日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和6年度は4月(ぬ)5月(岡)6月(す)7月(堀)8月(坂)9月(ぬ)10月(岡)11月(す)12月(堀)1月(坂)2月(ぬ)3月(岡)の順です。

1676声 沼田の夕風

2012年08月04日

汗を拭いつつ、炎天のだらだら坂を上がっていた。
駅前からバスに乗ればよかったものを、
市街地まで通じているこの坂をのぼって行こうと思ったのは、やはり。
坂の上から聞こえてくる祭囃子の興奮が、足を動かしめたのであろう。

アロハシャツの背中がびっしょりなった頃、
やっと坂の上にある沼田市街へ着いた。
うろ覚えの記憶を手繰りつつ、吉澤さんの居を目指した。
旧市街と言うのは街の様相を憶えやすいので、見覚えのある看板や商店を伝って、
迷わず到着できた。
すでに、仲間でひしめきあっている座敷に通して頂き、まずは乾杯。
目の前の往来を流れてゆく、祭半纏の若衆や、
雄大な山車を見物しつつの一杯は最高であった。
何より、沼田は夕風が心地好い。

【天候】
終日、快晴。

1675声 祭りの季節

2012年08月03日

祭りの季節である。
住んでいる高崎市も、この土日は、「高崎まつり」で賑わっている。
明日の日曜日には花火があるので、烏川沿いは毎年のこと、
大勢の人出があるのであろう。
ここ数年、夕立に降られることが多かったが、
今年はなんだか大丈夫そうな気がする。

桐生では八木節まつり、沼田では沼田まつりと、
今年の高崎まつりは時期が重なっている。
自分も、高崎からは抜け出して、
この二つの祭りの中に紛れ込んでいると思う。
八木節の音頭がはや、耳の奥で聞こえる言うな気がする。

【天候】
終日、雲多くも晴れ。

1674声 駄目だけれど

2012年08月02日

ここ数日は、晴天なので空がすっきりと夕焼けている。
そんな光景を眺めつつ、
先月号の俳句の雑誌に送った一句を思い浮かべていた。

うつくしと思ふさびしき夕焼かな

勿論、駄目である。
何が、と言うのは言わずもがな、形容詞まみれである。
駄目だけれども、ともかく、今日も夕焼けである。

【天候】
終日、晴天。

1673声 月の水輪

2012年08月01日

夕方になると、どっと疲れが出てしまって、
夕涼みのつもりで本など読み出すと、たちまち睡魔にからめ捕られてしまう。

起きてひとっ風呂浴びて、月夜をほっつき歩きに出掛けた。
青田が並ぶ中に、一枚、水を張っただけの田圃があった。
月光に照らされる水面には、ぱちり、ぱちりと、水の輪が広がっては消えている。
輪の正体は、あめんぼの足跡、である。

闇の中、姿は見えぬが水の輪が月光を反射させてゆくので、それと分かる。
その光景を何とか一句にすべく、しばらく見ていたが、どうにも掴み切れなかった。
明るい場所へ帰って来ると、腕や足には無数の赤い丸。
気付かぬ間に、盛大に蚊に喰われてしまった。

【天候】
終日、酷暑。

1672声 涼しい月

2012年07月31日

夜、風呂へ入る前の数分、外をほっつき歩いている。
今夜は、特に月が涼しげであり、
青田にはいつになく、穏やかな風が吹いていた。

知人の妹さんに、出産の兆しが予定よりも早く現れた。
と言うことを、昨夜電話で聞いた。
満月に近い今日の月を眺めていて、このなまめかしい月光に、
そんな力がありそうにも感じた。

何だか、大人になる程に、夏の終わりに気付くのが早くなっている。
明日から八月だが、すでに、明らかに、
夜の風物からかすかな秋の訪れを感じる。
まだ、日中は苛烈なる炎天だが、夜は。
もっと焦点を絞れば、月は、もう夏の光が薄らいでいる。
その機微が、巧い事一句に捉えられればよいのだが、中々、これが、どうして。

