日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和8年度は4月(坂)5月(ぬ)6月(岡)7月(す)8月(堀)9月(坂)10月(ぬ)11月(岡)12月(す)1月(堀)2月(坂)3月(ぬ)の順です。

2569声 A2

2015年10月21日

今回も結果、「山形国際ドキュメンタリー映画祭」
に行けなかった。次回開催は2年後だけど、
東京でも特集上映を組むことが多いので期待したい。

 

この映画祭に初めて足を運んだのは2001年。
僕はまだ映画学校の学生で、授業の一環として
ドキュメンタリーゼミの皆で行った。
ホテルを借りるお金はもったいないので、
安い一間を借りて、講師と共に自炊式の共同生活。
朝起きてドキュメンタリーを5~6本観て、
皆で夕食を食べながらあーだーこーだ言って寝る。
それを繰り返した数日は、忘れられない体験となった。

 

その年はちょうど、僕らの講師であった安岡卓治氏
がプロデュースし、「放送禁止歌」「職業欄はエスパー」
など特異なTVドキュメンタリーを作っていた森達也氏
が監督をしたオウム真理教に纏わるドキュメンタリー、
『A2』が、国際コンペ部門にノミネートしていた。
それも授業の一環だ、と僕らは、山形市内あちこちに出向き、
まっしろな背景にA2とだけ書かれたポスターを
貼ってもらうお願いをして回った。

 

オウム真理教のことは、今の若い人は知らないかもだが
僕らよりちょっと若い世代以降の人は忘れようがないはず。
95年の地下鉄サリン事件は、大きな悲劇として脳裏に焼き付いた。
『A2』はその後のオウムを追った森監督の2作目で、
日本各地で強烈なバッシングを浴びる団体の内部に入り、
限度を知らない外部からの圧力や、戸惑う信者の様子、
TVでは放送されない信者と地元住民との交流などを収めた。

 

その作風は「オウムに加担している」との指摘も受けたが、
オウム信者=すべて真っ黒、という世の意識に異議申し立てをし、
よく見もせずに白か黒かで人を判別し排除する世の中こそが
オウムを生んだのではないか?という問いかけを残した。
この作品はその年の山形で特別賞と市民賞を獲得した。
ポスター貼り程度だが、末端のスタッフとなった僕らは、
その受賞がちょっと誇らしかった。

 

―――人生は映画よりも奇なり。

 

あの時安い一間で飯を共にしドキュメンタリーを語った仲間。
幾人かはTV制作会社で今も身を削りながら番組を作り、
幾人かは映像をはなれ職につき子どもと共に暮らしており、
異端的なAV監督になったものもおり、学生時の未完成作品を
完成させ日本映画協会新人賞をとったものもおり、
もうすでに亡くなったものもおり、群馬に帰ってきた僕もいる。

 

今年の山形国際ドキュメンタリー映画祭、今なお講師を勤める
安岡さんは、生徒を連れだって山形合宿をしたという。
瑞々しい学生たちは、きっと多くの事を学んだに違いない。

 

2568声 舟を編む

2015年10月20日

映画に関することは、今月以前も書いていた。
このめっかった群馬の(ぬ)こと抜井さんは
以前僕が『パシフィック・リム』について書いた
ことを覚えていてわざわざ見てくれたという。
自分自身書いた事を全く覚えていないのだが(!)
抜井さんがあのドンチャン映画を観ている姿を
想像するとちょっと面白い。

 

だったら、もし観てないのだったら、
抜井さんには『舟を編む』でしょう、とも思う。
人とのコミュニケーションが苦手で、
回りからは変人扱いされる真面目な男が、
数十年の年月をかけて辞書を作る話。
いや、決して抜井さんがそんな性格だと
言っているわけでは・・わりとそんな感じだよね。

 

抜井さんのように俳句をやっていれば
言葉に敏感にもなるのだろうが、言葉って不思議。
自分の目的や気持ちを共有したくて言葉にするのに、
その言葉から受ける印象は人それぞれだから、
時として真逆の意味にとられたりする。
けれど時々、直接話せば相違も少ないのに、
あえてメールやラインで言葉で伝えたくなったりする。
不思議なもんで。

