日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和6年度は4月(ぬ)5月(岡)6月(す)7月(堀)8月(坂)9月(ぬ)10月(岡)11月(す)12月(堀)1月(坂)2月(ぬ)3月(岡)の順です。

1627声 こころの夏

2012年06月16日

朝から雨。
梅雨寒の一日である。
丁度、秋から冬へ入る、例えば十月第一週の頃の空気と良く似ている。
空気感こそ似ているが、大地が内包している「気」が違う。
花や鳥、そして人のこころが。
夏を待っている、夏になろうとしている、はや夏になっている。
とでも言おうか。
ともかく、寝過ぎて頭が痛い。

【天候】
終日、小雨。

1626声 蛍の明滅

2012年06月15日

グラスにピルスナー麦酒を半分、黒麦酒を半分。
所謂、「ハーフアンドハーフ」にして、最近の晩酌を楽しんでいる。
飲みやすいので、進む。
進んでも、あまりいいことがない。
椅子に座って、酔眼朦朧としつつ虚空を眺めていると、昨夜のあの。
あの蛍のか細い光の明滅が、思い出される。
兎も角もいま、よく冷えた麦酒が飲みたい。

【天候】
終日、梅雨曇り。

1625声 蛍火

2012年06月14日

急遽、ほたる句会に参加する事になった。
「蛍」なので当然、日没からの数時間。
待ち合わせ場所のラーメン屋へ到着すると、空のジョッキを前に、
すでに俳句の先生は赤い顔をしていた。

吟行場所は、前橋市の田口町にある「ホタルの里」。
ここ数年、毎年この場所に訪れて俳句を作っているが、
今年はどう言う訳か、蛍の数が多い。
気温がそれほど高くないせいか、その光はとても弱々しかった。

ゆるやかな人波の中で、闇にゆらめく蛍火を眺める。
目の前の光景。
どんなに適当な言葉を探しても、
あの幽玄な蛍火の美しさを上手く表現し得なかった。
蛍の声が光ならば、ずいぶんとまぁ、おしゃべりな。

【天候】
終日、梅雨曇り。

1624声 金属片

2012年06月13日

「ガリッ」
口腔内に突然違和感が走ったので、驚いて口の動きを止めた。
噛んでいたガムをびろーんと取り出し、眼を凝らしてみると、あった。
ガムにくっついている、小さな金属片。
歯に詰めていた金属が、取れてしまったのである。

丁度、かかりつけの歯医者のカードを持っていたので、夕方。
一番遅い時間に予約を滑り込ませて、診察を受けて来た。
その治療、と言うか施術はごく簡単な方法だった。
取れた金属片を元の場所へ、薬を付けてもう一度くっつける。
丁度、セメダインでプラモデルの部品をくっつけるように。

終わって、待合室で会計を待っていると、時間帯のせいであろうが、
女子高校生が三人もいた。
この歯科医院は自分の通っていた高校の近くなので、
自分も学校帰りに寄った思い出がある。
良く見れば、女子高生の一人は、自分の通っていた高校の制服を着ている。
あれからおよそ十五年の時を経て、歯の詰め物が取れて診察に来ている自分が、
ひどく情けなく思えて来た。
高校時分の私が、カランコロンとドアを開けて入ってきそうな妄想に捉われていると、
受付から少し無愛想に私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

【天候】
終日、曇天で涼しい。

1623声 紫陽花の月日

2012年06月12日

群馬県平野部では、紫陽花が綺麗に咲き始めた。
紫陽花にまつわる話で思い浮かぶのは、シーボルトである。
シーボルトは紫陽花の学名を、「Hydrangea otaksa」と名づけ、帰国後に紹介した。
この「otaksa(オタクサ)」は、シーボルトが妻とした日本女性「楠本滝」の、
「お滝さん」の呼び名であると言われている。

シーボルトは1823年。
ドイツ人ではなくオランダ人と偽ってさ鎖国下の日本へやって来た。
長崎にあった出島のオランダ商館の専属医師になり、出島の外に蘭学を教える鳴滝塾を開いた。
塾生のひとりであり、塾頭を務めていたのが、後に蘭学者になった高野長英である。
後に蛮社の獄で捕らえられ、江戸伝馬町の牢屋敷に収監されるも、脱獄し諸国を転々と逃亡した。
幕府に追われる身となった長英を、一時的にかくまった場所のひとつとしていま尚残されているのが、
中之条町六合赤岩地区の養蚕農家「湯本家住宅」である。
その部屋は現在、「長英の間」と呼ばれている。

なんだか、歴史コラムのようになってしまった。
紫陽花のあの色合いには、彼方の月日を思わせる効果があるようである。
逃亡中の長英も、道中で紫陽花を眺めつつ、師であるシーボルトのことを思っていたのであろうか。
そして、明日も雨になるだろうか。

