本人にお会いしたこともない。

 

絲山さんのツイッターもフォローしているのだが、ツイッターを通じてのファンとの交流もマメだ。まるで洞窟に篭るかのように外界をシャットアウトして一字一句書き連ねる作家さんもいるのだろうが(絲山さんにもそういう期間はあるのだろうが)、このように開かれた様子で作品を書く作家さんというのも面白いと思う。

 

絲山さんが「好きなアイスをみんなで投稿しよう」みたいな書き込みをしていた。気がする。僕は、3年位前かな、グリコの「アイスの実」が劇的においしくなっていて驚いたのだけど、この夏は「白くまアイスバー」を愛している。鹿児島発祥のフルーツたくさんかき氷白くまも、近年コンビニ等で見るようになり、今はアイスバーにもなっているのだ。

 

多い時は1日1本食べていた。ただこのようなアイスの欠点は、すぐに販売中止になること。アイスだもの、知り合いの貯蔵庫をお借りして、1年分位買いだめしとこうかしら。結局絲山さんとは全く関係ない話しで、筆を置きます。

3540声 気付けばもう

2016年07月18日

年取ると、時の経つのが早くなる。なんて言います通り、年を追うごとに一年が、あるいは一日が短くなっているような気がいたします。

 

・・どこかで見た気がしますか?このサイトのトップページにずっと前から書いてある、多少埃をかぶっているようで、でも古びない言葉です。

 

ほんと、ここ10年ばかりは時の早さばかりを痛感し、この前めっかったメンバーで正月の俳句ingをしたつもりでいるのに季節は半年以上が過ぎ、今は真夏。田舎に暮らしているとはいえ、自然に寄り添う仕事をしているわけでもないので、気づけばもう!は日常茶飯事。その気付けばもう!の代表格に「祭り」がある。

 

夏の祇園祭り、冬の鳥追い祭り(中之条)。その度に気付けばもう!と焦りも混じった何かを感じるわけだけど、なぜ祭りを特にそう思うのかと考えた時に、僕が生まれ住んでいる地域は昔から「祭り不参加地区」なわけです。「中之条町3区夏祭り」と称して小さくやっていた頃もあったけど、少子化で中止となり、夏も冬も身近でやっている祭りが「外から目線」になるんだな。昔っから。

 

つまりは、祭りを強く意識する心理として「寂しさ」を伴うからなのではないかと。少年の頃はもちろんのこと、この年になっても。

 

「なら同じ町内だし、参加する?」と誘われても話は別。大変そうだし(おいおい)。窓の外の喧騒を聞いて、気付けばもう!と一人思っている位が良いと思っている。

3539声 うた種

2016年07月17日

中之条町から小野上方面に向かい、中之条町の東ぎりぎりのところあたりに「うた種」というかわいらしいお店ができた。

 

ここはずっと前に「ともいき」という名前の、中之条にしては高級なレストランだったらしく、学生時代の僕は行ったこともなかったのだけれど、町の人はわりと「ああ、ともいきの場所か」と懐かしむようだ。

 

店主は、中之条町つむじのショップ・カフェを立ち上がりから支えてきた女性。一念発起で店を持つ決意をし、旦那さんも忙しい仕事の合間をぬって店作りを支えていた。まずは二十年近く放置されていた敷地の草刈りからはじめ、店内も業者でなければいけない所以外はセルフでリノベーションしたのではなかろうか。

 

営業時間外に外でバーベキューをやるからと、招待してもらった。見せてもらった店内は、店主が見惚れた小物雑貨・皿などが並び、優雅にコーヒーを飲めるテラス席がある。料理販売はないようだけど、つむじにいた頃から古布の販売市などを企画していた彼女らしく、これから、好きなひとが集まってひらすら編み物に没頭できるスペースを作るという。思いのある店、思いのある夫婦なので、根強いファンがつくことを願いたい。

 