 

この映画で特筆すべきは、宮崎あおいがかわいい。

何もしなくてもかわいいのに、変人を変人扱いしないなんて反則。
抜井さんにもそんな人が・・おっとこれ以上は自主規制。

 

2567声 地下鉄のザジ

2015年10月19日

かわいいのである。姪っ子が。
疲れが溜まった日曜の朝に、
県内に住む姉と姪っ子二人がうちに来て
ドタドタドタという音と共に起こされる。
それだって「来たの~」とニンマリ顔だ。

 

こどもの成長は早いというが、
確かに「はじめまちて~」から「来たの~」
まであっという間だった。
上の姪っ子は小学5年生。
すでに家族への気遣いも見てとれる。

 

女の子がかわいいといえば『地下鉄のザジ』。
くるくるにこにこ愛らしい。
映画の撮り方も斬新で、観た時はある意味
カルチャーショックを受けた。
かわいい女の子、おしゃれなパリ、
自分との共通点が一つも見いだせなかったのだ。
だからつまらなかったわけではなく、
知らない世界に飛び込む経験ができるのも
映画の醍醐味のひとつと思っている。

 

上の姪っ子が産まれたとき、
うちの姉は絶対買い与えないであろうという
ミヒャエル・エンデの児童小説「モモ」を
プレゼントした。そういう世界も見て欲しかった。
その子がモモを読めるような年頃になった頃、
姉の家の本棚、どーんと並ぶプリキュア本を見つけ、
その隅で埃をかぶった「モモ」を見つけた時は
わりと寂しかったな・・でも、そういうことは
押し付けではなく、巡り合せなんだと思っている。

 

あと5年10年もしたら一緒に映画でも観に行って、
パフェでも奢りながら姪っ子の悩み事を聞きたい。
嫌われる叔父さんになっていなければ、の話だけど。

 

2566声 銀河鉄道の夜

2015年10月18日

刊行から80年以上が経つのだという。
宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」は、しかしながら今も
多くの人の心に広がっている。

 

谷村美月が少年に扮する実写版なんてのもあったが、
この映画といえば、ますむらひろし原作のアニメ。
細野晴臣の音楽も今なお印象に新しい。

 

宮澤賢治は鉱物の知識にも長けていた。
この作品が今も愛されるのは、鉱物のように
きらきらした描写や、簡潔な言葉を使いながらも
宇宙のように奥が見えない深い物語性、
他に類をみない作品だからであると思う。

 

10月31日から8日間、中之条町旧廣盛酒造にて、
「秋、酒蔵にて」が開催される。
漆・木・石・鉄・ジャンクアート・料理・酒
県内のクラフト作家による展示販売なのだが、
商売優先というよりは、人間くささ優先、
作家が作ったグラスや皿、良質な食と酒で
宴会をするのが一番のメインという
かなり異色で濃ゆい展示会だ。
このめっかった群馬の(ほ)こと、堀澤さんも
料理担当として毎年参加している。

 

この展示会で面白いのが、
毎年ひとつのテーマを決めて、
使う素材も出来上がる品物も違う
参加作家たちがその年限定の作品を作るところ。
昨年は「郷を辿る」でありその前は「縄文」
そのテーマ展の多分初年度が「銀河鉄道の夜」だった。

 

その様子は僕が撮影させてもらった
映像を見ていただくと幾らかわかると思うが、
朗読や映画ではなく「もの」によって
宮澤賢治の世界観が表現できるのか!と
新鮮な気持ちで見た記憶がある。

 

今年のテーマは「えん(円や縁や宴)」だという。
クラフト好きな方も酒好きな方も人好きな方も
ぜひとも足を運んでいただきたい。

 

2565声 リトルフォレスト

2015年10月17日

都会と地方は、よく比較される。

 

僕自身、映画学校への入学で川崎近くに住み、
ほんの短い間だが東京へも仕事へ通った。
そこから25歳くらいで群馬へ戻ったから、
属にいうUターン者に入るのかもしれない。
都会と地方の両方を見た、とも一応は言える。

 

今僕がしみじみいいなぁと思うのは、
群馬に暮らし、農作業も行いながら、
あるいは農的暮らしに近い生活者の立場から、
地域や人に開かれた生活をしている人たちである。

