日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和6年度は4月(ぬ)5月(岡)6月(す)7月(堀)8月(坂)9月(ぬ)10月(岡)11月(す)12月(堀)1月(坂)2月(ぬ)3月(岡)の順です。

1094声 再生の鍵

2010年12月29日

「群馬学」の関連で、先生にお願いしてあった銭湯資料が、先程届いた。
今、封筒を開封し、目を通している。

資料には昭和43年度の、群馬県内の公衆浴場、所謂、銭湯の数が載っている。
現在、正確な資料として残っているものは、昭和43年のものが最古らしい。
そこには、私の予想を遥かに超えた数字が記載されていた。

255軒。
これが、その当時の県内における、銭湯の数。
現在における業界の斜陽が、嘘のよう。
こんなにも、街に銭湯が溢れていたである。
その10年後の、昭和53年。
144軒。
数を減らす事、111軒。
数字の並びは良いが、業界の状況としては良くない。
おそらく、一般的に言われる様に、家風呂の普及に起因する、衰退であろう。
そのまた10年後の、昭和63年。
78軒。
数を減らす事、およそ半数に及ぶ、66軒。
衰退に歯止めが掛からず、年に5、6軒のペースで減っている。
そして、およそ23年後の現在では、27軒を数えるのみとなってしまった。

先日、新聞で、ミニシアターの「恵比寿ガーデンシネマ」が、
2011年1月28日をもって閉館する。
と言うニュースを読んだ。
同映画館は、1993年に都内一等地である恵比寿にオープンした。
前後して国内で話題となっていた、ミニシアターブームを牽引した映画館である。
17年の歴史に幕が降りてしまう。

昨今の、ミニシアターの状況と、伝統的な銭湯の状況。
ってのは、非常に似ている部分がある。
郊外大型店の出現と、若い世代の離れ。
とすれば、ミニシアターの再生が、銭湯再生の鍵でもある。
再生がよいか、新生がよいか。
未だ、具体像を得ないが、そう感じている。

【天候】
終日、冬晴れの一日。
東北地方などでは、数日前から豪雪。
よって、朝晩の冷え込みが、日毎に厳しくなってきている。

1093声 年末駘蕩

2010年12月28日

今日は御用納め。
今日で仕事納め、と言う勤め人の方も多いだろう。

昼、行きつけの食堂でラーメンを啜っていると、食い納め。
と言わんばかりに、隣の工業団地に勤める人たちが、押し寄せて来た。
どかどか来て、定食をがつがつ食って、さっさと出て行く。
誠に、爽快な食いっぷりである。

その一団が去って行った、午後一時近く。
今度は、既に年末休暇に入っているのか、
人生の休暇を謳歌しているのか。
暇な御仁たちが、ぽつりぽつりと来る。

角に座っている人の注文は、まず瓶麦酒と餃子。
斜向かいに座っている人は、モツ煮と温めに燗つけた酒。

「おばちゃん、じゃあ、俺もお銚子一本」
これ以上居たら、その言葉が口からこぼれそうだったので、
早々に、年末の挨拶を済まして、店を辞した。

年末の街中は、なんだか駘蕩とした空気が漂っている気がする。
元気が無いだけなのか、市井から年末感が薄れているのか。
「嵐の前の静けさ」
ではないと、良いのだが。

そう言えば。
先日、新聞社の方から得た情報によると、最近、
県内の銭湯がまた一軒、暖簾を下ろしてしまったとの事。
これで、県内に残る銭湯銭湯の数は、27軒となってしまった。
来年も、自分にできる事を、やってみるつもりである。

【天候】
終日、冬晴れの一日。

1092声 賀状配達員

2010年12月27日

街中のあちらこちらで見受けられるのは、冬休みの高校生たち。
賀状配達員の、アルバイトである。
寒風に頬を染めながら、立ち漕ぎで自転車を駆って行く。

年末の風物詩となっている光景だが、この光景を見ると、懐かしい。
と言うのは、私も学生時分に経験があるから。
我が幾多のアルバイト経験の中で、愉しく打ち込めた仕事であった。
ある年の正月。
年末に降った雪が日陰に残っており、非常に危険な路面状況で、
年賀状を配達した事もあった。
その時分。
私は大学生だったので、自転車で無く原付。
あの郵便局の、白と赤色のスーパーカブで配達していた。
派手に滑ってこけて、傷だらけになりながら、配り終えたのも、
今となっては、いい思い出である。
思い出した年賀状配達にまつわる俳句では、こんな句がある。

