日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和8年度は4月(坂)5月(ぬ)6月(岡)7月(す)8月(堀)9月(坂)10月(ぬ)11月(岡)12月(す)1月(堀)2月(坂)3月(ぬ)の順です。

3792声 男の夢

2017年03月26日

昨日の続き。山小屋についた。日も落ちかけた寒い野外に出て、低めの屋根から太く透明に垂れ下がるつららを2~3本パキッと折って室内に持ち込む。リュックの中からごそっとウイスキーを取りだす。赤くじんじんと燃える薪ストーブの側の席に座り、ウイスキーオンザつらら。片道6時間をかけて雪原の芳ヶ平を歩きここまでやってきた皆と、乾杯をした。

3791声 芳ヶ平

2017年03月25日

西洋かんじきと言われるスノーシュー。靴に取り付けると、新雪の上でもある程度までしか沈まない。これを履くのはまだ2度目だった。

 

ザシュ、ザシュ、サク、サク、ズボッ、ザシュ、ザシュ

 

田代原の道に車を停車させ、中之条町六合山岳会の方たちに交じって、雪原の芳ヶ平を横断する。率いるのは御年79歳の山本茂さんということもあり、まあ長~~~い間山での暮らしをしてきて「囲炉裏の前でのんびりしている茂先生は、山に入ると変わるぞ」と話しには聞いていたのだが、その行程をなめていた。皆さんとてつもなくタフだった。そしてその元気さにようやく引っ張り上げられる僕は、貧弱だった。

 

ザシュ、ザシュ、サク、サク、ズボッ、ザシュ、ザシュ

 

片道6キロ。標高差はどれくらいだろうか。林の間を、山あいを歩く。雪がない時は笹に覆われていて歩けないという、おにぎり山が最後の難関だった。雪に覆われるとそのような場所でもスノーシューや専用スキーで登っていける。足跡のない先頭を行くことをラッセルと呼ぶらしいが、その時はずっとスクワットをしている気分だった。ただ、振り返ると一面は雪に覆われた雑木林で、白と黒とのコントラストが心に染みる。遠く山々の稜線の間には草津温泉街も見えた。

 

ザシュ、ザシュ、サク、サク、ズボッ、ザシュ、ザシュ

 

おにぎり山の山頂を過ぎて、宿泊場所となる山小屋が適度な大きさに見えた。これがもっと遠くならがっかりしたし、近すぎても感動が薄かったかもしれない。太ももパンパンの僕にはその山小屋が、幸せの黄色いハンカチに見えた。

3790声 新しい靴

2017年03月24日

血のつながっていない妹、のような人がいる。

 

近年話題に出ることも多くなった性同一性障害の彼女との10年を話すには、ここのスペースでは足りない。一時期は自宅にひきこもりのような状況になり「僕がどうにかしないと」などと空回りしていた時期もあったが、自ら電車で1時間ほど離れた町に部屋を借り、僕は何もしないまま、自分に合う職場に巡り合い、今は調理を任されるようになったとのこと。これまでも大変なことがあったし、これからも大変なことはたくさんあると思うが、「環境が変われば、動き続ければ、人生は変わる」と、こちらが学んだりもしている。

 

今夜は友達たちが彼女の誕生日を祝ってくれるのだそうだ。靴がボロボロなことを知っていたので、靴屋に連れていって、高くはないが動きやすそうな靴をプレゼントした。

3789声 中之条アクティビティ

2017年03月23日

中之条町の観光協会さまの依頼で、この1年観光映像撮影を行ってきた。生まれ育った町なので、知ったところは多く、知らない場所は場所で新鮮に見られる。とても記憶に残る仕事になりそうだ。

 

たまに「中之条にいい所ある?」「四万温泉はどの宿がおすすめ?」などの質問を受ける。それに対していくらか答えられはするんだけど、どうしても自分の好みから外れないので「今年の秋は中之条ビエンナーレだから来るといいよ」とか、常にある場所・人をおすすめするほどこの町を熟知はしていなかった。あと一年もすれば、365日おすすめを用意できる・・ようになるかな。

 

今回の撮影で、僕の好みからは全く外れていた体を動かすこと、アクティビティもまた中之条町の魅力だということを知った。夏の四万湖でのカヌー体験、冬のチャツボミゴケ公園でのスノーシュー体験。どちらも撮影しながら僕でもできたのだから、あなたも問題なくできることでしょう。群馬で言うとみなかみなのかな、アクティビティができる場所は数多くあれど、四万ブルーと呼ばれる神秘的な湖と、国天然記念物指定を受けたばかりのチャツボミゴケ公園があるのは中之条町だけ。この映像が今後、観光のお手伝いになることを切に願っている。