 

固定種野菜を広める高崎「BIOSK」の桜井さんや
高崎駅でのマルシェ「タカサキエキビレッジ」の金井さん。
嬬恋に嫁に行った「エコビレッジ環○和」の正美ちゃんや、
片品村「iikarakan」の瀬戸山さんなど。
まだ行ってないけど上野村の「よたっこ」夫婦も素敵だ。

 

そんな人たちの姿には、「所詮田舎だから」という
後ろめたさはない。自然や野菜、つまりは生命に
近いところに暮らすがゆえの深い根の貼り方で、
経済や流行の変化じゃ揺らがんぞという強さを感じる。
もちろん皆さん大変な思いもしているのだろうが、
共通のものとして「楽しそう」という雰囲気があるのも良い。

 

『リトルフォレスト』は、僕が大好きな漫画、
五十嵐大介氏の同作を、忠実に映画化した作品。
五十嵐氏はこの作品の執筆当時、漫画を描きながら
あえて岩手県の山村に暮らし、農業もしていた。
その生活をもとに描かれたのが「リトルフォレスト」で
映画化にあたり監督は「同じ場所で撮りたい!」と、
五十嵐氏が実際暮らした山村でじっくり1年かけて
映画『リトルフォレスト』(前・後編)を完成させた。

 

五十嵐氏のドキュメンタリーならムサいだろうが(失礼!)
主演は「あまちゃん」の橋本愛さんである。かわゆい。
もうひとつの主演ともいえる数々の田舎料理も美味しそう。

 

ここまで言っておいてなんだが、
僕は田舎が良い、都会が良い、と区別するのが好きではない。
両方には両方の良さがある。
けれど年をとるにつれて、
群馬あたりはちょうどいい場所だな、と思うようになった。
農的くらしは僕には遠いが、いつか、という思いもある。

 

2564声 萌の朱雀

2015年10月16日

NHK朝ドラの「カーネーション」を憶えているだろうか?
ちょっと丸い鼻で気丈な小野真千子さんが
主演だと聞いたときは、近所のおじさんみたいに
嬉しかった。

 

僕は、わりと田舎に暮らしていると思う。
少し坂を上れば、嵩山(たけやま)より先は緑、
「日本で最も美しい村連合」にも加盟された山村が広がる。

 

スクリーンの中にありありと山村を観たのは、
河瀬直美監督の『萌の朱雀』が初めてだったかもしれない。
家族を扱った短編ドキュメンタリーで
山形国際ドキュメンタリー映画祭の注目を浴びた
若き女性監督は、名カメラマンの田村正毅氏らと共に、
自身の故郷に近い奈良県・吉野の山村を撮った。
その映画の主演を務めたのが、吉野村に暮らしていた
素人の女の子、小野真千子さんだった。

 

『萌の朱雀』で描かれるのは、
山村の家族が営む小さくも暖かな家族の、緩やかな解体。
時が過ぎるにつれて田舎から人が減っていくという話である。
言葉にするとただただ寂しい物語だが、
吉野村の圧倒的な緑と、素朴な登場人物が、
映画を豊かにしている。

 

この作品はカンヌ映画祭で新人監督賞を獲った。
小野真千子さんは、実に素人っぽく、でも瑞々しく
映画の中で演技をしていた・・というより、暮らしていた。
この作品以降、僕は河瀬監督のファンになったから、
その後の河瀬作品で見る小野さんの成長ぶりも、
まるで近所のおじさんのように微笑ましく見ていた。
今はもう僕の手を離れ(おいおい)立派な映画女優である。

 

僕は、わりと田舎に暮らしていると思う。
それを誇れる気持ちになったのは、若き日に観た
『萌の朱雀』の影響もあるのだと思う。

 