賀状完配われ日輪に相対す

作者は、磯貝碧蹄館。
郵便局に勤めていた俳人として、有名である。
私には、先に記したアルバイト経験が、この句に強い共感を呼ぶ。
未だ明けきらぬ元旦の朝。
配達員たちは郵便局を、一斉に出発する。
地元の新聞記者や、偉い局員などがたくフラッシュの中、
白い息を棚引かせて、街へと漕ぎ出す。
籠に目一杯詰まっている年賀状を、一心不乱に配って行く。
そして、すっかり陽が昇り切った空の下、心地よい疲労感と共に、
郵便局への帰路を行く。
自転車には、空になった籠。
すっきりと晴れ渡った空には、元旦の日輪。

現在巷で、鼻水垂らしながら自転車を漕いでいる、
アルバイト配達員たちも、感じるのであろう。
賀状完配した時の、充実感と、自分で稼い給料の、満足感を。

【天候】
終日、冬晴れの一日。

1091声 2010年総まとめ

2010年12月26日

来週は、最終週である。
つまり、年の瀬で、土曜日が2010年の大晦日。
新聞やテレビでは、今年一年を振り返る特集が組まれ、
気の早い街中には、松飾りが出され始めている。

翻って、私自身の今年一年。
この、日刊「鶴のひとこえ」のバックナンバーを見返すと、
大掴みに、一年の記憶が甦って来る。

まず、今年の初め。
毎年の如く、俳句ingにも行っていたのだが、
特筆すべきは、「群馬伝統銭湯大全」の刊行であろう。
あらゆる面で、個人的に瀬戸際状態での、製作及び出版となった。
しかし、全国津々浦々の銭湯フリークの方々や、銭湯経営者の方。
様々な人に購入して頂く機会に恵まれ、振り返ると、とても感慨深い。

続いて、中頃。
群馬の郷土誌「上州風」に、銭湯にまつわる特集を書かせてもらった。
高崎市のフリーペーパー「ちいきしんぶん」紙上で、
「ぐんま源泉一軒宿」(上毛新聞社)の著者、小暮淳さんと、
「湯」の対談をした。
小暮さんは最近、「群馬の小さな温泉」と言う新刊を出版された。
細かに記して行くと、膨大なので省くが、
何かと、銭湯関連の動きが多かった。
初旬に本を出したので、全てその関連である。

そして、後半。
夏ごろから、更に俳句に深くのめり込んで行った。
毎日句を作り、句会に参加し、たまたま「湯河原文学賞」を知り、
俳句の部に応募してみたりした。
たまたま、句が入選して湯河原の地へ行く事も出来た。
「第6回銭湯ナイト」では、有り難い事に本を販売させて頂く機会を得た。

年間を通して、群馬県に留まらず、隣県の銭湯へ出掛けていた。
群馬県立女子大学の「群馬学リサーチフェロー」になったので、
その関連でも、銭湯の事を、図書館などで調べていたり。
ともかく、何かと、生活の中で銭湯カテゴリーの締める割合が多い。
そう言えば、その合間を縫って、人前で、ギターや三味線を弾く機会も得た。

以上。
極私的ではあるが、2010年を振り返ってみた。
良い事ばかりを羅列した。
悪い事も沢山あった、が、大半が忘れてしまった。
そう言えば、夏祭りで財布を落としたのは、いささか、滅入ってしまった。
今年のとどめに、来週28日に新聞一紙に掲載予定がある。
それも、銭湯関連。
俳句の事がちょこっと、載るかどうかは分からないが、
始まりと終わりが、銭湯と俳句であった。
来年も、また、何か面白い事ができたら。
いや、必ずやると言う、心積もり。

【天候】
終日、冬日和。
晴れて、冷え込みが強い。

1090声 一昨日の一行事

2010年12月25日

午後11時前後であったか。
最終的に缶ビールを買って帰ろうと、コンビニへ寄った。
ビールを買って、おでんを買って、そう言えば。
思いついて、クリスマスケーキ。
ではないにしろ、何か、ケーキを買って行こうと、再度、陳列棚。

右へ行けど、左へ行けど、一向に見当たらない。
棚は空。
つまりは、売れきれ後に補充はなし。
それどころか、店員がレジ横に陳列し始めたのは、
ミニ鏡餅。
仕様が無いので、何故か、気づけば杏仁豆腐を買っていた。