【天候】
終日、猛暑日。

1671声 世代の代表

2012年07月30日

昨今。
巷に虚ろな目が溢れているのは、連日の猛暑に相まって、
このロンドン五輪の影響であろう。

好きな人はもう、色々な種目を網羅すべく、
テレビの中継放送にかじり付くことになる。
この中継放送は当然、ロンドンとの時差があるので、
日中だったり深夜だったり、時間がまちまちである。
スポーツには疎いほうなので、オリンピックと言えどあまり真剣に見る訳でないが、
それでも、自分と同世代の選手が出ている試合は気になる。

例えば、水泳の北島康介選手などはほぼ同世代だが、
2004年のアテネで金メダル、08年の北京でも金メダルを獲得し、
世代の代表選手と言う感があった。
金メダルを獲ったあの日の北島選手。
そして、その報道に沸く市井の印象が、
そのままその年のオリンピックの印象となっている。
2004年の時は東京に住んでいた時期で、
北島選手の実家界隈の商店街の賑わいは、肌で感じたのでよく憶えている。

思えば、出場選手の大変が自分よりも年下となってしまった。
「次」がある選手と、おそらく「次」の期待できない、
つまりは選手生命の最期をかけて臨む選手がいる。
いま、どうしても、後者の方へ感情移入してしまう。

【天候】
終日、猛暑日。

1670声 酔眼花火

2012年07月29日

花火でも観に行こう。
てぇんで出掛けて、往来の即席ビール販売所。
あえなく引っ掛かってしまい、ヘコヘコのコップでビールをガブガブ。
空が暮れはじめるまで、絶えず、ヘコヘコのやつでグビグビ。
花火が上がる頃には、ちと酔眼朦朧としつつも、
浴衣の若者たちに紛れ、どうにか俳句をひとつふたつ作りつつ、観覧していた。

帰りにまた例の即席で、ヘコヘコをゴクゴク。
足取りもヘロヘロになりつつ、どうにか帰って来れた。
そしていま、句帖見て見ると、「花火大会にて」の横に書いてある、
五七五と思しきヘナヘナの文字は、もはや判別不能である。
結句、大いに散財してヘトヘトになっただけであったが、
あとからゆっくり五七五に整えればよいのである。

【天候】
終日、炎天。
夜半に夕立有り。

1669声 変人か俳人

2012年07月28日

夏休みなので、午前中からテレビでアニメを放映している。
それを見終えてから、冷やし中華を食べ、午後からプールにでも出掛けたら。
完全に夏休みの小学生の生活である。

プールへ行って、プールサイドからじっと、もう凝視と言えるほどじっと、
水遊びしている人たちを眺めている人がいたら。
それは、変人か俳人である。

先日。
吟行へ行って、吟行場所の公園に着くと、小川で子供たちが水遊びをしていた。
その周りに、おっさんが二人、私も、その中に加わる。
等間隔で三人のおっさんが、子供たちの水遊びをじっと眺めている。
勿論、句にする為に眺めているのだが、客観的に見れば、そら怖ろしい光景である。
しかし、子供と言うのはそんな視線などもろともせずに、全力で遊べる力が備わっている。

【天候】
終日、苛烈なる炎天。

1668声 戦勝気分

2012年07月27日

どうしても、もう、この、暑さ。
である。
文章の、ほうも、こう、息も絶え絶え。
に、なって、しまう。

土用の丑の日。
と言うことで、スーパーで特売の鰻など買い求めてきた。
それをつまみに、勿論、麦酒で一杯。
冷蔵庫に、先日頂いて来たハートランドビールが四本ばかり入っていたので、
それと、鰻と一緒に買ってきたモルツを飲む。
オリンピックのサッカーとやらで、日本の初戦。
なんでも強豪スペインを破ったとかで、周辺は俄かに沸いていた。
少し前は、女子サッカーのなでしこジャパンが、やはりどこぞの国を破ったとか。
そして、とどめに、高崎商業高校が甲子園の出場を決めたことで、もう沸騰していた。
高崎市に住む、スポーツ観戦好きは、さぞかし酒の美味い日々が続いているのだろう。

