日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和6年度は4月(ぬ)5月(岡)6月(す)7月(堀)8月(坂)9月(ぬ)10月(岡)11月(す)12月(堀)1月(坂)2月(ぬ)3月(岡)の順です。

1819声 仕切り直し

2012年12月28日

正月二日に開催する俳句ingの応募を締めきった。
来年も、ごくこじんまりとした集まりになるが、
それはそれで良いところもある。

いよいよ今年も残すところ、あと三日である。
一日も無駄には出来ぬが、そう思うと、
あきらめに似た気持が生じてくる。
「もう観念した」、と一年に区切りをつけることが、
年を改める事で得られる、大切な「仕切り」ではないだろうか。
仕切り直して、やってみようか。
そうでも思わないと、良いモノはできないもの。

【天候】
朝から曇り、夜小雨。

1818声 水の冬眠

2012年12月27日

近所にある農業用貯水池が結氷していた。
完全に結氷しているのではなく、池の端から湾状に凍っている。
光も風も、もろともに閉じ込めて凍ててゆく。
水もまた冬眠するのだ。
【天候】
終日、冬日和。

1817声 降るような星

2012年12月26日

クリスマスから年末にかけて寒波が到来しており、昨夜の高崎市周辺では、
氷点下5℃近くまで気温が下がったとのこと。
今日も天気が良かったので、放射冷却で更に冷え込むのだろう。
寒い夜は、月や星、そして街の灯の瞬きが、冴えている。
そんなことは俳句をやっていなかったら、別段考えぬこと。
人事の届かぬ星空の美しさにも、気がつかなかったであろう。
良く冷え込んでいる今夜の空は、一輪の月の周りに、
降るような星がちりばめられている。

【天候】
終日、冬晴れ。

1816声 三角帽

2012年12月25日

昨夜、駅から自宅までタクシーに乗った。
時に、クリスマスイヴである。
運転手は年の頃、七十年配のおじいさん。

「どこかにお出掛けでしたか」
「いま、東京から帰って来ました」
「東京は賑やかでしょう」
「都内はどこも、クリスマスのイルミネーションが綺麗でしたよ」
「じゃあ、前橋はちょっと寂しいでしょう」
「前橋はちょっと寂しいですね」
「街に三角の帽子をかぶった人がいませんものねぇ」
「そう言えば、三角の帽子をかぶった人がいませんねぇ」

太宰治の小説「ヴィヨンの妻」に、主人公の大谷がクリスマスの日に、
三角帽やら仮面やらをかぶって、馴染みのバーでドンチャン騒ぎをしている描写がある。
流れる街の灯に、そんな三角帽を思い浮かべていた。

【天候】
終日、冬日和。

1815声 北海道の広さその白さ

2012年12月24日

「クラシックラガー」。
昨晩はもうこればかりジョッキでしこたま飲んで、
はや、夕方には羽田空港へ帰って来た。

「しこたま」
と言う、これが失敗の元。
外は雪がしんしんと降っているので、
なるべくはしご酒にならぬよう、一カ所でぐいぐい飲む。
短時間でしこたま飲めば、如何に麦酒のアルコール度数が低いとは言え、酔う。
幸い、他の酒を飲んでいないので二日酔いは免れたが、
それでも飲み疲れして帰って来た。

北海道は、広い。
空が広いのである。
そして、白い。
大地が白いのである。

【天候】
終日、冬日和。

1814声 地下の札幌

2012年12月23日

北海道へ飛んだ。
強行的な日程であるが、札幌麦酒を飲むべく、新千歳空港へ。
札幌市は地下街が発達している事が、とても新鮮だった。
地下鉄に乗ったり途中下車して歩いたり、飽きずに店をひやかしていた。
豪雪、だと言うのに、女子高生は素足である。
私など、丸々と着ぶくれて、遠目からは熊か人間か、
容易には判断のつかぬほどであると言うのに。

【天候】
札幌市は朝から晴れ、夜半には雪。

1813声 背中の懐炉

2012年12月22日

ひねもす、雨降りの寒い一日だった。
背中に懐炉を貼ったは良いが、取ろうにも取れぬので、
ほとほとまいってしまった。

【天候】
朝より雨のち曇り。
クリスマス寒波により列島各地大雪。

1812声 猫の手

2012年12月22日

また今回も随分と更新を溜めてしまったが、ともかくも、歳晩である。
師走も残すところあろ僅かである。
「猫の手も借りたい」。
と言うが、今時期は猫だって忙しそうである。