クリスマス。
とて。
一昨日の一行事。

【天候】
終日、冬日和。

1089声 イブ

2010年12月24日

クリススマスイブ。
と言う事で、街はもう、一色になっている。
ラジオからは絶え間なく、クリスマスソングが流れ続けている。
幾時代を彩って来た、名曲ぞろいである。

私はと言うと、どうも、朝から胃の調子が悪い。
イブ不快感。

【天候】
終日、冬晴れの一日。
午前中、榛名山上空に在った雪雲。
午後のは、高崎市街の上空に流れ落ち、時折、風花を舞わせた。

1088声 深谷で梯子湯

2010年12月23日

今日は、天皇誕生日で祝日。
明日にクリスマスイブを控えた街は、何だか忙しい。
などと、時節柄書きたいところだが、私の住む高崎市郊外には、
クリスマスの足音があまり感じられない。

午前中は家に籠って、賀状書き。
その賀状を持って、午後、出掛けた先は、銭湯。
今回は、隣県埼玉は深谷市。
今月初めに、本庄市の「藤の湯」へ行って来たので、
更に上って行こう、と言う魂胆である。

深谷市街地は、一度歩き回って、
「姫の湯」でひと風呂浴びて来た事がある。
現在、市街に残っている2軒の銭湯の場所も、
その時に確認済みなので、話が早い。

駅から出て、まずは「中屋湯」へ入る。
その次は梯子湯をして、「姫の湯」へも入る。
両銭湯とも、快く許可頂いて、良い写真が沢山撮れた。
最近は、どう言う訳か熱い湯が好きになってしまい、
浴槽も、もっぱら熱い深槽に入っている。
浴槽から上がると、肩から下が、くっきりと赤くなっている。
「赤線地帯」
と言う親父ギャグを聞いてくれる人も無く、風呂から上がった。

中屋湯の大将からは、深谷銭湯史を伺った。
私の様な銭湯フリークが、近年、しばしば訪れているらしい。
今日も、私の前には、神奈川県川崎市の方が一人。
数ヶ月前に、群馬県からは、伊勢崎市の方が来た、との事。
銭湯フリークの足跡に出くわし、そこはかとない親近感を覚えた。
良い銭湯が在る。
ってだけで、その街を好きになる理由が、十分に足りる。

【天候】
終日、概ね穏やかな冬晴れの一日。
午前中、数分通り雨が有り、午後は風強し。

1087声 50年で3番目の冬至唐茄子

2010年12月22日

「ここ50年で3番目に暖かい日」
と言う、微妙な気象状態を記録した、今年の冬至。
確かに、師走としては、温かな一日だった。

冬至って事で、慣習に則り、今宵は柚子湯に浸かって、南瓜を食う。
と言う事を、朝から決めていた。
したがって、勤めが終わったら真っ直ぐに家へ帰った。
そして、近所のスーパーへ行き、柚子と唐茄子の煮物を買って来た。
本末転倒であるが、ついつい、缶麦酒を買ってしまった。

何故、本末転倒になるか。
酒場から遠ざかる為、友人の誘いを断り、独りで出掛ける誘惑にも耐え、
冬籠りを決め込んでいたから、なのである。
折角、酒場から遠ざかったのだから、酒は近づけたくなかった。

さて、柚子湯。
上がってから、唐茄子の煮物で麦酒を一杯。
一杯が二杯、二杯が三杯になり、やがて惨敗。
冷蔵庫の奥から、ウイスキーの瓶を引っ張り出している始末。

酔い覚ましの為に、窓を開ける。
星が見えるので、明日はおそらく晴れるだろう。
遠くの夜空に、群馬県庁の屋上、赤い光の明滅が見える。
吹き来る夜風が、生温い。
50年で3番目くらいの、温かさか。

【天候】
朝は昨夜の雨が降り残っていた。
その後、天気は回復し、晴天となる。
6時に起床したが、未だ夜かと思う位に真っ暗だった。

1086声 目刺しと焼酎

2010年12月21日

昨日の記事である、「大衆的を、楽しむ」について、
「なかなか、良いではないか」と言う旨の意見を、幾人かから頂戴した。

おそらく、大衆的な食事に縁が深い人なのだろう。
その中の一人には、一寸、驚いた。
「目刺しってのは、メザシって魚じゃないんですか」
「じゃあ、煮干しはニボシって魚で、刺身はサシミって魚がいるってぇのかい」
とは、言わなかったが、
「目刺しは大体、鰯ですよ」
と、答えておくに、留めた。

