日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和8年度は4月(坂)5月(ぬ)6月(岡)7月(す)8月(堀)9月(坂)10月(ぬ)11月(岡)12月(す)1月(堀)2月(坂)3月(ぬ)の順です。

3800声 弱音 

2017年04月03日

新人の時は余裕綽綽に見えてたけど
先輩だって緊張するんだよ。
新い上司、後輩、同僚。関係者、大して関係ない人の挨拶の波。
今週末は疲労困憊必至確実。なのだよ。

3799声 栄螺

2017年04月02日

新人が同じ係に配属になった。
サザエの殻のように表情が硬い。
年も半分ぐらい。酒も飲まないって。
でも、少し話をしていたら、同じ高校だって。
それからちょっとだけ、顔を出した気がした。
旅が好きなんだって。一緒だな。

3798声 卯月

2017年04月01日

毎朝同じ駅で降りる人達。
早く歩くひと、派手なリュックの人
下を向いてる人、空を見てる人
話はしたことないが、ほぼ同じ面子で一年。
春物のコートにしたなとか分かるぐらい。
今日はメンバーがガラッと変わった。
また見知らぬメンバーから、一年が始まる。

3797声 見上げる

2017年03月31日

早朝バイクにまたがるもののお腹がいたい。トイレを我慢しつつ、ふと見上げると朝焼けは稜線のオレンジから広がる青へのグラデーション、とても美しかった。

 

花粉で頭がボーッとするのも3月。東京の仕事をさっさと辞め目的もなくぼんやりと群馬に帰って来たのも3月。3月はあまり元気だった記憶がない。気持ちが塞いで下ばかり見ていた頃は、頭上を咲く桜にも気づかなかった。あるいは視界に入っても何も感じなかった。であるからこの季節、「見上げる」という行為を意識することは、良いことだと思う。

 

ただ。トイレを我慢しているからこそ美しい空もあり、気持ちが塞いでいるからこそ染みる桜もある。そこらへんが、人生は勝ち負けじゃないってことなのかな。おおげさに言えばね。

 

 

「鶴のひとこえは、その日のうちに書くことに意味があります。強要はしませんが」と抜井さんだっけかに言われて「それはそうだと思うけどな」と呟きつつ、今までの僕は毎回夏休みの宿題の様に月の最後の5日くらいでババーと書きなぐっていた。この3月は、「まず無理にそれらしく書こうと思わない。手を抜く」と決めて一応ほぼ日ペースで書くことができた。自分をほめたい。さてさて、4月はすーさんです。「桜の下でビールを飲んだ」はきっと書かれるのではないかと推測します。それじゃ、また。

3796声 赤い車

2017年03月30日

車を変えた。といっても、社内の人から不要になった車をいただいたのだ。今まで乗っていた車は、お世話になっている車屋の中古を買ったものでここ数ヶ月調子が悪かった。エンジンをかけてすぐにふかせると、ブルル・・ルンと力なくエンジンが止まったりした。僕は車もふくめてモノを大事にしない傾向があって、車の不調は自分のせいだった。引き渡しを今日にしてガソリンが空だったので朝、引き渡し後も少しは移動させるだろうなと1,000円だけガソリンを入れながら「ごめんな」とテールライトを撫でた。

 

変わった車は、赤い車である。赤い車に乗るのは初めてだ。なんか照れる。今度は、別れるときに謝らなくてもすむ関係を築けるだろうか。

3795声 映画祭

2017年03月29日

「そこへ行けば、その年1年の主要な映画がぜんぶ観られる映画祭」と僕が勝手に呼んでいる「第31回高崎映画祭」がはじまっている。3年前からは伊参スタジオ映画祭との連携もしていただき、今年も昨年伊参で上映したシナリオ大賞受賞作『とっとこ将太』が4/4(火)4/5(水)に上映、伊参のシナリオコンペで過去大賞をとった外山文治監督による『わさび』『春なれや』『此の岸のこと』が4/4(火)4/6(木)に上映される。『さわび』には、もうじき終わるNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」の芳根京子さんが主演もしており、とにかくもう・・観に来ていただきたいのである。4/4は僕もずっと会場にいる予定。その頃は高崎、桜もきれいだろうな。