鰻と麦酒がなんだか効いていしまって、はや、寝ようと思う。
戦勝国気分に、ほんのすこし、浸りつつ。

【天候】
終日、炎天。
前橋、館林共に37℃超。

1667声 夏の艶

2012年07月26日

大急ぎ大急ぎ。
車を駆って到着したのが、投句締め切りの20分前だった。

座の後の方から、第一声。
「あぁ、いま着いたばかりだからもう少し延ばしましょうか」
締め切り時間を、である。
「いえ、2分で一句作るので、大丈夫です」
などと、いささか危うい決意をして、きっぱり断った。
すると、句の捻出に苦戦しているのか、数名の視線がギロリと刺さってきた。
つまりは、「格好付けずに、もう少し延ばせ」と言うのである。
意を酌んで、机の上のノンアルコールビールも酌みつつ、
「では、3分で一句にさせて頂きます」。

夏衣、白服、浴衣、扇子に団扇に扇風機。
夏は座って句会の参加者を眺めているだけでも、季題が豊富である。
そして、どこか艶っぽい句が多くなるのも、また夏らしさである。

【天候】
終日、炎天。

1666声 ぐたりばたり

2012年07月25日

梅雨の残党がいるのか、ここ数日はすっきりしない天候。
それだからやはり、夏風邪や暑気あたりの人も多い。
すくなくとも、私の周りには。

これが炎天下になると、風邪どころではなく熱中症のおそれもある。
そう言えば、近年は「日射病」なんてめっきり死語めいてきた。

日射病戸板にのせて運ばれぬ  滝沢伊代次

熱中症は「ぐたり」、日射病は掲句のように、「ばたり」と言う印象がある。
そうならないため今宵も、ビタミン、ミネラルの豊富な麦酒を飲むのである。

【天候】
終日、曇ったり晴れたり。

1665声 風鈴のそば

2012年07月24日

まだまだ夏バテで、だらだらしている。
夏風邪の始まりかも知れぬ。
そう思うのは、喉の奥に風邪を引いた時に感じる、
特有の匂いとも味とも判別のつかぬ、ほろ苦い「感覚」がある。

こう言う時は、ひたすら寝転んで本を読んで居たくなる。
時折音色が聞こえる風鈴のそばで、本を読んでいて、
夏バテもなかなか悪くない。
などと、思ったりしている。

【天候】
終日、曇ったり晴れたり。

1664声 茄子の日焼け

2012年07月23日

七月も中旬だと言うのに、早くも夏バテである。
食欲不振だが、日々の雑事をこなす為、のそりのそりと素麺を啜る。
今日、プールの横を通りかかったら、
小さいウォータースライダーをすべってゆく子供たちが見えた。
まだ、真っ黒に日焼けしている子はいなかった。
これが、あと一月も経てばみんな、
茄子の如くに日をはじき返すほど、日焼けしているのだろう。
子供時分はひと夏で、ずいぶんと同級生が大人になった印象がある。
それに出合う、あの二学期の始業式の感動が、ふと思い出される。

【天候】
終日、曇天。

1663声 ペールエール

2012年07月22日

「よしよし、二日酔いの程度も軽い」
起床し、深酒の割にしっぺ返しの少なかったことに安心していたのだが、
それから一日。
どうにもすっきりとせず、夕方から夜に突入し、もう今日が終わろうとしている。
年のせいだろうか、この回復の遅さは。

「ジョウモウ大学」の開校1周年の式典が前橋市の群馬会館であり、
それにお邪魔させていただいた。
うまい酒だったので、ついつい、進んでしまい。
その後は前橋の街中へ沈んでしまった。

最後によった店で飲んだペールエールは美味しかった。
普通のバスペールエールだが、適温で、香りも良く立っていた。
そんなことを、公園の池のほとりにあるベンチに腰掛け、
冷たいサイダーを飲みつつ、思い出していた。

【天候】
終日、梅雨が戻ってきたかのような曇天。

1662声 清廉な句

2012年07月21日

昨日から曇天を引きずっていて、日中でも肌寒かった。
世間的に、夏休みの初日がこの天気では、
子供たちも出鼻をくじかれる思いであろう。

この天気なので、俳句の整理とちょろっと原稿を書いていた。
俳句の雑誌に出す、ほんの短い原稿で、内容は句の鑑賞である。
「川端茅舎」の句を対象にすることに決めた。

草田男に言う「茅舎浄土」の句境を発見した茅舎。
自らの家の庭を耕し種をまき、見事に絢爛な花を咲かせた俳人。
茅舎の句は、その花弁から滴り落ちる露の一粒の如く、清廉である。