2563声 マッドマックス

2015年10月15日

ヒョォォォォォ
ダンダダンダダダダンダンダ
ザァアァアァアァア
ウオォォ
ギュイーン
ブオオオオオオオ
ギュギュギュギュ
ズドーン
ドドドドドドド
ブオオオオ
ウオオオオオ
ドッゴ―――――ン
スイ――
ガシッ
パラリラパラリラ
ギュギュギュギュ
キャッホウ
ズドーン
ビヨーーン
チュドンチュドン
シューキャッホー
ズガガガガガガ
キラーン
ブワッツゴロンチュドーン
ズイ―
ブオオオオオオオ
ドドドドドドド
ガンガン
キッ
ドドドドドッゴーーーーーン
ダンダダンダダダダンダンダ
ドサッツ
ウオォォオウオォォオ
チラ
ザッ
ヒョォォォォォ

 

・・・っていう映画だったゼ。

(1日1本映画挙げるのは予想以上に大変だったらしい)

 

2562声 ぐるりのこと

2015年10月14日

中之条ビエンナーレが幕を閉じた。
2007年から隔年開催。今年はもう5回目だった。

 

5回目ともなると、
顔なじみのスタッフや作家さんも増える。
以前は、会場にもなっている「tsumuji」内で
働いていたから、町外から来る人とも仲良くなった。

 

2年ぶりに会って「いやー元気でした?」と
言葉を交わす人たちがいる一方で、
今回は来なかったみたいだなあの人、
という人たちもいる。理由は様々だろうが、
「調子があんまし良くないのかな」と
勝手に心配してしまう人もいる。

 

新作『恋人たち』もすぐに観たい橋口亮輔監督の
『ぐるりのこと』は、とても好きな映画だ。
撮影は、中之条で撮影された『月とキャベツ』の
上野彰吾さん。男女の絶妙な距離感を捉える。

 

新興宗教による事件や、猟奇的な殺人、
テレビを騒がせる事件が多かった90年代の
法廷画家の冴えない男が主人公というのも良い。
男女の小さな世界の話と、社会の広い世界の話が
交差し、身近なことの大切さがより際立つ。

 

男の妻は、不幸な目にあい心を閉ざす。
男は無理に立ち直らせるのではなく、それもできず、
「調子が良ければいいね」と、ただそばにいる。
癒し系、なんて生ぬるいものではない。
広い世界の中の小さな二人の、再生の物語。

 

僕が勝手に心配してしまった人にも
その人をそっと支える人がいることを、僕は知っている。
それであれば、この先はきっと明るい。そう願っている。

 

2561声 スリ

2015年10月13日

めっかった群馬のこのコラムは現在、
ぬくいさんほりさわさんすーさんと僕、
4人での月交代更新になっている。
全員に共通することは、おっさん。
僕以外に共通することは、のんべである。

 

結局実現しなかったが、
こういうメンツで小さな上映会をしたいと思う時があった。
その時は、故・黒木和雄監督の『スリ』を観せたかった。
この映画には、のんべがたくさん出てくる。

 

故・原田芳雄の演技が凄まじい。
年老いたアル中のスリの役である。
長年敵対してきた石橋蓮司との関係は、
まるでルパンと銭型。年月を経た妙があり昨今、
こういうベテランの芝居は観ることが難しくなった。

 

原田芳雄に真面目に断酒を勧める自助グループの
風吹ジュンが、ある日ぐでんぐでんに酔い
原田の部屋に転がり込んでくるシーンがとても良い。

少女のようなかわいらしさと、年のいった女性の寂しさ。
彼ら彼女らにとっての酒は、飲み物や快楽の枠を越え、
人生そのものなのだと気づく。

 

ベテラン監督によるベテラン俳優の痺れる演技と、
酒や人生に振り回され葛藤し昇華していく物語を“あて”に
めっかった群馬の面々と酒を飲みたい、と思ったのだ。

 

ここでこう書いてしまったから、いつかやります。
あなたがそれほど人に迷惑かけないのんべなら、
ぜひともご参加ください。

 

2560声 グラン・ブルー

2015年10月12日

「スカイランニング」という競技をご存じだろうか。
標高2,000mを越える山の急斜面を、駆けるように
登り、下る。聞いただけで心臓が痛くなるレースだ。

 

その競技で日本で最も速い男は、群馬県嬬恋村出身。
競技者としてだけではなく、スカイランニングの普及にも
尽力する32歳。名は松本大という。

 