【天候】
朝より曇り、夕方から雨。

1622声 歯ぬかり

2012年06月11日

梅雨なのでどうしようもないが、空には厚い雲が垂れこめ、
湿度の高い不快な日が続いている。

朝食のトーストにバターを塗ったら、
トーストがやけにふにゃふにゃになってしまうし。
昼食に買ったとんかつ弁当のどんかつの衣が、
これまたやけに湿っぽくなっているし。
おまけに、夕食に食べたうどんが、
にちゃりにちゃりと歯ぬかりして喉ごしが悪かった。

そして、この文章にもキレが無く、今日はあらゆることが、
一貫して梅雨曇めいていた。
こんな季節だからこそ、明日は喉越しのよい蕎麦でも、
さらりとたぐろうかと思う。

【天候】
終日、雨こそ降らねど梅雨曇。

1621声 木の清涼

2012年06月10日

昨日梅雨入りし、例年通り、しとしとじめじめした不快指数の高い日となった。
群馬県庁で開催されているクラフト展を観に行き、本屋に寄り道してからは、
自転車を停め、公園のベンチに腰掛けて、俳句を作っていた。
「句作に情熱を注ぎつつ」、と書きたいところだが、何の事は無い、
二日酔いなのであった。

二日酔いにこの梅雨時の不快感は意外に体に堪え、
倦怠感が甚だしかった。
夕方になってから遠くで蛙が鳴き始めたので、急いで家路についた。
おかげで、本降りの雨からは免れた。
梅雨のじめじめした最中にも、木工品と言うのは清涼感があって、
とてもよいと感じた。
やはり、伝統工芸品とは理にかなっており、その底力を感じた。

【天候】
降ったり止んだり梅雨の天気。

1620声 ふにふに感

2012年06月09日

昨夜、である。
夕涼みに出掛けようと、夕闇の中で自転車に跨った。
ハンドルに手を掛けた瞬間、「ぬぎゅっ」と言う、得体の知れぬ触感。
反射的にハンドルから手を離すと、ぽてっと地面に落ちた小さな物体。
薄闇の中で目を凝らすと、その物体。
ひょこり、ひょこりと水道の流し台の裏へ逃げてゆくではないか。

「蛙」
その物体の正体が、である。
逃げてゆく後ろ姿を眺めつつ、擬態の上手さに舌を巻いた。
つまり、ハンドルの黒色との保護色になるように、
自らの体色を灰色にしていたので、そこに夕闇も相まって気付かなかった。
にしても、わざわざハンドルの上で休まなくても良いのに、と思うが、
私と自転車都合は、あの蛙に関係しない。
手にはまだ、あの「ぬぎゅっ」とした、蛙のふにふに感が残っている。

【天候】
梅雨入りで、終日雨。

1619声 ふんわり

2012年06月08日

群馬県の館林市では本日、気温30℃を超えたそうな。
関東地方は明日にも入梅しそうな気配漂うこの頃、
はや今年の盛夏は例年になく暑い予感がする。

風呂上がりに麦酒を切らしていたので、
冷蔵庫の片隅に転がっていた焼酎瓶を開けた。
水割りにして飲むが、如何せん、喉が渇いているものだから、
ごくごく飲んでしまった。
それでいま、いささか軽い頭痛を感じている。
血中のアルコール濃度が一気に上がった為であろう。
麦酒の、あのふんわりとした酔いが恋しい気分である。

【天候】
終日、雲多くも晴れて暑い。

1618声 蛍火

2012年06月07日

梅雨入り前の蒸し暑い夜。
そんな夜に思うのは、あの、蛍である。

風の無い蒸し暑い夜の、午後八時ごろから二時間程度。
概ねその時間帯が、蛍狩りに行った際、一番良く鑑賞できる。
それを知ったのは数年前、前橋市田口町にある「ホタルの里」へ、
蛍狩りに行ったからである。
俳句を作るようになってからは、もうすこし触手を伸ばして、
周辺ほ里山へ蛍狩りに出掛けるようになった。

「蛍」も「桜」同様、短歌や俳句などに親しみのある人には、人気の風物である。
先日、大宮へ句会に行った際、二次会の席で蛍の話になった。
そろそろ蛍の時期であるが、どこで観るか、と言う。
都内周辺でも、まだ鑑賞できる場所があるとか。
しかし、その数は大分まばらであり、また、光も弱いと聞いたことがある。
やはり、深い闇を抱く森の湧水に力強く飛ぶ蛍こそ、「狩る」値打ちがあると思う。
その席ではそんな意見こそ述べなかったが、杯の日本酒を舐めつつ、
瞼の裏に群馬の蛍火が思い出された。

