「歩かないからだよ」
と言う指摘を受けた事を、ふと思い出し、
自宅裏の田圃を小一時間ほど、歩いてみた。
先日から、どうも腰の具合が悪く、
軽いぎっくり腰ではなかろうか、と感じている。
腰が痛くて、散歩に出掛けるなんて、年寄めいているが、
時刻が夜と言う事も有り、気分転換を兼ねて、出掛けた。
生温かい風の吹く外の空気感は、すっかり夏の夜、である。
薄ぼんやりとした闇の中を、懐中電灯片手に歩を進める。
水田一枚ごとから、蛙の声がさんざめいている。
この自宅裏の田圃、と言うのは、何でも先の戦時中は飛行場があったとかで、
広大なのである。
榛名山と赤城山の麓、遠くに爪程の灯を置く。
畦道を進んで行くと、休耕田、と言うか只の草ぼうぼうの空き地に、
ライトを煌々と灯した一台のブルトーザーが、動いている。
けたたましいエンジン音を唸らせ、しきりに、枯蘆や雑草をなぎ倒している。
何だか、獰猛なロボット型の恐竜を思わせ、
その光景は、80年代のSF映画に出てきそうな場面であった。
何の故があって、夜に草をなぎ倒しているのか知らぬが、
なんだか、邪悪な感じがしないでもない。
通り過ぎて、家路を進む。
小一時間も歩いて、腰の痛みは、左程、変わり無いようだが、
涼やかな夜風を受け、気分転換にはなった。
帰り際、庭に紫陽花の咲いている家があった。
街灯に照らされた花は、未だ、色づいていなかった。
祖母の家の庭に、毎年咲く、紫陽花を、ふと思い出した。
あの紫陽花は、もうすぐ色を付ける筈である。
しかし今年の庭に、祖母は居ぬ。
明日は、祖母の居る病院へ、行こうと思った。
横の水田で、百万匹の蛙が大合唱している。
直ぐ足先で、一匹だけ、しきりに低く鳴いている蛙があった。
【天候】
朝より雨。
午前中には上がり、その後は終日曇りで蒸し暑し。
蛍が飛びそうな気候に、なって来た。