彼がプロデュースする「アサマ2000スカイレース」の
大会映像を撮影する機会があり、
自称スポーツ無縁の僕ではあるが、彼と親しくなった。
この日は、万座の毛無峠にて彼が山を駆ける映像を撮影した。
撮影で向こうも1000%手を抜いてくれているとわかっても
ついて行くだけでゼーゼーハーハーである。

 

極限の自然環境の中で、ただただ自分と戦い先を目指す。
松本選手の見ている世界を想像した時に、
深い深海へ素潜りでひたすら降りていくジャック・マイヨール、
つまりは映画『グラン・ブルー』を思い出した。

 

印象的なシーンがある。
主人公がベットで眠っている。
突然、迫ってくるのだ、海が、天井から。
そこまで精神的に追い詰められて始めて、
彼は彼にしか見られない別次元の世界まで
降りていくことができるのかもしれない、と思った。

 

松本選手は、レース中でなければ気のいい
山好きなあんちゃんである。ただ僕はレースでの本気の彼を
映像以外に見たことがないので、彼もきっと僕らには
見ることのできない別次元の扉を叩いているのだと思う。

 

自称スポーツ無縁の僕ではあるが、夜明けの太陽に照らされ、
熊笹に覆われた雄大な山が渋く光輝く様子には言葉を失った。

 

山はいいなと思った。

 

2559声 ミスター・ノーバディ

2015年10月11日

魚河岸の社長の車の助手席に座り撮影に回った。
レクサスである。
機械科を出ている癖に車に全く興味がない僕でも、
高級車であることはわかる。
走りだしから停車、ドアの開閉までがなめらか。
僕の高級車のイメージは、なめらか、なのである。

 

あの日あの時何かが違えば、
僕はレクサスに乗っていたのだろうか・・・
それはないにしても、
あの日あの時あの子を呼び止めていたら、
今も一緒だったのだろうか・・・

 

ジャコ・ヴァン・ドルマルは、
そんなことをずっと考えている監督。
老いた自分の人生の惨めさを、
近所の金持ちの幼馴染のせいだと恨み
「もしもあの時」の人生を回顧する
『トト・ザ・ヒーロー』は映画ファンの間で
静かに語られる名作だが、
それから18年の歳月のあと、
「もしもあの時」のテーマを進化させ
『ミスター・ノーバディ』という映画を作った。

 

主人公には3人の幼馴染の女の子。
もし、誰と付き合っていたら、人生がどうなっていたか。
時に圧倒的な映像美で、テンポよく映画は進む。
この、「だれと結婚していたら、どうなった」
というのは、実はとてもリアルな事とも思う。
美人だったり金持ちと結婚しても幸せは保障されない。
そして、優しい人気持ちが豊かな人同志が結婚しても、
人間は数学と違い+×+が+とは限らないのだから、
幸せな未来が待っているとは限らない。

 

僕も晩年、人生を振り返る時が来るのだろうか・・・
その頃はきっと、なめらかな車乗っちゃってるよねー。

 

2558声 タンポポ

2015年10月10日

四万と沢渡に分岐する手前にある
「らーめんダイニング庵」の角田さんが、
東吾妻町原町Aコープの中に
「匠家」という2号店をオープンさせた。

 

「匠家」は家系豚骨醤油と鳥白湯の
2枚看板で、本来は濃厚こってりなそれらを
Aコープ客層に合わせにマイルドに仕上げている。
たまの休日には東京へらーめんを食べに行く
らーめん馬鹿一代とも言うべき角田さんなので、
きっと人気店になっていくに違いない。

 

『タンポポ』はとても不思議な映画だ。
らーめん屋を舞台としつつ、ただの繁盛物語ではない。
鬼才というか、多才の人であった伊丹十三監督らしく、
繋がりはよくわからないのだが印象的なシーンが多い。

 

もう死にそうだという妻に「炒飯作れ」と命令し、
瀕死のはずだった妻がむんずと起き鍋を振るシーン。
山崎努と安岡力也が少年漫画のように
拳をぶつけあい、その後ケロッと親友になるシーン。
意味もなく若い男女が(まだ売れてない役所広司!)
生卵をトロンと口移しし、それを繰り返すシーン。

 