【天候】
終日、晴れて蒸し暑し。

1617声 入口と出口

2012年06月06日

雨が上がったのは夕方になってからで、
夜空には千切れ雲の間から星がのぞいていた。
空気が澄んでいて、煌めく街の灯を抱いた薄闇の山並みの景色には、
そこはかとなく、夏の終わりの雰囲気が漂っていた。
しかし現在は、今週末にも梅雨入りしようかと言う初夏。
夏の入口と出口は、意外と近い場所にあるのかもしれない。

【天候】
朝より雨のち徐々に回復。

1616声 千々にちぎれて

2012年06月05日

まず、麦酒。
そして、枝豆に冷奴。
次に、冷やしトマトに茄子の浅漬け。
から、最近である。
焼き物揚げ物に、なかなか移行する事が出来ない。

元来、胃腸は強くない方だが、三十路に入って更にそれが顕著になった気がする。
そんな人間は、冷えた麦酒をガブ飲みせねばよいものを、
こればかりはどうしても止められぬ。

転じて、先月開業した東京スカイツリーである。
スカイツリーの麓(と言うのもおかしいが)、に「ソラマチ」と言う商業施設がある。
そこに入っている店舗のひとつに、「世界のビール博物館」と言うのお店がある。

「ビールパラダイス」
との異名をとる、大型のビアレストランで、ドイツ、ベルギー、イギリス、アメリカ、チェコ共和国。
と言うメッカの生ビールをはじめ、郷土料理を取り揃えた、ビールフリーク垂涎の店なのである。
日本初輸入の樽生ビールも数多くあり、この店の情報を目にした瞬間から、
私の心はもう千々にちぎれてしまってどうしようもない。
まだ麦酒がガブガブ飲める間に、一度でいいから入店し、心おきなく飲んでみたい。
そんなことを思いつつ、アサヒスーパードライのスカイツリー開業記念デザインの缶を。

【天候】
終日、曇りがちなる晴れ。

1615声 蕎麦屋で一杯 後編

2012年06月04日

昨日の続き。

まず生ビールをとって、枝豆で一杯やる。
前夜思い描いていたコースと、順序は逆になってしまったが、
「蕎麦屋で一杯」と言う念願が果たせて嬉しかった。
群馬の話、埼玉の話、そして俳句の話。
音楽に国境はないと言うが、俳句に県境はない。
なんだか、俳句の方は随分とスケールが小さくなってしまったが、
年齢性別などの垣根を越えて、「俳句」で繋がれるので、飲んでいても安心である。
ともすれば、同世代の男女と飲んでいる方が疎外感を感じてしまうかもしれない。

最後の日本酒の四合瓶を空け、締めとして、みなでざる蕎麦をたぐってお開きとなった。
ほろほろと酔っているが、時刻は午後六時前である。
葉桜の長い影が横たわっている、夕日の参道を歩きつつ、駅を目指す。
大宮の方々と、礼を述べてから駅で別れた。
たいぶ酔いが回っているはずだが、時間が早い為か、まだ元気が残っている。
帰りの電車で読んでいる文庫本。
これがまた、行きの高崎駅構内の書店で購入した、
「中島らも+小堀純」の「せんべろ探偵が行く」である。
昨年、集英社から文庫化され、一度新書で読んでいるのだが、
文庫のあとがきが読みたいが為に買ってしまった。

高崎駅へ着いて、駅にほど近いラーメン屋へ入り、まず瓶麦酒とラーメンを頼んだ。
日曜日の夜の街が、なんだか思ったよりも閑散としていた。
そして、素面の街にひとりの酔っ払い(私である)と言う異物が混入しているような感覚になり、
あまり美味くないそのラーメンを啜って、駅へ戻った。
あの、蕎麦屋で一杯やって、明るい内に帰る爽快感は、くせになりそうであると、
六月の生温い夜風の中で考えていた。

【天候】
終日、晴れて夏日。

1614声 蕎麦屋で一杯 前編

2012年06月03日

まず瓶麦酒を一本とって、天ぷらをつまみにやりつつ、ざるそばをたぐる。
それから氷川神社の参道を抜けて、二時間くらいゆったりと初夏の公園内を吟行。
こう言うコースを脳内に描きつつ、就寝した。
そのはずが、である。

バスの時間を間違えた事を皮きりに、列車の接続が悪かったり、
手頃な蕎麦屋が見つからなかったり。
昨夜の優雅な思惑は見事に打ち砕かれて、大宮駅を駆け出して、
氷川神社の参道を歩きながら、コンビニのサンドイッチをほおばっておる。
そんな有り様。
なにしろ、時間が無い。
投句締め切り時間まで、あと一時間。
ともあれ、大宮公園へ行って、すこし落ち着かねば俳句が出来ない。