うた種
http://utatane100.wixsite.com/utatane

3538声 モノづくりの音

2016年07月16日

中之条町四万温泉に県内各地からモノづくり作家が集まり、参加者は作家に教わりながらモノ作りができる「温泉郷クラフトシアター」が始まった。作れるモノは多岐にわたり紹介は長文となるので、下記リンクよりざっと内容が見渡せる動画を見ていただきたい。

 

県内でも、ぐんまの森で行われている「クラフトフェア」を筆頭に、各地で個人作家・小規模メーカーによる手作り品の販売市が行われていると思う。多くに足を運んだわけではないが、それらとこのクラフトシアターが違うのは、参加作家が濃すぎる・・のもそうだけど、やはり「一緒にモノ作りができて、世に1つだけの自分のモノが作れる」ところにあるのではないかと思う。

 

モノが多い時代だからね、それくらいの思い入れがないと、感情を纏ったモノってのはなかなかない気もするのだ。そしてそんな作り手と買い手の関係こそが、今時代のモノ作り作家の道すじでもあるのだろう。

 

トンチンカンチン・ダダダダダ・ぎっこんばったん・コンコンコンと、四万温泉にはモノづくりの音が響いております。

3537声 おつかれSUMMER

2016年07月15日

新聞代配午前五時。

家の前の坂で体育座りをした男の子。

「ありがとう」と声かけ新聞を渡すと

「おつかれさまです」と受け取り家の中へと駆けていった。
おつかれSUMMER おかげSUMMER
お中元のキャッチコピーみたい。

3536声 うめまつ

2016年07月14日

「中之条町のおいしいものは何ですか?」

 

と聞かれるとやや困る。六合の「野のや」と「くれさか」の蕎麦は絶対におすすめだし、おしゃれそうな女子に聞かれれば伊勢町の「山乃気」の水を使わず果実で作ったカレーはおしゃれだぜ、と答えたり、少しでも僕と似た空気(体形?)の人には「らーめんダイニング庵」のラーメンは、良い、とプッシュしたりはするのだが、万人が言う「中之条ならこの店」はなかなかないのではと思う。

 

そんな中でも多分上位になるのが、伊勢町の「うめまつ」だ。ここは蒸し焼きにしたようなわりと太麺な焼きそばがメイン。今時期は種類豊富でいい氷を使っているかき氷が食べられて、ところてんもある。冬は鯛焼きも焼く。つまりは地元に愛される昔ながらの店、今で言うところの「中之条のソウルフード」的な位置付けだ。

 

この時期、かき氷がうまい。僕が好きなのは甘い茹で小豆を氷の中に忍ばせ、たっぷりの練乳がかかった「ミルクあずき」。刺さったスプーンを抜くと氷がこぼれる位、山盛りに削られた氷。シャクシャクと口にかっこむと、口から喉もとにかけて涼が通りすぎる。そして頭にキーンという痛み。書いてて今、行きたくなったよ。

 

ちなみに、この店には同級生がいた。もちろん仲が良かったからだけど、小学生のころは嬉々としてこの家に遊びに行ったものだ。だって、お昼の時間になると、焼きそばが出てくるんだもの!でもその同級生も弟も、町外で仕事をしており、お父さんお母さんが焼きそばを焼かなくなった時は・・なんて野暮な事は言わずに、また足を運ぼうと思う。

3535声 夏が来れば③

2016年07月13日

この春から、ビデオカメラはsonyのHXR-NX100を使用している。これはフォーカス・絞り・ズームの調節をレンズ付近の3連リングによりマニュアルで微調整でき、絞りを最大限開放にしNDフィルターで遮光をすれば一眼レフ動画まではいかなくても人物の背景をボカして撮ることが・・ビデオカメラ、そんなに興味ないですよね。

 

会社でこのカメラを購入するまでは、いざという撮影時には高崎の映像制作会社からレンタルしていた。動画制作は事業としてはまだ駆け出し時だが、だんだんと社内外に認知が広がってきて、嬉しいし、もっとしっかりやらねばと思う。