この問答から推察するに、現代の若者。
特に、学生諸氏に至っては、目刺しってのが、何の魚か。
その大半が、答えられないのではないのではないか。
おそらく、目刺しが食卓に並ぶ事なんて、ないだろうから。
その伝で言うと、シラスも、ちりめんじゃこも、
なんの魚か分からないのではなかろうか。

そんな事を他人事のように書いている私も、実は未だ辛うじて20代。
学生自分の食卓を振り返るに、確かに、目刺しなんて並んだ事がなかった。
常食として食べていたのは、大学生時分。
金銭に困窮して、買える食材が目刺し位しかなかったので、
選択の余地無く食べていた。
幼き頃の記憶として、親戚である、芸者上りの無頼派なお婆ちゃんが、
目刺しで焼酎を飲んでいたっけなぁ、昼間っから。

【天候】
朝は晴れ。
午後から下り坂で、夕方より雨。

1085声 大衆的を、楽しむ

2010年12月20日

先日、一寸、暇な時間を持て余して、夕方。
庭先に七輪を出して炭に火をおこし、
夕餉のおかずにする為、目刺しを焼いてみた。

「目刺し」ってぇと、昭和の丸テーブルの朝食。
と言う景と共に、安価なおかずの代表選手と言う印象がある。
近所のスーパーで購入したのだが、一パックに、4匹刺しが3つ。
計12匹で、およそ200円、一匹およそ17円。
現代でも、安価なおかずの代表選手入りは、間違いないだろう。

木がらしや目刺にのこる海のいろ    芥川龍之介

と言う状況を気取りつつ、団扇で仰ぎながら、丹念に焼いた。
銭湯も、大衆食堂もそうであるが、目刺しを、「あえて」、
趣向として食べるのだから、楽しみながら、焼かねばならぬ。
しかし、趣向として食べられる位の余裕も無いのだが、それはさておき。
既に、瓶麦酒は冷蔵庫に冷やしてあるので、準備にぬかりは無い。

いささか、はらわたが出てしまったが、ほどよく、こんがりと焼けた。
これと、良く冷えた麦酒で、暮れなずむ空を眺めながら、一杯。

失せてゆく目刺のにがみ酒ふくむ    高浜虚子

大衆的って事が、必ずしも品格を落としめるとは限らない。
大衆的な物にこそ、心の深くに響く、味わいがある。

【天候】
終日、穏やかな冬晴れの一日。
冬型の気圧配置が緩み、11月中旬の暖かさ。
雨の降る前の日は、決まって暖かく、飛行機雲が見える。

1084声 四角を十字に

2010年12月19日

今日は、日曜日。
風も雲も無く、澄み渡った冬天が心地好い。
出掛ける予定も無いので、この期に、年賀状を書こう。
と思い立ち、朝からペンを握り、机の前に着いた。
着いたまでは良いのだが、書いた年賀状の無いまま、
午後になってしまった。

プリンターを押入れから引っ張り出して、
パソコンにセットして、トナーを交換して、
葉書作成ソフトをダウンロードして。
何かと、葉書裏に干支を印刷するまでの工程が煩雑で、
一向に、宛名書きまで進まない。

昼飯を食べ終え、そのまま、銭湯へ出掛けてしまった。
銭湯へ到着し、開店時間の5時手前には、
一番湯を待つ湯客たちが10名ほど。
その中で、私が一番である。
暖簾が掛かって、飛び込んで、番台。
湯銭を渡す際、女将さんに写真撮影の許可を伺うと、
即座かつ強固に、NGとの事。
そのまま、お湯だけ頂いて、帰って来た。

群馬県はもとより、隣県の銭湯を回って来たが、
ここまで完全撮影禁止と言うところは初めてである。
おそらく、何か理由あっての事だろう。
しかし、その「何か」は私の知り得る所でもないし、
また、そこまでの詮索は無用である。
銭湯の方、またはそこを利用している方に、
不快感を与える場所へ踏み込むのは、
銭湯愛好者の道理に反する。