自分が主に参加している俳句会は、群馬県にあるのだが、
関東を中心に各地にも同じ様な俳句会がある。
埼玉県のその俳句会は主に、さいたま市の氷川神社と大宮公園で吟行を行っている。
今年、桜の咲き始める時分に、そこへ初めて訪れたのだが、とても良い場所だと感じた。
大宮駅から程近く、あの駅界隈の露地の雑踏を抜けたところに、
氷川神社と言う神域、そして遊園地や小さな動物園のある公園が隣接しているのが面白かった。

サンドイッチを喉に詰まらせつつ、どうにかこうにか俳句をいくつかまとめて、句会に参加した。
句会では、自分の句に先程の「あたふた」加減が表れていなかったのでひと安心し、
新鮮で楽しいひとときが過ごせた。
句会後は、一番の古株である金時さんが音頭をとってくれ、先生共々、
会場となりの蕎麦屋で二次会となった。

続けるほどのことも無いのだが、後編はまた明日に。

【天候】
終日。晴れたり曇ったり。

1613声 不毛な朝

2012年06月02日

早起きはしてみたものの、昼間で机の前でパソコンをいじったり、
俳句を整理したりしていたら、昼になってしまった。

「早起き」
と言っても、最近は若い頃のように昼過ぎまでぐっすり寝ている事が、
生理的にできなくなってしまった。
遅くとも「朝」と言えるくらい時間に目覚めてしまう。
無論、年齢によるものだと思う。

俳句を整理。
これも、いたって不毛な作業になってしまった。
なにがしかの賞に応募する為に句を揃えていて、
よくよく考えてみれば、応募期間が過ぎていたり。
揃えてようやく出来上がった作品が、既成のとてもくだらない陳腐なものに見え。
陶芸家が焼き上がった作品を、「えい」と床に叩きつけるみたく、
「Delete」キーを押してしまう。

今朝はまさに、一時間くらいかけて句を見繕って、並んだ作品が、
これが面白くもなんともない。
そして、全て消去して、いま、昼過ぎである。

【天候】
終日、曇り。

1612声 部室と食堂

2012年06月01日

起きたら雨。
と言う、今日から始まる六月にふさわしい朝を迎えた。

昼に行きつけの食堂へ寄った。
厨房でラーメンを湯切りしている彼とは、同級である。
いつもは親父さんと一緒には働いているが、今日はその姿が見えない。
聞けば、親父さんは骨折で入院中とのこと。
なので、いまは店の夜営業をいったん中止にして、昼に専念しているらしい。
不幸な話題はすぐに幸福な話題に転じて、二人目の子供の話。
もうすぐ生まれて来るらしく、その準備をぼちぼちせねばと言っていたが、
結婚もしておらぬ私には到底、深く踏み込めない話である。

話し込んでいる間に最後のお客さんが帰って、しばらく、静かな店内になった。
向こうの椅子に腰かけているおばちゃんは、テレビに夢中。
食堂が好きな理由のひとつに、このゆったりした時間がある。
部活の練習をさぼっている者たちが集まる、西日差し込む卓球部の部室とでもいおうか。
この居心地の良い、頑張らなくてよい感じ。

ラーメンを啜っている最中にも、彼と話している最中にも、終始。
向こうの壁に貼ってある、水着の娘がジョッキを持って微笑んでいる麦酒のポスターが、
気になっていた。

【天候】
雨のち曇り。

1611声 全力で走る

2012年05月31日

思えば、全力で走ったのはいつだったか。
容易には、思い出せないくらい。
いまとなっては、全力で走るのが、何だかこわい。
体勢を崩して転びそうだから、である。
子供は、よく、全力で走っている。
そして、よく、転んで怪我をしている。
それでも、また、走って転んで怪我をする。
だから、子供はどんどん成長できる。
ならば、大人は。

【天候】
終日、曇ったり晴れたり。

1610声 更衣

2012年05月30日

明日ではや五月も終わり。
そろそろ、衣更えの季節である。

衣更え。
たって、学生ならば制服を夏服に変えたり、
勤め人ならば長袖シャツを半袖シャツにするくらい。
それも男の話で、女性はもう少しややこしいようである。

先日、あれは五月の下旬。
一月に一度の句会で会う女性陣がことごとく、衣更えしていた。
いつも着物の方は単衣に、その他の方は白を基調とした夏らしい薄着に。
男は私と先生だけであるが、いつもと変わらぬ格好である。
私に至っては、年中、ジーンズにシャツで通している。

女性陣の一人が、そのバッグまで随分と派手な物に衣更えしていたので、
その情景を詠んだ、私の挨拶句が、この日の句会でまずまずウケた。
 

【天候】
終日、曇天。