先日更新された「名店のしきたり」の第26回。
今回の名店は、伊勢崎市の「韓国居酒屋J」である。
私も、記事の筆者に何度か連れて行ってもらった事があり、
本文にもあるような韓国家庭料理を堪能した。
その中、私の持つ印象を、新しく塗り替えた酒があった。
マッコリ、である。
マッコリは、飲んだ事が無いでもない。
この酒とは、その程度の付き合い方だった。
焼き肉や韓国居酒屋へ大勢で行って、誰かが頼めば飲む。
自ら進んで注文した記憶はない。
しかし、この店の自家製のマッコリは、美味かった。
マッコリってのは、韓国の大衆酒。
酒類で言えば醸造酒で、まぁ日本で言うどぶろくに似ている。
醸造酒なので、当然、酵母でアルコール発酵させて、そのまま飲む。
マッコリの場合は、雑菌の繁殖を抑える為に乳酸発酵させる。
なので、一見、強そうな酒に見えるが、アルコール度数が麦酒程度に弱く、
ほのかに酸味があるので、口当たりがとても良い。
のったりと白濁した液面を見ると、ヤクルトでカルピスを割ったような感がある。
美味い事は、確かに美味いのだが、印象を新しくしたのは、その残り方、なのである。
酒が残るってぇと、当然、碌な事が無い。
あるのは、二日酔いと自己嫌悪ぐらい。
そこがこのマッコリは、違った。
「明日苦しむ覚悟」を決めた。
と言いたい所だが、現実は酒と状況に押し流され、
次々に杯を重ねていたこの日は、日曜の夜であった。
麦酒を飲んでマッコリを飲んで、また、麦酒を飲んでと言う始末。
千鳥足で終列車へ潜り込んで、明朝、驚いた。
予想に反して軽い。
体が、である。
つまり、マッコリが残っていないのだ。
あのアヤシゲな白濁からは想像し得ない、見事な去り際。
蒸留酒の焼酎やウイスキーだと、その液面はスッキリと澄んでいるが、
去り際がなんともよろしくない。
いつまでも、居座って、昨夜の復讐に精を出す。
酒と人は、見た目で判断できない所がある。
などと、格言めいた締め括りをしようと思ったが、止めて、蛇足する。
もしかしたら、韓国料理とマッコリの相性が良かったのかもしれないと、
書きながら思った。
そう言えば、唐辛子や発酵食品が多い韓国料理は、
いかにも新陳代謝が活性化しそうである。