 

3788声 味噌

2017年03月22日

「作った味噌もってくかい?」

 

と、山あいにある中之条町山田のお客さんちで言われ「はい」と即答したら、樽ごとくれた。五キロはあるかな。僕は多分人より「ものを頂く率」が高いのだけど、きっといつも物欲しそうな顔をしてるんだろう。

 

味噌を自分で仕込む人を無条件に尊敬します。

3787声 64

2017年03月21日

訳あって、吾妻線に乗って横山秀夫著「64」を読んでいた。横山秀夫さんは僕が関わる「伊参スタジオ映画祭」でシナリオ審査員を務めていただいたこともあり、昨年の映画祭では映画化された『64』を上映、主演の佐藤浩市さんとともにゲスト来場していただき、その日は映画祭にとって忘れがたい一日になった。

 

お読みになった方はわかると思うが、記者担当の刑事・三上が警察内部の利権争いや昭和64年に起きた誘拐殺人「64(ロクヨン)事件」の真っただ中で奮闘するこの小説。面白いのだ。この日は最寄りの中之条駅ではなく隣の市城駅に車を止めていたのだが、高崎からの下り、本から目を上げたら中之条駅だった。乗り過ごした!

 

焦らずに駅員に訳を言い、待合室で上りの電車を待ちながら再び「64」を読む。40分ほどして上りの電車に乗る。小説では、三上が警察内での圧力に屈さずに「匿名にしていた交通事故加害者は大会社の娘。被害者の中年男性は長年の工場勤めで貧しく、週1回の飲み屋での晩酌が唯一の楽しみだったが事故後間もなく死亡した」と記者にまくしたてるシーンだった。思わず活字が滲む。はっと顏を上げれば・・市城を乗り過ごしていた。

 

結局、2度目の折り返しを待つ渋川駅で「64」を完読した。すごいな、横山秀夫さん。

3786声 霊山嵩山

2017年03月20日

墓参りは昨日に済ませ、中之条町霊山嵩山(たけやま)。弥勒穴を巡り、故人との思い出にもちょっとは浸り、山頂にておはぎをほお張る。

 

分けいって、分けいって、春。

3785声 母性

2017年03月19日

堀澤さんとは結局、シンキチ醸造所にやってきた知人女性含め3人で、店仕舞いの後に飲みに出た。行きつけだという夫婦で営む和食屋で、僕は焼きたらこを、堀澤さんはしめ鯖を頼んだように思う。

 

堀澤さんと飲むのはもう何度目かわからないけど、この日の終わりに「岡安さんの母性は良い」みたいなことを言われた気がする。僕は「おかやすさん」と名を呼ばれる事も多いのだけど、どういうわけか間違えて「おかあさん」と呼ばれたことが幾度かある。・・それはともかく、まあ少年時代に男らしさを通学路の脇に落としてしまったような気もするので、あながちお母さんみたいと言われるのは、そうなのかもしれないと自分でも思う。

 

堀澤さんがどんな流れでそう言ったのかはよく覚えていない。自分としてはもっと男らしくなりたいんだけど、言われてほっとした気もする。堀澤さん、長生きしてね。

3784声 シンキチ醸造所

2017年03月18日

小さなドアを「こんちは」と開くと、店やカウンターには人がいない。奥の硝子窓から見える隣室の銀色のおっきなタンクの側で、堀澤さんが何やら作業をしていた。硝子窓をノックして、「飲めますか?」と聞く。カウンターに座った。

 

シンキチ醸造所はオープンしてからいくらか経つが、いよいよ、めっかった群馬の(ほ)、堀澤宏之さんによるクラフトビールの醸造・販売が始まった。僕は少し出遅れて、その遅れを取り返すかのように「長屋エール」「金柑Jr.」「ストリッパー」と立て続けに飲んだ。華やかさの驚きが優先されそうなクラフトビールにあって、堀澤さんが目指すのは和食にも合う食中酒としてのビールなので、なるほど「長屋エール」なんかはアテをつまみつついつまでも飲んでいられるような親しさを感じた。

 

客がいなかったのは僕が入るまでで、予約の客、常連さん、そしていわゆる「クラフトビールマニア」みたいな人で店は賑やかになった。聞けば「高崎に新しいビールができた」と聞き、宇都宮から電車に揺られやって来たそうだ。そんな期待にも応えられるようなビール、そして相変わらずの食べ合わせの妙な料理だった。みなさんもぜひ、足を運んでいただきたい。

 

シンキチ醸造所

 