生卵のシーンに関しては、学生時、僕が寮にいた際に
一発芸を強要され、同じクラスの神戸(男)と
そのシーンの再現をしたら、その場にいた全ての人が
めちゃくちゃ引きまくったという思ひ出もある。

 

・・・話しがずいぶんおいしくない方に逸れたが、
東吾妻町原町Aコープの中の「匠家」、ご賞味いただきたい。

 

2557声 まわり道

2015年10月09日

仕事で東京へ日帰りすることに。
あまり寝られていなかったのと、
車で東京へは築地以外迷子になるので
高崎から新幹線で向かった。
(築地だけは仕事で何度も行っている)

 

通勤で使っていればそれも日常になるのだろうが、
電車だとそれだけで“旅”という気持ちになる。

 

映画にはロードムービーというジャンルがある。
主人公が旅をする映画のことであり、名作も多い。
その中の金字塔としてヴィム・ベンダースの
『パリ・テキサス』があり、これはもう10年ごとに
見返したい、究極的な男と女の話だと思うのだけど、
彼はそこに行き着くまでにも3つ旅の映画を作っている。

 

その中の一つ、『まわり道』も、夜中の放送で見た。
冴えない顔をした作家らしき男が、もういい年っぽいのに
モラトリアムな空気をまとい、あてのない旅に出る。
感動的なドラマやロマンスもなく、退屈に旅は続く。

 

それでもこの映画を覚えているのは、
突然旅に加わる若きナスターシャ・キンスキーが
はっとする位かわいかったのと、
灰色がかった彼の旅が、なぜだか僕の気持ちに触れたのだ。
その理由は・・・実は未だにわかっていない。

 

もうだいたいの内容も忘れていたのだけれど、
これを書くために検索し下記のワンシーンを見つけた。
やはり理由はよくわからないが・・・良い。
理由はわからないけどいい。そんな映画があってもいい。

 

2556声 阿賀に生きる

2015年10月08日

僕の温泉での楽しみのひとつに、
農作業帰りであろうおじさんたちの
湯船での会話に聞き耳を立てる。
という悪趣味なものがある。

 

「猿のやろうは人を見てるよ。
俺がいればさーっと消えるが
おっかあだと逃げねえんさ」

 

吾妻に住んでいればごく自然に交わされる
そんな会話を、生活に根差したいい言葉だ!
と思ってしまうのは、学生時代に
ドキュメンタリーを専攻した名残かと思う。

 

2年に一度の「山形国際ドキュメンタリー映画祭」
が近づいている。世界各国から有名無名の
ドキュメンタリーのみを集め1週間に渡り開催する、
僕が「日本で一番意義深い」と思う映画祭だ。
2003年にはこの映画祭のスタッフとして山形にも行った。

 

『阿賀に生きる』は、新潟県阿賀野川の農村に、
故・佐藤真監督率いるスタッフが3年にもわたり
そこに生活し、「農村そのもの」を映した作品。
共に生活する中でキャメラに対する違和感も和らぎ、
映るおじいちゃんおばあちゃんは生きた会話を始める。
それを撮ることがいかに難しいかは、やってみるとわかる。

 

国内外、過去から現在に至るまでのドキュメンタリーの
研究家としても知られていた佐藤真監督は、
「ドキュメンタリー映画とは、世界のあり方を批判的に
受けとめようとした映像作品」であると書いた。

 

ぼくらは、現実を、世界を、受け止めているだろうか。

 

2555声 殺人の追憶

2015年10月07日

夜が明ける前、新聞代配をしていると、
なんだかあの藪、嫌だなぁと思ったりする。
ホラー映画は極力見ない主義だけど、
もののけか人か潜んでいそうな藪がある。

 

「お前、映画学校入って
これがつまらないって言ったら駄目だよ」

 

今でも覚えているのだが、調子のいいマサルが
韓国映画『殺人の追憶』を見て「つまらん」
と言った事に対する、平澤の言葉である。
つまりは、この映画には映画を志すものにとって
大事にすべきことが含まれているということだ。
その席にいた僕も同感だった。

 