 

春はいろいろな変化がある時期だけど、4月から伊参スタジオ映画祭の実行委員長を務めさせていただくこととなった。中之条町で毎年11月に開催されているこの映画祭スタッフになってはや13年(映画祭は今年で第17回)。自覚をもって、誰よりも自分が楽しんでやっていきたい。今は高崎で、11月は中之条で、皆さんにもぜひ良い映画を体験してほしい。

3794声 巨漢

2017年03月28日

小野上温泉の露天に入っていたら、いかにもの体格の男性ふたりがずんかずんかと入ってきた。髪はお湯に濡らしてオールバック、長髪である。これは多分そっち関係の人じゃないだろうかと思っていたら、モンゴルがどうだこうだと話を始めた。間違いない。ふたりはそう、巨漢であった。

 

昨年末に体中にかゆい湿疹ができて、慢性的ななんとなくの不調もあり、多分二十歳の頃以降初めて体質改善を心みた。もとが大分あるけれど、体重はいまのところ7キロくらい落ちた。30代の終わりは、気持ちが体調をつくる、から、体調が気持ちをつくる、の変化ではないかと思ったりもしている。どすこい。

3793声 前前前世

2017年03月27日

たまに血がしたたるような肉を食べたくなるから、

前世はライオンではなかったかと思ってみたり

 

たまにぷりっぷりの貝柱が食べたくなるから、

前前世はラッコではなかったかと思ってみたり

 

たまにパリポリパリと新鮮な人参を食べたくなるから、

前前前世はうさぎではなかったかと思ってみたり

 

たまに熟れ熟れの完熟バナナを食べたくなるから、

遠い祖先は猿ではなかったかと思ってみたり

・・それは多分合っていたり

 

でも毎日のように温かい味噌汁が飲みたくなるから、

前世も前前世も前前前世も、

この日本の片隅でほそぼそと生きてきたのだと思う

3792声 男の夢

2017年03月26日

昨日の続き。山小屋についた。日も落ちかけた寒い野外に出て、低めの屋根から太く透明に垂れ下がるつららを2~3本パキッと折って室内に持ち込む。リュックの中からごそっとウイスキーを取りだす。赤くじんじんと燃える薪ストーブの側の席に座り、ウイスキーオンザつらら。片道6時間をかけて雪原の芳ヶ平を歩きここまでやってきた皆と、乾杯をした。

3791声 芳ヶ平

2017年03月25日

西洋かんじきと言われるスノーシュー。靴に取り付けると、新雪の上でもある程度までしか沈まない。これを履くのはまだ2度目だった。

 

ザシュ、ザシュ、サク、サク、ズボッ、ザシュ、ザシュ

 

田代原の道に車を停車させ、中之条町六合山岳会の方たちに交じって、雪原の芳ヶ平を横断する。率いるのは御年79歳の山本茂さんということもあり、まあ長~~~い間山での暮らしをしてきて「囲炉裏の前でのんびりしている茂先生は、山に入ると変わるぞ」と話しには聞いていたのだが、その行程をなめていた。皆さんとてつもなくタフだった。そしてその元気さにようやく引っ張り上げられる僕は、貧弱だった。

 

ザシュ、ザシュ、サク、サク、ズボッ、ザシュ、ザシュ

 

片道6キロ。標高差はどれくらいだろうか。林の間を、山あいを歩く。雪がない時は笹に覆われていて歩けないという、おにぎり山が最後の難関だった。雪に覆われるとそのような場所でもスノーシューや専用スキーで登っていける。足跡のない先頭を行くことをラッセルと呼ぶらしいが、その時はずっとスクワットをしている気分だった。ただ、振り返ると一面は雪に覆われた雑木林で、白と黒とのコントラストが心に染みる。遠く山々の稜線の間には草津温泉街も見えた。

 

ザシュ、ザシュ、サク、サク、ズボッ、ザシュ、ザシュ

 

