今週あたり、地方に住んでいる学生や、社会人などの帰省が始まるのだろう。
おそらく今週末は、各交通機関が帰省ラッシュで混雑。
しかし諸君、帰省は早めにするに越した事はない。
帰省のタイミングを逃すと、良い事がない。
と言う事を、瑣末的なエピソードに載せて。
帰省ラッシュに巻き込まれるのが嫌。
ってのを建前に、学校は冬休みに入ったのだが、アルバイトを続け、帰省するタイミングを見失う。
毎日、のんべんだらりと怠惰な酒を飲んでは、無為な日々を過ごしていた、学生時分の年末。
いよいよ今年も瀬戸際、大晦日の夕方。
ようやく重い腰を上げて、駅へと向かった。
頬を裂く様な寒風に向かい、人気の無い街中を抜け、自転車を駅まで飛ばす。
次の下り列車の時間までは、まだ大分時間が空いている。
腹も減っていたので、駅近く、寂れた佇まいのラーメン屋へ入った。
「失敗」
って、入口ドアを開けて一歩で確定。
カウンターの独り客と、厨房のおばちゃんが口論真っ最中。
ストーブで暖まった空気が横たわる、なんとも居心地の悪い、険悪な店内の雰囲気。
しかし、ぼんやりしている私は、ここでも帰るタイミングを見失って、おずおずと席に腰掛ける。
「はい、注文は」
って、水の一杯も出さないでぶっきら棒に聞く、厨房のおばちゃん。
その言い方が癇に障った。
のは、私よりもむしろ、論戦中のカウンターのおっちゃんだったらしく、
また激しい罵り合いが勃発。
「じゃあ、タンメンひとつ」
舌戦を割って注文。
しばしの停戦を試みる私。
「チッ」
私に向けたのか、おっちゃんに向けたのか、舌打ちを一つして、ガチャガチャ作り出すおばちゃん。
ますます過熱する口論を聞きながら、タンメンを啜る。
良く聞けば、この二人はどうやら親子で、両方かなり酒が入っている。
面がふやけてスープが温い、焦げた屑野菜が浮かんでいるタンメンは、涙が出る位不味かった。
そそくさと食べて、カウンターに代金を置いて席を立つ。
入口出際に、カウンター奥のテレビで始まった、紅白歌合戦。
その一瞬、口論が止んで、皆の注意はテレビに集中。
店を後にする、私の背中に、呂律がもたつく二人の声。
「よいお年を」