ポン・ジュノ監督は韓国のわりと若手監督にも関わらず、
僕ら学校の創始者である今村昌平の気配も感じるような
重喜劇的世界観を作ってしまった。
一見そこらにいそうな男前ではない韓国の演技派、
ソン・ガンホがこの映画でも堂堂たる演技を見せる。

 

なんだか嫌だなぁという気配について。
映画の最後、彼は道端の変哲もない排水溝を覗く。
その後に見せる彼の表情が、今も焼き付いて離れない。

 

2554声 転校生 さよならあなた

2015年10月06日

今年も「伊参スタジオ映画祭」が近くなった。
11/14-15、中之条町の山あいで行われる映画祭だ。

 

中之条町にUターンし、犬の散歩をしていて
この映画祭関係の映画の撮影現場に出くわした。
その日の晩には拠点となる伊参スタジオに出向き、
「スタッフやらせてください」と言っていた。
それから11年が経ち、副実行委員長になった。

 

『転校生 さよならあなた』は、2008年に
映画祭で上映した。監督の大林宣彦氏も来場された。
映画祭の醍醐味は、どんな映画を上映するかにある。

 

2007年あたりか、四万温泉を歩いていて
この映画のポスターを見つけた。理由を探ると、
一部のシーンが四万グランドホテルで撮影されていた。
それで東京に観に行ったら、ものすごく良いのだ。
「伊参でやりましょう!」鼻を大きくして提案した。

 

主題歌を歌う寺尾紗穂さんは以前からファンだった。
大林映画への抜擢の理由は、大林監督の娘さんが
寺尾さんが好きだったから、と聞いた。
中之条、寺尾紗穂、好きなものが偶然一致する。
その興奮を、上映という形で大勢と共有できる。
そんな経験をしてしまうと、やめられない。

 

2553声 バックドラフト

2015年10月05日

自称映画好きなので、
タルコフスキーは観とかないとだよね、とか、
成瀬・小津・溝口ももちろん観てますよ、とか、
通ぶりたくなる時期もあったが、
最近でも「Xメンシリーズ」は全て映画館で観ているし、
ぶっちゃけわかりやすい映画は好きである。

 

僕が生まれ育った中之条町には映画館がない。
一昔前には、廣盛酒造そばのそば屋「朝日座」が、
名前そのままに映画館だったとかそんな話はあるが、
小学校の頃に僕が観る映画は、吾妻文化会館で見た
年に一度のドラえもんなどを寄せ集めたアニメか、
テレビで見る「金曜洋画劇場」だった。

 

『バックドラフト』は、中学生の頃に
たしか金曜洋画劇場で見て抜群に面白いと思った映画。
アクション、サスペンス、外れがない頃のデニーロ、
面白い映画に必要なことがだいたい詰まっている。

 

観終わって映画館内がにわかに明るくなり、
それでも席を立てないような打ちのめされる映画も良いが、
何も考えたくない時にビール片手に見るような
わかりやすい映画も良い。

 

2552声 明日を夢見て

2015年10月04日

『ニューシネマパラダイス』が映画の光を描いた映画なら、
同ジュゼッペ・トルナトーレ監督の『明日を夢見て』は映画の影を描いた映画。

 

『明日を夢見て』は確か誰かにWOWWOWを録画してもらい見た。
イタリアの美しくも貧しい田舎を舞台に、映画のオーディションと銘打って
人々をフィルムに収める男の話だ。

 

ところがこの男、全くの詐欺師。
オーディション料をせしめて、映画スターを夢見る人たちを欺く。
男が回すキャメラには、若い女や地元の名士、兵士などが映る。
その中の一人である美しい娘に男は惹かれるのだが、
男の正体は暴かれ、刑期を終えた後には娘は精神を病み、男の事もわからない。

 

『ニューシネマパラダイス』ではラスト、
フィルムで繋がれたキスシーンが並ぶ感動的なシーンがあるが、
この映画では、男が用途もなく撮りためた人々のインタビューフィルムが連なる。
実に切ない。切ないという言葉では補え切れないほど切ない。
同じ監督がこんな光と影を描くのか、と、これを見た20歳前後から、
映画を監督で観るようになった。

 

何の身構えもせずに深夜のTVで見た映画が強く印象に残ることもあるように、
マイナーな映画でも、だからこそ忘れられない映画がある。