日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和7年度は4月(す)5月(堀)6月(坂)7月(ぬ)8月(岡)9月(す)10月(堀)11月(坂)12月(ぬ)1月(岡)2月(す)3月(堀)の順です。

6033声 ガメイの巨匠

2024年12月13日

橋本屋でギィ・ブルトンの試飲会。ギィ・ブルトンは故マルセル・ラピエールと並ぶヴァンナチュールの先駆的存在である。年齢はいま還暦くらいか。フランスボジョレー地区の生産者でボジョレー内に細かく区切られる地域別に畑を持ちワインを造っている。今回はその試飲会。シルーブル、レニエ、フルーリー、モルゴン、ボジョレーヴィラージュ。これらすべて地域名産地名。モルゴンはバランスよくいつものチャーミングなガメイの味で、今回よかったのはレニエ。苦みも渋みも少なく粘度のある重心の低い果実味が感じられた。世界中に赤ワインはたくさんあれど寿司に合うのはボジョレーのガメイだと思っている。

6032声 時間を遅らせる

2024年12月12日

動物にとって食べることは一大事である。寒くとも川の中で虫や魚が流れてくるのをじっと待つ白鷺を見るたびに思う。食べることが一大事ならば「飲み込む」ことも一大事である。ようやくありついた獲物が万が一にも有毒だったら元も子もない。食べることに付随する「飲み込む」とは、「飛び降りる」と似ている。食べ物というのは基本的に噛み続けていればなくなるようにできている。それでも飲み込みたいのは意思的でありたいということか、あるいはどうしようもなく気短かか。どうしてお酒を温めるのか?それは温かいことが細胞レベルの親和性を高めるからだとふと思った。喉は皮膚から遠い。その上意思的である。「食べる」ことを「飲み込む」ことではなく、「染み入る」ことに近づけたいのだと思う。おいしいということの中には「否応なく染み込んでゆく」という要素、感覚があるはずである。それが大事だと思えたら飲み込むことを遅らせることができる。

6031声 変化と安定

2024年12月11日

予約のある時は営業前に必ずお酒の味見をする。その日の料理と日本酒、ワインを合わせて提供の順番などを話し合う。日本酒は抜栓後も味の変化が少ないがワインは刻々と変化してゆく。酸化防止剤を使わないワインであればなおさらである。魚でもワインでもいいものは緩やかに変化する。しかしながらそういうものばかりを扱えるわけではない。予測不能な味の下降線を目の当たりにして一喜一憂する日々。食材もお酒も変化する醍醐味と安定している確かさとのせめぎ合いである。人生そのものである。

6030声 幅を広げる

2024年12月10日

あん肝は味をつけて炊いている。梅干を加えて甘く炊く紅梅煮というクラシックな料理である。梅干とあん肝の相性はよくそのままでもおいしいがそれを裏ごした焼き芋と重ねて上から柚子の香る黄身酢をかける。こうするとワインにぐっと寄っていく。合うお酒の幅が広がる。「このさつま芋がいい仕事してるのかもしれない」赤ワインを召し上がっていたお客様がつぶやいた。

6029声 母の弱気

2024年12月09日

年末調整の話を聞きに実家へ。白のバンが3台止まっていて職人が何人もいた。奥から元気のない様子でお袋が出てきて会うなり、「正直もう疲れちゃったよ」と言っている。家を改装するとは聞いていたがひと月以上も職人が出入りする生活は堪えるようだ。家では話をできそうにないので喫茶店へ移動する。改装工事もさることながら日々の親父の癇癪もストレスらしい。「話ができて少し楽になった」と帰り際。弱音をあまり言わない人の弱音はこちらまで苦しくなる。

6028声 40代の安心感

2024年12月08日

スタッフと忘年会。現在うちには40代前半が3人いて彼らと小籠包を食べに行った。このくらいの年になると顔つきは社会性を纏う。大人の顔になるとはそういうことだと思うが同時にそれぞれに生きてきた年輪から出るアクが全体から滲み出てしまいもする。アクにも色々ある。大事なのは社会生活を経てきたこと、そこに他者がいた時間があったという事実で、だからもし40代の人間に対する安心感というものがあるとすれば、それは「もう子供じゃない」という事実なんだと思う。紹興酒を飲みながらそんなことを考えていた。現在うちにいるスタッフに共通するのは、痛みをわかることができるアクを持っていることだと思う。

6027声 フルーツビールの着地点

2024年12月07日

夏みかんのビール瓶詰め。一次発酵終盤に果汁を加えて様子を見る。糖と酵母があれば再発酵が始まるのは当たり前で調整が必要である。タンクの移動と火入れの必要性というまた手間の増えることを感じた。夜はお一人のお客様と若い男女の二組。お一人で来られた方が追加で鮪のご注文。追加に鮪をおかわりされるお客様は少ない。お目が高い。

6026声 休息日

2024年12月06日

風の強い一日。例年だと暇なことが多い12月初旬だが今年は忙しい。時々緩めないと何も考えられなくなるので今日は休息日。包丁を研いで風呂に行ってお酒を飲んでおしまい。