【天候】
終日、小雨交じりの曇天。

1661声 夏休み

2012年07月20日

連日の猛暑から一転して、涼しい。
否、もう肌寒いと言えるくらいの気温になってしまった。
今日は終業式らしく、昼過ぎ、
大きな荷物を抱えてながら下校してゆく小学生たちを見た。

明日から夏休み、と来れば。
もう全速力で帰り、玄関にランドセルを放り投げて遊びに行く。
そう言う六年間だったが、いま、そんな光景は見ない。
勿論、下校中の彼等は元気そうなのだが、そこはかとなく、
表情に陰りがあるような気がした。
それはこの曇天のせいだけではあるまい。

朝顔を育てたり、カブト虫を獲ったり、宿題に追われたり。
陰っている暇は無いのである。

【天候】
終日、曇天。
夜半に雨。

1660声 かぶと虫

2012年07月19日

夕涼みにと、裏の田圃へ足を向けた。
今日は随分と夜風が涼やかなので、連日続いている熱帯夜も、
今宵は打ち止めになるだろうと感じた。

足元に吹き来る涼風。
かさこそかさこそ、草々が乾いた音を立てる。
少しばかり集中すると、俳句が一つ二つ出来たが、
「晩夏」の句ばかりできて困った。

それならばそれとして、解釈すればよいのだが、
本当の晩夏ではない、つまり、まやかされた感覚に頼った句なので、
安易には残せない。

そう言えば昨日、今年初のかぶと虫を見た。
メスであったが、丸々と太って、動き方にも活力が漲っていた。
壁にはりついていたところを見ていたら、ぺぺぺっと飛んで行った。
お尻が重たそうで、飛ぶのは不得意なのであろう。
「カツン」と硝子戸に当たって、落下してしまった。
上手いもので、落ちる途中、壁に爪を噛ませて地面に落ちずに済んだ。
じりじりと降り注ぐ日差しを吸うように、白壁に一点、黒く輝いていた。
まだ、夏は始まったばかりである。

【天候】
終日、晴れ。
日没後、暑さ大分ゆるむ。

1659声 正露丸と麦酒

2012年07月18日

思えば、最近極端に米を口にしなくなってしまった。
連日の猛暑がその原因であるが、どうしても、
素麺やら蕎麦やら、「さらさら」と喉越しのよい食べ物を欲してしまう。

そして、夕食頃に麦酒など飲み出すと、もういけない。
そう言う生活をしていると、腹をこわすことは免れがたく、
こっちの方も連日、「さらさら」と言う状況である。

学生時分。
私の友人に、酒好き、それも私に輪をかけたような麦酒好き人間がいた。
麦酒好き人間の大半が負う宿痾がある。
それは特に夏場。
深夜までごくごくがぶがぶ麦酒を飲み、
翌朝も喉が渇いて、ごくごくがぶがぶ水分を摂取する。
そうなるともう、腹の虫が黙っているわきゃあない。
普段は空腹の合図くらいしか声を上げない、寡黙なる腹の虫も、
堪忍袋の緒が切れたのであろう、怒声を発する。
それを、トイレの中にうずくまってなす術もなく、ひたすら聞かねばならぬ。

この宿痾からできることなら逃れたいと思うのが、人の情。
この友人は夏場に酒を飲む場合には決まって、バッグから取り出す。
正露丸の瓶を、である。
つまりは、これから逃れる為に先手を打っておこうと言う考え。
学生で使える金もたかが知れているので、それは糖衣Aではなく、
昔ながらのあの御馴染の匂いのする、丸剤のものであった。
これを彼、4,5粒掌に出すと、麦酒で一気に流しこむ。
用法も容量もへったくれもあったものではない。
しかし、しばらく飲んでいたのでそれなりに効き目があったのかも知れぬ。
夏場の安酒場で麦酒を飲む時に、今でも、
そこはかとなく正露丸の匂いのするような心持になる。

【天候】
猛暑日、激しい夕立があり一時的に雹も降る。