 

「映像に興味をもったきっかけは、親父の8mmなんですよ」

 

と、まるで仕込まれた昔ばなしのように話すことがある。実際僕の父はまだフィルムの時代の無声8mmのカメラと映写機を持っていて、年に数回は部屋をまっくらにし、壁に向けて家族の映像を流す家族上映会を行っていた。

 

ノイズが走るちょっとピンぼけの映像には、「けんいち5才たんじょうび」と書かれた張り紙や、姉弟3人が夢中になってケーキを食べる様子、尾瀬の湿原歩き、姉の運動会などが映っていた記憶がある。親父は若いときからそういった撮影が好きで、アナログテープのやたらと思いビデオカメラもあった。学生時の僕は、それを無断で借りて、学生寮でドラマ丸パクリみたいな幼稚な映像を撮ったりした。思えばそれが、と思えなくもないのだ。

 

8mmフィルムは、まだ家の押し入れで眠っている。もうカビて使い物にならないかな。それを映写する機会は、この先あるのだろうか。

3534声 進んだ男

2016年07月12日

俺は一歩進んだ男。携帯の時計4分進んでんだ。携帯がってあんまなくなくない?直し方知らなくなくなくない?

 

・・下手なラップはそれくらいにして(ラップになってないけど)、ここ数ヶ月携帯の調子が悪く、満充電をしても4時間くらいしかもたなかった。充電電池がぱんぱんにふくれてんだもん・・その時点で早く修理しろという話だが。それで携帯ショップに行ったら、電池交換で事が済んだ。

 

直ってみたら直ったで、数時間しか電池がもたず、人様の会社や自宅で「あの・・携帯充電させてもらっていいですか?」と言ったり、「充電切れちゃってるんだもん、仕方ないよね」と開き直っていた時期が懐かしくなった(あ、会社の携帯は別で持ってますからね)。手を焼く子ほどかわいいというが、携帯でそれを思うってことは・・変人なんだと思う。

3533声 夏は暑い

2016年07月11日

毎年聞く気もするけど、今年の夏も暑いらしい。

 

時々新聞配達の代配をするようになって、まだ暗いうちからもぞもぞと働き始めるのだけど、午前4時位ですでに電気がついている家もある。明るくなれば外に出て、草を刈ったり、ゴルフのスイング練習をしたり。暑くなりはじめるまでの朝の数時間が、貴重なのだ。それをわかって行動している人は、良い1日の使い方を知っているなぁと関心する。

 

どうでもいいけど、FMラジオを聞いていたら「なついあつは嫌いです」とアナウンサーがいい間違えた。話を受ける男性も、気付かなかったのか、スルーした。暑いんだもん、仕方ないよね。

3532声 船が出るぞ

2016年07月10日

老人が通うデイサービスセンター。普段は聞こえないであろう音、大きな銅鑼(ドラ)の音が響く。70代後半か80代の男性がドシーンドシーンと銅鑼を叩いた後に

 

「おーい、船が出るぞー」

 

と声を張り上げた。それを聞いた他の老人たちは、笑ったり、関心したり。銅鑼を叩いた男性は、「むかし、船が出る時にこんな音を鳴らしたんだ」と呟いた。音が、記憶を呼び覚ました瞬間だった。

 

 

今月末より、前橋市のアーツ前橋という美術館にて「表現の森」と題された展示が行われる。アーティストが前橋にある様々な施設に足を運び、その場所にいる人たちと協働としてのアートを制作するという試みだ。

 

桐生出身の神楽太鼓奏者・石坂亥士さんと、前橋氏の振付家・山賀ざくろさんの二人は、この展示で前橋市にあるデイサービスセンターの利用者さんたちと楽器の演奏をすることになった。楽器と言っても、亥士さんがもちよる楽器は東南アジア・韓国・南米などの打楽器。なかには亀の中身をするっと抜いた甲羅の打楽器もある。