【天候】
冬晴れ午後より曇り。

1811声 「帝釈天」と「スカイツリー」

2012年12月21日

毎年、開催している新春の俳句ing。
俳句用語で言うと、「吟行句会」であろうか。

今年の行き先は、柴又の「帝釈天」と「スカイツリー」である。
何だか、吟行に行くのだか、観光に行くのだかごったになっているが、
それもこの俳句ingが「わるのり俳句ing」と言われる所以であろう。

俳句の協会の大きな句会が、毎年、浅草で開催されている。
やはり土地柄、「スカイツリー」を詠んだ句が多く出る。
いささか私見であるが、成功している句が少ないように思えた。
四季の運行とスカイツリーが、どう響き合うか。
それを、お正月に酔っ払いながら確かめに行こうと言うのだから、
随分とバチ当たりな句会に思えて来た。
そこもまぁ、お正月に免じて。

【天候】
晴れのち曇り。

1810声 清浄な光

2012年12月20日

今宵の句会で、年内の句会予定は全て終了。
中々、句会でもないとこの寒空の下、月や星など仰ぐ機会も無い。
月も星も、遠くに見える町の灯も。
凛とした大気の中で、清浄な光に感じた。

思えば、明日は冬至である。
今年のうちに出来ることも、もう限られてきた。
それは、行きたい店が沢山あるが、今年のうちに行ける店となると、
ほんの一握りであろう。
桐生の路地の奥に、手拭いを届けねばならぬ店もある。
そう言う心残りが、榾火の如く、心の隅で燃えている。

【天候】
終日、冬晴れ。

1809声 満たすために

2012年12月19日

昨晩、俳句関連の忘年会に参加した。
句会後に居酒屋へ移り、俳句の話などはあまりせず、
先生を囲んで杯を重ねた。

会が締まってから、一人でラーメン屋の暖簾をくぐる。
と言う、典型的な酔っ払いの泥沼コース。
瓶麦酒と得体の知れぬ雰囲気の豚骨らーめんを啜った。
空腹を満たす為に食べるのではなくて、
何やら治まらぬ自分の心を満たす為に、この一杯が必要なのである。

繁華街から、街の灯が遠くに見える自宅へどうにか無事に辿り着いた。
空にちりばめらた、降るような星。
「きらっ」と。
それが流れ星だったかどうか、朦朧とした酔眼では確かめようもなかった。

【天候】
終日、冬日和。

1808声 漂泊の思ひ

2012年12月18日

地方都市へ行き、寂れた商店街の片隅にある赤提灯の暖簾をくぐる。
二三軒はしごして、ビジネスホテルにでも泊まって翌日にはまた別の都市へ。
そんな一人旅への欲求が、時折、顔を出す。

初めて泊まりがけの一人旅をしたのは、確か中学生の時だった。
高校生の夏休みには、青春十八切符を握りしめ、
暇があれば一人でふらふらと、列車を乗り継いでいた。
そんなことを聞いた、当時の大人に、「自立願望の顕在化の云々」とか何とか。
俄か精神科医のような分析をされたことがあった。

その時、「そんなことじゃない」と、思った事を覚えている。
同時に、芸の無い分析だとも思った。
上手くは説明できないが、芭蕉で言うところの
「そぞろ神の物につきて心をくるはせ、道祖神のまねきにあひて取もの手につかず」
と言った具合であろう。
やはり、芭蕉は芸達者である。

【天候】
終日、北風強くも冬晴れ。

1807声 歳晩句会

2012年12月17日

昨日、都内にある高校の俳句部の句会に参加してきた。
三四ヶ月ぶりだったので、久しぶりの参加であったが、
特に、中学生たちの容姿が少し大人に成長していたことに驚いた。
中高一貫校なので、一番下の部員は中学一年生なのである。

昼過ぎから日没までみっちりと句会し、
二次会は大人たちで軽く忘年会となった。
大人たちと言っても、およそ半分は大学に籍を置く学生たちである。
随分と若いが、俳句のセンスにはこちらが脱帽してしまう。
西日暮里駅周辺は、居酒屋の並ぶこじんまりとした横丁がひとつある。
俳句をやっていなかったら、出会わなかった横丁だと、ふと思った。
高崎の郊外へと帰らねばならぬ身なので三次会は辞して、山手線へ乗車した。