とは言っても、非常に残念である。
歴史ある、そして、個性的な銭湯だけに、尚更。
高速道路を使って、片道一時間半。
いやしかしまぁ、ちと残念だな。
何がって、ありゃ初めて見る、湯船の形。
四角い湯船の中を十字に切って、
四つに分かれていたなぁ。

【天候】
終日、雲も風も無く、穏やかな冬晴れの一日。

1083声 伝統の伝統たる価値

2010年12月18日

今日は、高崎市の「浅草湯」へ行って来た。
と、言っても、入浴ではなく、取材を受けた。

浅草湯は、何度も伺った事がある、大好きな銭湯。
小一時間ほど、ご主人と歓談させて頂いて、
貴重な話が多数、伺えた。
浅草湯の創業は大正10年だが、それ以前から、
別の屋号で銭湯業を営んでいた事。
脱衣場にある大きくて立派な鏡は、英国製で、戦時中は、
ご主人自ら疎開に出していた事など。
戦前の話が、一月前の話の如く、飛び出してくる。
これもやはり、伝統ある銭湯ならではの事。
現在の高崎市街地で、戦前の高崎を語れる現役の商売人が、
果たして今、幾人いるだろうか。
そんな事を思いつつ、ご主人の話に耳を傾けていた。
そして、改めて、市井における伝統の伝統たる価値を認識した。

しかし、カメラを前にして、どうも拙い表情しか作れなかったな。
と、若干後悔しつつ、女将さんに貰ったチョコレートと瓶牛乳で、
一杯やっている。

【天候】
終日、穏やかな冬晴れの一日。

1082声 年忘れの必要性

2010年12月17日

さて、師走もいよいよ後半戦。
平成22年の佳境である。

短い一日を、おろおろとしながら送っている人も多い筈。
私も、その一人で、兎に角、おろおろしているばかりで、
一日が暮れて行く。

この「おろおろ」の主たる原因は、「今年中に」、
と言う制約が迫って来ている事による。
今年中に片づけねばならぬ仕事が、次々に降って湧いてくる。
では、現在時刻午前零時手前の、我が部屋を見渡して、
降って湧いてくる仕事の声を聞いてみる。

一枚も済んでいない、年賀状書き。
「めっかった群馬」掲載用の、溜まっている原稿書き。
自らに課してある、一日五句の発句。
全体的に散らかり放題の、部屋掃除。
売り掛けてある本の在庫集計及び、請求書の作成。

何だか、自らのおろおろ加減に拍車がかかり、
気持まで滅入ってきた。
この中の幾つかは、忘れる事にしよう。
「人間は忘れる事が出来るから、生きて行ける」
ってな教訓は、巷の三文哲学書にも、よく書いてある。
その伝で言えば、忘れる事が出来るから、年が越せる。
「年忘れ」
とは、よく言ったものである。

【天候】
終日、穏やかな冬晴れの一日。
群馬県平野部でも、夜半には氷点下の冷え込み。

1081声 季題の声

2010年12月16日

この文章を書いている今日は、金曜日。
本来の更新日は、木曜日。
つまり、一日更新しなかった。

ありがたいもので、一日更新しないと、心配してくださる方々が、居る。
そして、様々な憶測が飛び交う。
もしや、「酔い潰れ」。
はたまた、「行き倒れ」。
いや、あるいは、「失踪」。
そんなに悪いだろうか、日頃の私の素行は。

昨夜は、定例の句会だったのである。
いつもの事、素竹先生宅に伺っていたので、
更新作業に至る時間がなかった。
先生曰く。
「ふっと、張っている気持ちを、ゆるめてみる。そう言う時に、季題の声が聞こえてくる」
季題の声。
に、気付けただろうか。
と、ゆるみっぱなしの脳で、考えている。

【天候】
雲多くも、晴れ。
冬型の気圧配置が強まり、冷え込みが、強い。

1079声 今朝の行き倒れ

2010年12月14日

今朝、曇天の薄暗い街中で、行き倒れている人を見た。
現場は、割と駅に近い、高崎の市街地。

車に乗って信号待ちをしていると、何やら前方に小さな人だかり。
救急車が来て、救急隊員が二人降りて来た。
救急車のサイレンにつられ、近所の和菓子屋の女将さんや、
中華料理店の親父さん。
近所の商店の人たちが店先へ出てきて、皆、
心配気な表情でそわそわしている。

