日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。担当者は堀澤、岡安、すーさん、坂口、ぬくいです。この5人が月替わりで担当しています。令和6年度は4月(ぬ)5月(岡)6月(す)7月(堀)8月(坂)9月(ぬ)10月(岡)11月(す)12月(堀)1月(坂)2月(ぬ)3月(岡)の順です。

704声 スリル。スリル。スリル。

2009年12月04日

さて、700声記念特別企画も一段落して、本日からまた普段のひとこえ。
毎回、インタビュー形式なので、掲載内容は事前に仕上がっている。
かと言うと、そうでも無くて、掲載日に編集し、締め切り近くに慌てて掲載する。
と言った具合に、普段と左程変わらぬ進行状況だった。
私は日常、週刊誌数誌を、毎週とは言えない無いけれど、好きで読んでいる。
其処に掲載されている、作家のエッセイなど、毎週読んでは面白い内容に感心している。
週刊誌などのエッセイで、面白い点がある。
それは毎回の内容が、と言うよりも、「今回はきつそうだな」と言う様な、
「週刊」である事の「スリル」である。
週刊誌だから、当然毎週締め切りがやって来る。
大手週刊誌になると、連載の作家陣も売れっ子揃いで豪華である。
その多忙を極める作家生活の中で、新鮮な時事ネタを探し、取材し、
あるいは物語を作って書くと言う作業がいかに大変であるか、文面を見れば分かる。
行間から、冷汗三斗の四苦八苦具合が滲みだしている。
時がある。
そんな「スリル」を見つけては、田舎に在る穏やかな昼下がりのコンビニで、
立ち読みしている私は独り含み笑いをする。
翻って考えるに、言わずもがな、この「鶴のひとこえ」は日刊である。
日刊には日刊の「スリル」がある。
当然、私の書いているこの文面にも、私の冷汗がだらだらと流れだしている事だろう。
それを見つけては、PCのモニターの前で含み笑いをしている人が、
少ないながらいる事と思う。
これからも、まぁ、ひとつお手柔らかに。

703声 第700声記念特別企画「ヨロコンデがいる場所は笑顔があふれる」アンコール編

2009年12月03日

昨日の続き。
(抜井)話が盛り上がって、後編を少しはみ出してしまいました。
では、アンコールで今日も一つお願いします。
(千春)こちらこそ、今日もよろしくお願いします。
・らいぶ当日への意気込み、そして、一番の見所を、是非お聞かせ下さい。
そうですねぇ。
見所は、やはり日本語で歌う、「イマジン」だと思います。
この曲は、ヨコロンデでも大切に歌って来た曲なんです。
歌詞中にある、
「想像してごらん全ての人間を」
これは、そう簡単に出来る事ではないのですが、
「知らない人の人生を思う事」
それが、私たちの「ヨロコンデ精神」だと思っています。
そして、意気込みとしたら、私たちが目指す、
「目の前の人がヨロコンデくれるらいぶ」
それに尽きます。
ヨロコンデくれる様に、私たち全員が全力を尽くすだけです。
同時にそれは、見所にもなりますね。
・おそらく、このインタビューの行間からでも
「ヨコロンデ精神」が溢れていると思います。
さて、長時間のインタビューもこれで最後の質問です。
このサイトは「めっかった群馬」と言う名前なんですが、
ヨロコンデのらいぶで、県内各地様々な場所を訪れておられると思い、お聞きします。
今までの活動を通して、「めっかった群馬」と言える事や場所、
ありましたら聞かせて下さい。
群馬で…めっかった事…。
そうだ、ありました。
「前橋荻窪温泉いきいきあいのやまの湯」です。
・あの、赤城山の麓の日帰り温泉ですか。
そうです。
支配人をはじめとして、受付の方や皆さんが、元気いっぱいなんですよ!
私たちヨロコンデも、カラオケ大会の司会をさせてもらったり、
紙芝居をさせてもらったりしています。
疲れた体をゆったり安めて、そしていっぱい元気を貰って帰れる、
素晴らしい場所なんです。
是非、機会ありましたら、行ってみて下さい。
・そうでしたか、温泉は好きですから、今度是非行ってみます。
今回はありがとうございました。
インタビュー 抜井 諒一