3783声 自分の言葉

2017年03月17日

「ごごラジ」という番組の金曜パーソナリティーの高橋久美子さんという詩人/作詞家/エッセイストのファンだ。彼女はチャットモンチーというバンドのドラム・作詞担当だったけど、人気絶頂の中で「自分のゆく道はバンドではない」と一線を退いてしまった。・・などという経緯は知らなかったのだけれど(チャットモンチーも「シャングリラ」しか知らなかった)、車での移動中にラジオから聞こえる彼女の話が面白くて、今ではすっかりファンになってしまった。

 

彼女のエッセイ本「思いつつ、嘆きつつ、走りつつ」も面白かった。自分が思ったこと、経験したことをこれほどわくわく語れる人は稀なのではないかと思う。春の様子を書いた一遍には「ホームレスのおじさんなんて、春の間は毎日お花見だよ。あのツーショットは生命力の象徴だよなあ」という一文がある。目線の温かさ、言葉の妙を感じる。対して僕は、借り物じゃない自分の言葉で世界を語っているだろうか・・・

 

初めてやったんだけど、今日「ごごラジ」を聞いていてとっさにツイッターで  をつけて投稿したら、その30秒後には僕の投稿が番組内で読まれていた。高橋久美子さんも「ありがとうございます」って言った!(確か)。そんな些細なことに胸が躍ってしまう37歳であった。

3782声 2時間で立つ

2017年03月16日

今日は酪農場を撮影をした。昔はうちの近所でも同級生が牛を飼っていて、小学生のころにこわごわ牛舎を覗いた気がするが、しっかり牛舎に入ったのは初めてだったかもしれない。

 

90頭近くのホルスタインがおり、ここには自分のところで産まれた牛しかいないのだそうだ。雄牛は生まれてすぐに売られていくとのこと・・男はつらいよ・・。聞くと、つい2時間前に子牛が産まれたという。その時来ていればその瞬間が撮影できた!と思いつつ、産まれたての子牛も撮らせてもらった。

 

まだ体にぬめっとしたものを纏っている子牛が、牧草の上に縮こまって座っていた。けれど、世話をする女性が近づくと、ヨロッヨロッと・・立とうとするではないか。産まれて2時間なのに。おぼつかない足ながらも、子牛が4本足で立つまでに、時間はかからなかった。すごいな、牛。

 

人間と付き合うのもひどく大変だったりするが、動物と向き合っている人に会うと無条件に尊敬してしまう。おいしい牛乳が飲みたくなった。

3781声 花粉に効く薬

2017年03月15日

今日は1日山の中での撮影だったので、普段まったく飲まなかった鼻炎薬「アレグラ」を買って朝飲んでみた。

 

朝起きてすぐにティッシュがなければずーずー弁な状況だったのに、日中鼻水は一滴も出なかった。僕はその程度の花粉症だということと、「薬を飲んだから大丈夫に違いない」という思い込みの激しさ効果と、撮影の緊張がそうさせたのだと思う。思い込みの激しさも自分特有なのだけれど(「自分は肩こりしない体質」と長年思い込んでいたおかげで肩こりをしなかった。そうかも、と思った途端にこった)、撮影の緊張、これとても大事だと思っている。「今、何を撮るべきか、撮らないべきか、何を話すべきか、話さぬべきか」を意識することは、=いかに真剣に対象と向き合うか、であって、日頃わりと鈍感な僕には、その時間が楽しい。

 

撮影の集中を上げるために一時期「レッドブル」を乱飲したけど、それはもう辞めた。前の日によく寝とく、でいい。花粉の薬はここぞという日は飲もうと思う(悩んでいる人は一度お試しあれ)。あとは、思い込みの激しさを緩和させる薬だな・・失敗を繰り返すしかないかな・・

3780声 ストーブ

2017年03月14日

新聞代配が終わり午前6時。事務所に上がりお茶を入れる。なんだかいつもと違う。すぐに、ストーブをつけていないことに気付いた。

 

いつもそうだ。気持ちより先に、季節がやってくる。

3779声 遺言

2017年03月13日

『遺言~原発さえなければ~』というドキュメンタリー映画を観た。2014年の作品で、編集には僕の映画学校での担任であった安岡卓治氏が加わっている。2011年3月12日から3年の月日をかけて福島県飯館村を中心に、そこで惑い、そこを離れ、そこに留まる酪農家、農家を撮り続けた作品だ。

 

山あいの中之条町に住んでいるので、農家の知り合いも増えた。僕の親父世代の人たちは特に皆「屈強な男」という印象を受ける。自分の力一つで仕事を続ける姿勢がそうさせるのか、3食しっかり食べるご飯がそうさせるのか。対峙すると自分の心身の弱さを感じずにはいられない。