おにぎり山の山頂を過ぎて、宿泊場所となる山小屋が適度な大きさに見えた。これがもっと遠くならがっかりしたし、近すぎても感動が薄かったかもしれない。太ももパンパンの僕にはその山小屋が、幸せの黄色いハンカチに見えた。

3790声 新しい靴

2017年03月24日

血のつながっていない妹、のような人がいる。

 

近年話題に出ることも多くなった性同一性障害の彼女との10年を話すには、ここのスペースでは足りない。一時期は自宅にひきこもりのような状況になり「僕がどうにかしないと」などと空回りしていた時期もあったが、自ら電車で1時間ほど離れた町に部屋を借り、僕は何もしないまま、自分に合う職場に巡り合い、今は調理を任されるようになったとのこと。これまでも大変なことがあったし、これからも大変なことはたくさんあると思うが、「環境が変われば、動き続ければ、人生は変わる」と、こちらが学んだりもしている。

 

今夜は友達たちが彼女の誕生日を祝ってくれるのだそうだ。靴がボロボロなことを知っていたので、靴屋に連れていって、高くはないが動きやすそうな靴をプレゼントした。

3789声 中之条アクティビティ

2017年03月23日

中之条町の観光協会さまの依頼で、この1年観光映像撮影を行ってきた。生まれ育った町なので、知ったところは多く、知らない場所は場所で新鮮に見られる。とても記憶に残る仕事になりそうだ。

 

たまに「中之条にいい所ある?」「四万温泉はどの宿がおすすめ?」などの質問を受ける。それに対していくらか答えられはするんだけど、どうしても自分の好みから外れないので「今年の秋は中之条ビエンナーレだから来るといいよ」とか、常にある場所・人をおすすめするほどこの町を熟知はしていなかった。あと一年もすれば、365日おすすめを用意できる・・ようになるかな。

 

今回の撮影で、僕の好みからは全く外れていた体を動かすこと、アクティビティもまた中之条町の魅力だということを知った。夏の四万湖でのカヌー体験、冬のチャツボミゴケ公園でのスノーシュー体験。どちらも撮影しながら僕でもできたのだから、あなたも問題なくできることでしょう。群馬で言うとみなかみなのかな、アクティビティができる場所は数多くあれど、四万ブルーと呼ばれる神秘的な湖と、国天然記念物指定を受けたばかりのチャツボミゴケ公園があるのは中之条町だけ。この映像が今後、観光のお手伝いになることを切に願っている。

 

3788声 味噌

2017年03月22日

「作った味噌もってくかい?」

 

と、山あいにある中之条町山田のお客さんちで言われ「はい」と即答したら、樽ごとくれた。五キロはあるかな。僕は多分人より「ものを頂く率」が高いのだけど、きっといつも物欲しそうな顔をしてるんだろう。

 

味噌を自分で仕込む人を無条件に尊敬します。

3787声 64

2017年03月21日

訳あって、吾妻線に乗って横山秀夫著「64」を読んでいた。横山秀夫さんは僕が関わる「伊参スタジオ映画祭」でシナリオ審査員を務めていただいたこともあり、昨年の映画祭では映画化された『64』を上映、主演の佐藤浩市さんとともにゲスト来場していただき、その日は映画祭にとって忘れがたい一日になった。

 

お読みになった方はわかると思うが、記者担当の刑事・三上が警察内部の利権争いや昭和64年に起きた誘拐殺人「64(ロクヨン)事件」の真っただ中で奮闘するこの小説。面白いのだ。この日は最寄りの中之条駅ではなく隣の市城駅に車を止めていたのだが、高崎からの下り、本から目を上げたら中之条駅だった。乗り過ごした!