 

展示の際に、音楽の展示方法として映像が必要となったそうで、僕にお声がけいただいた。つまりは、2人のアーティストが老人たちと奏でる音楽を撮影する仕事である。春に始まりすでに5回ほど、前橋のデイサービスセンターに足を運んでいる。

 

どのような映像が良いのか、美術館展示っぽく(?)客観性のあるスマートな映像がいいのか、でもそれやり慣れてないしな、など撮影初期には悩んだりもしたが、「音を出すことによって、その人に起きる変化をみたい」というアーツ学芸員さんのひと言で、僕がずっとやってきたドキュメンタリー的なアプローチでも良いのだと開き直った。その変化の初期の印象深い瞬間が、冒頭の「船が出るぞ」だった。こういう瞬間をきちんと映像で記録できると、嬉しいのだ。

さてはてどんな映像の見せ方ができるのか・・。この音を使った試み以外にも、ひきこもり支援施設や海外移民支援施設、障害者施設や母子生活支援施設などにアーティストが足を運び、何かしらの協働作品を制作している。その総体としての展示は、興味深いに決まっている。ぜひ、足を運んでいただきたい。

3531声 七夕忍者

2016年07月09日

数年ぶりに前橋の七夕祭りに行った。お客でぷらりではなく、僕の務める会社がある東吾妻町の「岩櫃城忍びの乱」という忍者をテーマにしたイベントのPRである。広場では、県内のイベント等で活躍する「本格格闘甲冑集団 式」の皆さんとともにステージにも上がった。

 

だがこの日、遅刻した。忍びの乱の他の仲間は、お約束的な忍者衣装に着替えすでに広場へ向かってしまっていた。僕は一人、元気プラザの控え室で真っ赤な忍者衣装に着替え(普通は黒なんだけど、あえて赤を選ぶこのエンターテイメント精神)、前橋祭りで賑わう歩行者天国をニンニンニンと歩いていった。これはまあとにかく目立つ。

 

「あ、忍者だ」
「何、あれ?」

 

こんなに注目を浴びたのは人生で初めてかもしれない。
ただ赤い忍者衣装を着てるだけなのに。

 

「なんか太い」

 

という声が聞こえた気がしたのは、気のせいだろうね。

3530声 夏が来れば②

2016年07月08日

梁、をご存じだろうか。「はり」ではなくて、ここでは「やな」と読む。

 

渋川市の利根川の岸に「落合梁(おちあいやな)」という店があり、ここではこれからの季節、鮎や鯉の料理が食べられる。川を見下ろす開放的な店内には川のせせらぎが聞こえ涼を演出し、焼き場では炭の周りに円を描くように並べられた串刺しの鮎が、パチパチと美味しそうな音をさせている。

 

僕の親父は渋川の魚屋に長年勤めていた。渋川や高崎、築地から届く魚を店でさばき、伊香保や四万へ運ぶ仕事だった。夏休みで家にいると、3時くらいに配達途中の親父が家によっては茶を飲み庭に水やりをしていた記憶がある。魚を運ぶ白いバンは魚くさくて、乗るのが嫌だった。

 

親父は庭で炭を熾して自分で鮎を焼いてしまう人だったが、渋川に住む親父の母親が生きていたころなどは毎年のように落合梁へ家族を連れていった。僕は小学校低学年だろうか、魚よりは肉が好きだったけど、焼きたての鮎はおいしくて、川原に降りては川に敷かれたすだれに鮎が跳ねる様子を見た記憶がある。

 

去年、母や姉家族と十数年ぶりに落合梁へ行った。時期が良かったせいもあると思うが、以前のように賑わっていた。ふと、鮎の焼き方教わっておくべきだったな、と思った。それどころか僕は、鯵のおろし方ひとつ教わらなかった。親子とは、そういうのもなのだとも思うが。