 

この作品の中にも、僕が知ったような顏の屈強な男たちが出てくる。けれど。放射線量が高く、一頭一頭家族のように育ててきた乳牛を飼育することが不可能となり、屠畜のために大きなトラックに乗せなければいけない場面。その屈強な男が、目にいっぱいの涙を溜めている。「見てらんねぇや」とひと時席を外す。タイトルにもあるように、酪農を辞めざるを得なかった直後に、自らの命を絶った方もいた(実際、震災による直接死よりも関連死の方が上回っている)。ああこの震災や原発事故は、屈強な男たちの心さえもズタボロにし、先祖から続くその地との結びつきを断絶させたんだな、と再確認せずにはいられない。

 

このドキュメンタリーは3時間45分にもおよぶ。端的なニュースでもなく、回想録でもなく、3月11日直後からのその場所での時間・暮らしを丁寧に映像に納めている。そしてラスト、「これが復興です」などと根拠のない希望は口に出すのも憚られるけど、福島の地で再び酪農を始めるという屈強な男たちの目には、強い意志が戻っていた。そして、この作品を観て「もし僕の近くで同じようなことが起きたなら、僕が知る屈強な男たちもまた、自らの手で自らの目に強い意志を取り戻すのだろうな」と思った。

3778声 尻尾

2017年03月12日

先日温泉で身体を洗っていたら、グラっと揺れて、孫悟空で言うところの尻尾が生えている部分を床に強打。座っていた木の椅子の足が折れたのだ。

 

そんなことがある位だから信じてもらえないと思うけど、年明けから不定期で腹筋運動をしていた。でも孫悟空で言うところの尻尾が生えている部分が痛くて、腹筋ができない。仕方ないなそれじゃ、できなくてもな、うん、仕方ない、残念だけどな、うん。

3777声 3月11日

2017年03月11日

新聞各誌も厳粛な朝。

 

昨晩会った金井夫婦とは、6年前の震災関連イベントで共にボランティアをし、急に親しくなった覚えがある。昨晩、今思えばだけど、震災の話は一切しなかった。でも、それぞれがそれぞれの場所で行動している人たちなので、今思えばだけど、言葉にしなくても震災以後を共有している気もする。

 

偉そうなことは何も言えないけど、僕にできることは「6年前の気持ちを忘れずに、もっと自分の足元を見る」ことなのかなと。今年のゴールデンウィークか夏には、小さなビデオカメラを持って、福島へ戻ったあの人たちにも電話をして、二泊三日くらいの東北観光をしようと思う。

3776声 北毛

2017年03月10日

「高崎エキビレッジ」を主催する金井さんに呼ばれ、北毛の人たちが集まる飲み会に参加した。北毛の人たち、とはざっくりすぎるが、みなかみ町「たくみの里」近辺に暮らしている花屋さん、さくらんぼ農家、カスタネット職人、先生、旅館業兼活動家のみなさんだ。

 

たくみの里は、中之条町からも山ひとつ越えた近さなのだけれど、仕事や遊びで週1は行く前橋高崎に比べて全くと言っていいほど北の山は越えない。でも行けば「豊かだなぁ」と思うに違いない。現に、そこに集まった人たちは年は僕と同年代あるいは前後であるけれど、「地に足つけて自分の力が最大限生かせる範囲の仕事を淡々と喜びももって暮らしている感」が滲み出ていて、気持ちいい人ばかりだった。映像を作りたい、なんて話しも出た。その後フェイスブックで友達となったので「春になったら、まずは遊びに行きます」とメッセージを送った。

3775声 とり野菜みそ

2017年03月09日

とり野菜みそ、をご存じだろうか。

 

群馬で焼きまんじゅうを知らない人がいないように、石川県では有名・・らしい。ようは鍋のもとで、甘みのある味噌に肉やニンニクのエキスが入った調味料なのだ。たしか高崎の「まるおか」でも売っていた気がするが、ぼくんちの側の「ヤオコー」でも売っていて、試食で渡されたものが美味しくて、買った次第。

 

2日連続で、家に帰ると一人用鍋を火にかけ、適当な野菜と適当な肉をぶちこんで、とり野菜みそをニューっと入れ(チューブタイプなのね)、豆腐を乗せて蓋を乗せ、10分位煮たら、湯気たつ鍋の両脇をタオルで掴み炬燵へ運び、鍋に箸をつっこんで、はふはふ食べた。

 

焼きまんじゅうを許容する群馬県人だもの。「甘じょっぱい」、これには弱いねー。もう春はすぐそこだと言うのに、飽きるまで食べそう。