倒れている人は、初老と思しき男性。
傍らにあるキャリーバッグを見るところ、
行旅死亡人ではない様であるが、詳しい事は分からない。
信号は青。
バックミラーで確認したところ、当人、担架に乗せられ、
救急車で搬送されて行った模様。
昨夜から垂れこめていた暑い雲間から、
所々、光の真っ直ぐな束が、降り注ぎ始めていた。

【天候】
朝より小雨まじりの曇天。
昼ごろより晴れ間がのぞき、夕方にはすっきりと晴れる。

1077声 12月12日晴れ

2010年12月12日

きもち風が吹いているが、師走半ばとしては暖かな日である。
昼飯を食べ終え、珈琲を飲みながら、机に肘をついてまどろんでいる。
私が常用する珈琲は、インスタントでなく、生意気にもドリップ式。
量販店で最下等の銘柄の物なので、満足はできない。
しかし、それなりに風味と薫りがあるので、よし、としている。

今日は、仲間の有志が中之条へ、かや刈りへ行っている。
私はと言えば、どうも体調が芳しくしないので、今日は冬籠りを決め込んだ。
午前中は、ずいぶんと久しぶりになる、洗車をした。
やたらと、図体ばかりデカイ車なので、洗うのに骨が折れる。

思えば、東京に住んでいる時分は、
2シーターのオープンカーを買おうと思っていた。
狭い道で小回りが利き、郊外へ行く時はオープンし、風を感じて颯爽と走る。
そう言う構想を思い描いていたが、群馬に帰郷する機が訪れてしまった。
それからは、SUV型の車を買って、のんびりと釣りでもしながら暮らそうと、
考える様になった。
そして、SUV型の車は買ったが、釣りなどへは一度も行かず、
狭い路地にある銭湯へ通っている始末。
「だったら、オープンカーの方が良かったか」
いや、自分が髪をなびかせながら、オープンカーを運転している姿を、
思い浮かべれば、答えは、否、である。
だから、洗うのが億劫でも仕様が無いと、心をなだめている。

土地柄、午後は赤城おろしが強く吹く。
それが、いつも決まって午後なのだ。
家の裏の畑をトラクターで耕しているおやっさんも、
午前中で切り上げて帰ったようだ。
やはり、農業に携わる者。
土地の性質を、熟知している。
このおやっさんの、おそらく父親であろう80年配のお爺さんが、
いつも耕しに来ていたが、昨年からは姿が見えない。
庭木がみな、風にあおられて、激しく揺れている。
さて、もう一杯。
台所で珈琲を注いで来るとしよう。

【天候】
若干風が強いが、終日、穏やかな冬晴れの一日。

1076声 「暑」よりも「冷」

2010年12月11日

昨日から高崎市の榛名湖では、
今月の26日まで開催される、「榛名湖イルミネーションフェスタ2010」が始まった。
と言う記事が、今朝の新聞各紙の紙面で、大きく紹介されていた。

私も二年前に観に行って、夜の湖面を彩る、
幻想的な光の競演に楽しんだ。
榛名湖畔は、闇が深く空気が冴えているので、
イルミネーションの光も街中と違って、鮮明に見える。
鮮明に見えるのだが、見ているのが、少々つらいかった。
途轍もなく寒かったから、である。

観に行かれる読者諸氏は、是非、完全防寒で行かれたし。
それだけ寒いって事は、勿論、峠道の路面凍結などが懸念される。

そう言えば、先だって、「今年の漢字」が京都の清水寺で発表された。
寛主が大きな筆を両手で振るって書きだした一字は、「暑」。
確かに、今年は猛暑を通り越して酷暑つづきの、暑い夏だった。
「喉元過ぎれば熱さ忘れる」
って諺の通り、あんなに暑かった夏も、師走となった今では印象が薄く感じる。
「冷え込む経済情勢」だとか、「就職氷河期を超えた」とか。
そう言う類の「冷」を連想させる見出しを、
毎日のように目にしてきた影響も、あるだろう。

【天候】
終日、穏やかな冬晴れの一日。

1075声 海市蜃楼の酔街

2010年12月10日

ここ数日、すこぶる天気が好い。
しかし、私の体調はすこぶる悪い。
そう言う時に飲む酒は、すこぶる不味い。
不味いけれど、海市蜃楼の酔街へ行かねばならぬ。
ちゅうのが、浮世の義理っちゅうやつ。
テレビニュースでは、今、
すこぶる好天と言う、明日の天気予報が出ている。

【天候】
終日、穏やかな冬晴れの一日。