日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和8年度は4月(坂)5月(ぬ)6月(岡)7月(す)8月(堀)9月(坂)10月(ぬ)11月(岡)12月(す)1月(堀)2月(坂)3月(ぬ)の順です。

3763声 生首と鼠

2018年03月03日

髪が伸び放題で、おばちゃんを越えてメデューサみたいになってきたので、会社そばで散髪した。

 

前回来た時までは多分、洗髪しかやっていなかった女の子が担当になった。若い頃は、自分のイケてなさへのコンプレックスもあり、この「髪を切っている時の美容師との会話」に勝る気まずさはなし、と思っていたけれど、歳をとると、こきたいときに屁もこくし、美容師との会話も気にならなくなってくる。

 

私の部屋、髪を切る練習のマネキンの生首がたくさんあるんですよ。良く切れたな、ってやつはとっておくんで。気持ち悪いですよね。

 

終礼の時に、視界にねずみみたいなものが見えたんですよ。言っても信じてもらえなくて。でもそのあと、店長のかばんの中にいたんです。ねずみ。

 

わりと良くしゃべる子だった。そりゃあ怖いね。へぇーそんなことあるんだね。と適当に答えた。さっぱりした髪は、以前までの担当の男性の方が上手な気がしたけど、洗髪担当を卒業した彼女はこれからどんどん髪を切るべきだし、気に入った。

3762声 石牟礼道子

2018年03月02日

今年、生涯に渡って新潟水俣病患者についての著書を書き続けた石牟礼道子さんが亡くなった。僕は残念なことに彼女の本を読んでいないのだけれど、ラジオの追悼番組で代表作である『苦海浄土 わが水俣病』の一節をアナウンサーが朗読し、その言葉のあまりの重さに目眩がした。

 

「銭は1銭もいらん。そのかわり、会社のえらか衆の、上から順々に、水銀母液ば飲んでもらおう。上から順々に、42人死んでもらう。奥さんがたにも飲んでもらう。胎児性の生まれるように。そのあと順々に69人、水俣病になってもらう。あと100人ぐらい潜在患者になってもらう。それでよか」

 

また、先月末の新聞には彼女が残したこんな言葉が綴られていた。

 

「手に盾ひとつももたぬものたち、剣ひとつ持たぬものたち、権力を持たぬものたち、全く荒野に生まれ落ちたまま、まるで魚の胎からでも生まれ落ちたままのようなものたちが、圧倒的強者に立ちむかうときの姿というものが、どんなに胸打つ姿であることか。しかも死にかけているものたちが。もっとも力弱きものたちが人間の偉大さを荷ってしまう一瞬を、わたしたちはかいま見ました」

 

言葉には魂が宿り、それは年月を経てもなお、残り続ける。

3761声 春の嵐

2018年03月01日

春の嵐なのか、強風吹き荒れる日が続く。

 

ふと、春の嵐のようなあの性欲はどこへ行ってしまったのかと思う。

まだ、38歳と3ヶ月。今月は岡安が担当します。

 

3760声 零れるように

2018年02月28日

本日夜半から雨が降り出し、明日は春の嵐で雨風共に強い予報である。
これが過ぎれば、春一番が吹いき、いよいよ春めいてくるだろう。
いましがた捲ったカレンダーは、もう満開の桜の写真。

二月は零れるように過ぎていきました。
明日からのひと月は、岡安さんです。

3759声 深い霧

2018年02月27日

花粉症対策のため、夕方、耳鼻科へ寄った。
入り口で受け取った整理券が73番。
待合室の電光掲示板に案内されている数字が50番。
つまり、私の前に20人以上も待っているということになる。
待合室の人数から見ると、一旦、外へ出ている人もいるらしい。
こどもたちは、待合室の奥のアンパンマンのシートが敷いてある一角で、
寝転んだり、本を読んだり、喧嘩していたり、ぐずったり。
一時間半くらい経過しただろうか、呼ばれて軽い往診を受け、吸入をした。
子どものころ、中耳炎になって依頼の、吸入器である。
あの時分より、幾分、近代的になっているような。
水蒸気のような煙を鼻に当てたホースから吸うのだが、
なんだか、深い霧の中にいるような感覚であった。
ごった返している薬局で薬をもらい、帰って来た。

3758声 輪になる

2018年02月26日

二月最終週の始まりである。
卒業旅行であろうか、東京駅などでは大学生と思しき集団が、
大きなバッグを抱えて立つ姿が点在している。
若者の集団があるときは、あれ、自然と輪になって話している。
昔からそうで、自分もそうだったな。

3757声 古雛 

2018年02月25日

日中、法華経寺へ梅を見に出かけた。
境内には手入れをされた古木が、つつましく咲いていた。
ちょうど、ひな祭りの時期が近いため、お雛様が展示されていた。
古い雛である。
髪の艶といい、眼光といい、なにか霊的な雰囲気が宿っていた。
夜半になって霙が降り出し、春寒の一日であった。