 

焦らずに駅員に訳を言い、待合室で上りの電車を待ちながら再び「64」を読む。40分ほどして上りの電車に乗る。小説では、三上が警察内での圧力に屈さずに「匿名にしていた交通事故加害者は大会社の娘。被害者の中年男性は長年の工場勤めで貧しく、週1回の飲み屋での晩酌が唯一の楽しみだったが事故後間もなく死亡した」と記者にまくしたてるシーンだった。思わず活字が滲む。はっと顏を上げれば・・市城を乗り過ごしていた。

 

結局、2度目の折り返しを待つ渋川駅で「64」を完読した。すごいな、横山秀夫さん。

3786声 霊山嵩山

2017年03月20日

墓参りは昨日に済ませ、中之条町霊山嵩山(たけやま)。弥勒穴を巡り、故人との思い出にもちょっとは浸り、山頂にておはぎをほお張る。

 

分けいって、分けいって、春。

3785声 母性

2017年03月19日

堀澤さんとは結局、シンキチ醸造所にやってきた知人女性含め3人で、店仕舞いの後に飲みに出た。行きつけだという夫婦で営む和食屋で、僕は焼きたらこを、堀澤さんはしめ鯖を頼んだように思う。

 

堀澤さんと飲むのはもう何度目かわからないけど、この日の終わりに「岡安さんの母性は良い」みたいなことを言われた気がする。僕は「おかやすさん」と名を呼ばれる事も多いのだけど、どういうわけか間違えて「おかあさん」と呼ばれたことが幾度かある。・・それはともかく、まあ少年時代に男らしさを通学路の脇に落としてしまったような気もするので、あながちお母さんみたいと言われるのは、そうなのかもしれないと自分でも思う。

 

堀澤さんがどんな流れでそう言ったのかはよく覚えていない。自分としてはもっと男らしくなりたいんだけど、言われてほっとした気もする。堀澤さん、長生きしてね。

3784声 シンキチ醸造所

2017年03月18日

小さなドアを「こんちは」と開くと、店やカウンターには人がいない。奥の硝子窓から見える隣室の銀色のおっきなタンクの側で、堀澤さんが何やら作業をしていた。硝子窓をノックして、「飲めますか?」と聞く。カウンターに座った。

 

シンキチ醸造所はオープンしてからいくらか経つが、いよいよ、めっかった群馬の(ほ)、堀澤宏之さんによるクラフトビールの醸造・販売が始まった。僕は少し出遅れて、その遅れを取り返すかのように「長屋エール」「金柑Jr.」「ストリッパー」と立て続けに飲んだ。華やかさの驚きが優先されそうなクラフトビールにあって、堀澤さんが目指すのは和食にも合う食中酒としてのビールなので、なるほど「長屋エール」なんかはアテをつまみつついつまでも飲んでいられるような親しさを感じた。

 

客がいなかったのは僕が入るまでで、予約の客、常連さん、そしていわゆる「クラフトビールマニア」みたいな人で店は賑やかになった。聞けば「高崎に新しいビールができた」と聞き、宇都宮から電車に揺られやって来たそうだ。そんな期待にも応えられるようなビール、そして相変わらずの食べ合わせの妙な料理だった。みなさんもぜひ、足を運んでいただきたい。

 

シンキチ醸造所

 

3783声 自分の言葉

2017年03月17日

「ごごラジ」という番組の金曜パーソナリティーの高橋久美子さんという詩人/作詞家/エッセイストのファンだ。彼女はチャットモンチーというバンドのドラム・作詞担当だったけど、人気絶頂の中で「自分のゆく道はバンドではない」と一線を退いてしまった。・・などという経緯は知らなかったのだけれど(チャットモンチーも「シャングリラ」しか知らなかった)、車での移動中にラジオから聞こえる彼女の話が面白くて、今ではすっかりファンになってしまった。

 

彼女のエッセイ本「思いつつ、嘆きつつ、走りつつ」も面白かった。自分が思ったこと、経験したことをこれほどわくわく語れる人は稀なのではないかと思う。春の様子を書いた一遍には「ホームレスのおじさんなんて、春の間は毎日お花見だよ。あのツーショットは生命力の象徴だよなあ」という一文がある。目線の温かさ、言葉の妙を感じる。対して僕は、借り物じゃない自分の言葉で世界を語っているだろうか・・・

 

初めてやったんだけど、今日「ごごラジ」を聞いていてとっさにツイッターで  をつけて投稿したら、その30秒後には僕の投稿が番組内で読まれていた。高橋久美子さんも「ありがとうございます」って言った!(確か)。そんな些細なことに胸が躍ってしまう37歳であった。