缶麦酒を一缶買って、高崎線の車内へ乗り込むと、ガラガラだった。
なんだか急に心細くなって、バッグからノートを取り出して、
先程の句会でとった俳句を、ひとつひとつ読み返していた。

【天候】
曇りのち一時小雨。

1806声 ささくれ

2012年12月16日

昨日は中華料理店の片隅の席で、
今日は静かな書店の本棚の前で、遭遇した。
喧嘩、にである。

歳晩と言う時節柄、心の余裕が無くなってしまったのであろうか。
中華料理店では親子と思しき夫婦同士が、書店では老夫婦が、
声を押し殺しながらも口論していた。

そう言う場所に居合わすのが嫌なので、中華料理店の場合は、
麻婆豆腐を飲むように食べてそそくさと店を辞してしまった。
外へ出ると、先程の店内の陰鬱な空気が心から一掃され、
冬晴れの凛とした空気が心地好かった。
なんだか、ふんわりした猫でも抱いて、
心のささくれをなめしたいような気もした。

【天候】
終日、冬晴れ。

1805声 手切れ金

2012年12月15日

H氏の名店を探し当てる嗅覚には、恐れ入っている。
「名店」と言っても、このサイトの「名店のしきたり」に出てくるような、
「味のある店」と言う範疇の店である。
そんな名店を、常日頃開拓しているH氏が言っていた事がある。
「初めて入った店で失敗したら、そのお会計は手切れ金だと思うことにしている」

【天候」】
終日、小春日。

1804声 エールの魅力

2012年12月14日

「良い店ないか」
と言われて、真っ先に思い浮かぶのは「麦酒の美味い店」である。
先日もそんな調子で、高崎駅から程近いビアパブに行くことになった。

この店には何度も来ているが、いつも思うのが、女性の一人客が多い、と言う事である。
これが首都圏ならば特筆すべき事柄でもないが、地方都市の駅前なので、余計にそう思う。
この日も、L字カウンターの真ん中あたりで、三十がらみの眼鏡女史が一人で、
ギネスのグラスを傾けていらした。

私は小一時間ほどでその店を辞した。
眼鏡女史はギネスからペールエールをおかわりし、
携帯電話など見る様子も無く、一人の時間を味わっていたようである。

これが所謂「生中」、つまり日本の一般的なピルスナービールならば、
ゆったり飲んでもいられないであろう。
やはり、泡持ちが良くコクのある、エールビールならでは。
つまり、「エールの魅力」である。
エールビールに魅せられた女性の雰囲気は、これまた、魅力がある。

【天候】
終日、冬晴れ。

1803声 ハイブリットキッチン

2012年12月13日

高崎市界隈。
それに限った事でもないと思うが、最近、
其処此処に台湾料理店が増えている。

昼時、わりと賑わっている新手の店に、入ってみた。
作業着を着ている男性が多い店内。
その理由は、メニューの頁を開くとすぐに明らかになった。
安くて量が多いのである。
メインはランチの定食で、ご飯、炒め物、揚げ物にラーメンまでついて、
700円でお釣りがくる。

「台湾ラーメンの酢鳥定食」。
正確にそう言う名前かはおぼろげだが、そう言う定食を注文した。
台湾ラーメンは日本風に、酢鳥は中華風に、
ひっくるめると日本人向けにアレンジされているのだと感じた。
料理てぇのも、文化が混ざってハイブリットなものになると、
面白い発見が沢山ある。
【天候】
終日、冬晴れ。

1802声 ひとすじの風

2012年12月12日

シネマテーク高崎で開催された、「志ねま寄席」へ出掛けた。
立川談志追善公演と言うことで、立川志らく師匠の「黄金餅」を一席。
そして、映画を一本と、たっぷり「堪能」と言うのも追善公演なのでおかしいが、
それでもやっぱり、師匠と弟子の「芸」を堪能してきた。
良い落語、良い芝居、良い映画や良い音楽、そして良い俳句でも。
体感した当初に吹き荒れているその感動が、少し時間を置くと、
自然と気持の中で自然と整理される。
整理されて、気持が静まってから、「すーっ」と吹くひとすじの涼風が、
「心に残る」感動なのだと、思っている。
【天候】
終日、冬晴れ。