3756声 穴倉めく

2018年02月24日

旧知の人と会うため、西船橋へ出かけた。
駅前の雑居ビルの一角にある酒場で、杯を傾けた。
その後はさらりと別れ、最寄り駅の立ち飲み屋の暖簾をくぐった。
店内には一つテレビが設置してあり、
オリンピックのカーリング女子の試合を映していた。。
選手たちの輝きを、この魔窟めいた穴倉のような酒場から、
なんとなく眺めていた。

3755声 目の芯

2018年02月23日

昨日、ついに目に来た。
花粉、である。
花粉症の症状がついに出て、目がかゆかった。
今日も雨模様だが、やはり目の芯がかゆい。
私の場合はこれから二ヶ月程度、つらい季節が始まる。
花見の予定を立てつつ乗り切ろう。

3754声 差し替え

2018年02月22日

朝から小雪が降っていた。
積もるほどではなかったが、
曇天でとても寒い一日であった。
俳句雑誌の記事の校正を戻す。
小さなエッセイ欄を全文差し替えた。
エッセイの内容は、俳句に携わっていて、
どんなときが一番楽しいかというものにした。

3753声 食と季節

2018年02月21日

昼食に日本料理屋に寄り、松花堂弁当を食べた。
菜の花のおひたしになどあり、食材、彩ともに春めいていた。
久しく、食で季節を意識することがなかった。
もとい、季節を意識するような食生活をしてこなかった。

3752声 ペンキ画

2018年02月20日

友人から今朝の上毛新聞の記事がメールで送られてきた。
私もよく知っている桐生の銭湯が、
風呂場のペンキ画を塗り直すという記事であった。
ペンキ絵師に注文して、画を塗り直す銭湯は北関東では、
ほんの一握りであろう。
この桐生の銭湯はそれの文化というか、価値というか、
それを見出しているところに、深く共感を覚える。

3751声 順化

2018年02月19日

帰宅して、改めて今回、榛名湖で作ってきた俳句を整理した。
二日間でおよそ七十句作り、「これは」と思う句が、
ほんの一握り、いや、ひとつまみほどしかなかった。
それでも、そのひとつまみは、自然に参入していかないと、
絶対に掴めなかったと思える句である。
いいトレーニングにはなった。
自分の場合、そうやって自然に「順化」させて行かないと、
手ごたえのあるが生まれないことは、経験として分かっている。

3750声 潜在力

2018年02月18日

たっぷり俳句を作り、幸せな疲労を感じつつ下山。
しかし帰路に、本当に手ごたえのある俳句が一句でもあるか、
自身の潜在力を全て引き出したかと考えていると、
大いにやり残したことがあるようにも思う。
帰り際、素竹さんに行きつけの中華料理店に寄って、
冷えた体を四川料理で温めた。
もっとも私は、麦酒をがぶがぶ飲んで、
温めたすぐに体を冷やしてしまったが。

3749声 結氷湖

2018年02月17日

東京駅からスキー客を掻き分け、なんとか新幹線にもぐりこみ、
高崎駅からはバスで一時間弱ほどかけ、やっと榛名湖畔に着いた。
完全結氷した湖面には、カラフルなワカサギ釣りのテント群が見えた。
宿へ荷を降ろし、麦酒で喉を潤してから、早速、氷上へ。
すがすがしい風を吸い込むと、しだいに雑多な日常が薄れ、
自然と一体にとは大げさだが、普段使う脳の一部分が停止し、
別の一部分が動いて行くような感覚になっていく。

3748声 発券

2018年02月16日

帰りに最寄り駅の「みどりの窓口」に寄って、
券売機で明日乗車予定の切符を購入した。
二月のスキーシーズンと重なってか、
東京から新潟方面の新幹線指定席が、ほとんど埋まっていた。
どうにか、すこし予定時間よりはやい新幹線だが、一席取れた。
快速に乗っても、目的地の高崎までは二時間すこしくらいなので、
金銭面を考えれば、新幹線などは除外している。
しかし、これから極寒の榛名湖に行って苦吟しようというのだから、
それまでにかかる負担は最小に抑えておきたかった。
そう予定を立てておきながら、すでに今晩深酒しているのだが…。

3747声 気力

2018年02月15日

あたたかで心地よい日和であった。
今年はじめて、「春」とつけても違和感のない風の心地。
昼、行きつけの定食屋に寄った。
カウンター七、八席くらいだけのこじんまりというか狭小な店。
人気店である。
入り口の暖簾はちぎれている。
弁当もやっているので、昼時にはそれを待つ長い列ができる。
厨房には夫婦が忙しく働いているのだが、
その威勢といい、身のこなしといい、いつもちゃきちゃきしていて、
清々しささえ覚える。
そういう店だから一人客が多く、みな長居せず、さっと平らげてさっと帰る。
一度食べれば誰もが気づくと思う、
米一粒にまで神経が行き届いているというか、
この夫婦の「気力」が定食の隅々にまで行き届いていることを。

3746声 ないものがある

2018年02月14日

「798円です」
と言われて、一瞬、驚いたが、そのまま財布から小銭を出して会計を済ませた。
たしかに、間違っているという実感と自身はあったが、涼しい顔を努めて、
その店の外でレシートを確認した。
缶珈琲にガムに、と上から記載順に確認していく。
やはり、「お菓子148円」という実際には購入していない項目があった。
そうかそうかと、レシートをポケットにしまった。