6025声 昔話

2024年12月05日

いつもビールに使う果物や野菜を分けてくれるМさんがご来店。仕事でお世話になった方を連れて行くと言って来られたのは私と同世代のお客様で、住まいも伊勢崎だということから話は若い頃の伊勢崎での夜遊び伝となった。今から25年前くらいの伊勢崎は時間制パブ所謂キャバクラができ始めた頃。旧市街地はメイン通りまであっという間にピンク街に様変わりした。お客様の相当遊んだという昔話を聞きながらすました顔で料理をしている自分も当時は浴びるように酒を飲み遊び歩いていた時代。夜の街で酒を酌み交わした人たちの顔が浮かんだ。

6024声 饅頭

2024年12月04日

饅頭を作る。饅頭と言っても捏ねた小麦粉にあんこを入れて蒸かしたアレでなく日本料理の技法にある芋や豆を使った甘くない饅頭のことである。春は筍やそら豆、夏は枝豆や蓮根、秋は栗や南瓜、冬は里芋や百合根で作ることが多い。今回は里芋の仲間の京芋を使って中には鰆を入れた。京芋を茹でて鰹出汁の薄密で炊いて裏ごして葛粉少々を加える。そこに小さく包丁した鰆を入れて丸めて蒸す。仕上げに裏ごした鱈の白子を出汁でのばして掛ける。芋も白子も白いので器は黒で。最近あまりやらないが今日のお客様は先週も来てくださった方なので目先を変えた。

6023声 再会

2024年12月03日

随分昔に所属した社会問題を考えるNPOの忘年会に参加。仕事以外で人に会うことが少なくなったので皆さんの年の取り方を知りたかった。7~8年ぶりにお会いする方もいたがお元気そう。私は活動にほとんど参加していないので静かにしていたら発言を求められ、「老兵の自覚」なんて言ったら皆さんきょとんとしていた。

6022声 もしかして

2024年12月02日

右手の薬指の皮膚が少し荒れている。蟹だろうか。今年は香箱をずっとしているからアレルギー反応か。ひどくなると困るので明日から蟹を捌く時は手袋をしようと思う。若い男性3人のお客様。いつもは小さめに握るシャリを少し大きくしてお出しする。

6021声 お一人様

2024年12月01日

お一人のお客様が二組。お一人様での予約も少ないが二組揃うことはほとんどない。当たり前だが予約をしたご本人のみなのでお店としてはやりやすい。ホームページを見て読んで予約をしてくださっているはずなのでうちの特殊性を理解していただいている。何を求めているかの想像がつきやすい。とことん料理と酒の準備に集中できる。言葉は少なくともいい時間は成立する。

6020声 明日から師走

2024年11月30日

気が付けば明日から師走。今年もあっという間に過ぎた。年賀状をつくるため、今年の写真を見返しているが、今年も雪中キャンプから常夏の南の島まで、いろいろなところに旅した。娘の好きな遊びは、秘密基地(テント)づくりとホテル屋さんごっごである。仕事も上司が代り、方針変更にアジャストするのが大変だったが、なんとか腹の中でいなしながら、バランシングしてやってきた。このまま3月まで走り切ろう。明日は大学時代の同期とラグビーの応援。伝統の一戦は節目の100回目。毎年の恒例行事。ではでは、今年もありがとうございました。次は俳句ingでお目にかかりましょう。

6019声 一人

2024年11月29日

今日は妻と娘が実家に帰省し、ほんと久々に一人になった。他人の気配のない家の静寂さに、包まれて寂しい感じがしたが、とりあえず普段できない映画を観たり、本を読んで過ごす。夜は蕎麦屋のカウンターで一杯ひっかけた。子供が生まれてから来れてなかったので、4年ぶりぐらいである。風呂にもゆっくり浸かって、誰にも起こされることなく寝た。目覚めたら一人で、朝ごはんも当然ない。今日は出かける用事があるが、無ければ首を長くして帰りを待っていたことだろう。まぁ当たり前のことのありがたさに気づくには、一人の時間も必要だ。

6018声 添い寝

2024年11月28日

今日は妻が忘年会なので、子どもを保育園を迎えに行き、彼女の大好きなファミレスでデート。もう何度も言っているので、オーダーからドリンクバーに取りに行き、子どもに貰えるグッズで遊ぶというルーチンのような所作。ひらがなの文字単体は読めるようになってたが、最近はそのつながりが単語となることを発見して、ひらがなを見つけては声に出して読んでいる。こちらもハッピーアワーのビアを2杯に、グラスワインも飲んで良い加減である。帰宅し一緒に風呂に入り、絵本を読んでいたら2人で寝入ってしまい、夜中に寒さで目が覚めたら布団を取られていた。明け方目を覚ますと、妻の隣に移動していた。なかなか母の壁は越えられない。

6017声 逃避

2024年11月27日

朝から打ち合わせが続き消耗。優秀な係員が頼みの綱。冬休みに入ったら雪中キャンプに行こう。現実逃避。

6016声 息抜き

2024年11月26日

午前中から工事の打ち合わせ、年度末の工期に向けて計画的に進めている。ランチは若手と、新前橋駅近くにある初めてはいったBUNONというパスタ屋に。エビのトマトクリームパスタを選択したが、思った以上に美味。このままワインでも飲んで帰りたい。妻も人間ドックで美味しいランチを楽しんだようだ。係員の福利厚生も兼ねているが、最近ランチが息抜きである。