702声 第700声記念特別企画「ヨロコンデがいる場所は笑顔があふれる」後編

2009年12月02日

昨日の続き、はじまりはじまり。
(抜井)当日の会場席数はどのくらいですか。
(千春)昼が500席、夜も500席用意しています。
満席にしたいんです。
県民会館小劇場に選んで頂いたヨロコンデですから、
当日、1000人の皆さんの笑顔で、満席らいぶをしたいんです!
・是非、そうなると願っています。
昼の部と夜の部では、ライブ内容が違うんですか。
昼の部は主に、ヨロコンデと一緒に声を出したり手を動かしたりしながら、
子ども達も一緒に楽しめるらいぶです!
最後に「笑顔」という歌を、会場みんなで大合唱したいですね。
夜の部は、岩渕健二ソロらいぶと、ヨロコンデらいぶのです。
ヨロコンデらいぶでは、私が、その大半を歌います。
語りや、オリジナル曲が多いですから、昼よりは年齢層が高めですかね。
・当日のらいぶに向けて、現在はどの様な活動をされていますか。
はい、実行委員会を、週1度開いています。
実行委員メンバーは年齢職業様々で、20代〜50代くらいまで30名弱おります。
当日のチケット販売は勿論の事、
ヨロコンデのらいぶを多くの人に楽しんでんもらえるよう、
実行委員の有志が、ヨロコンデと一緒に企画をしてくれています。
・当日のチケット価格はお幾らですか、また何処で購入できますか。
大人500円、高校生以下は無料ですが、整理券が必要になります。
購入できる場所は、会場の県民会館でも購入できますし、
大半の方には、ヨロコンデに直接連絡頂いています。
連絡先は配布しているチラシに書いてありますし、HPを見て頂けると分かり易いです。
その他、県内数ヶ所で実行委員の皆さんが、現在進行で販売所を広げてくれています。
・「芝居屋らいぶヨロコンデ」のHPは、このサイトの「つながり」からリンクされていますよ。
そうでしたね、ありがとうございます。
まずは、そちらにアクセスしてメールで連絡頂ければ、と思います。
・今回のらいぶはチャリティーだと伺いましたが、売り上げは寄付なさるんですか。
はい。
今回は、県民会館主催事業と言う事で、会場費や音響費用などは無料なんです。
チラシやチケットの印刷代、それから実行委員会の皆さんと、
らいぶ内容を企画をして行く中で、必要な経費などはチケット代から頂き、
その他は全て福祉の現場へ寄付します。
昼、夜合わせて1,000席を満席にする。
その意気込みは後編に収まり切れず、明日のアンコールへと続く。

701声 第700声記念特別企画「ヨロコンデがいる場所は笑顔があふれる」中編

2009年12月01日

昨日の続き、はじまりはじまり。
(抜井)県民会館でのらいぶ開催が決定して、周りの人たちからは、
どんな声が寄せられましたか。
(千春)「えっ、すっごいねぇ〜!」と、感心してくれる声が多いです。
その他には、「なんで県民会館で!?」と不思議がられたり、
「あんたら…アホだねぇ〜」と、呆れられたりしてますね。
ただ、「県民会館主催事業に応募したら、ヨロコンデが選ばれたんだよ!」と話すと、
「 頑張ってね!」って、皆、応援してくれるんです!
そう言う応援の声が励みになります。
当日は、是非、沢山の人に観に来てもらいたいです!
・皆、期待しているんですね。
では、当日の内容を聞かせて下さい。
現段階で、らいぶのセットリストは出来ていますか。
はい、現段階で決まっている曲目は「笑顔」と言う、
ヨロコンデのオリジナル曲です。
ちょっと歌うと、こんな曲です。
『悲しいことがいっぱいあるけど、 嬉しいこともたまにあるから♪
やっぱり生きていこうと思う♪やっぱり笑顔で生きていきたいね♪』
と言う曲で、これがヨロコンデのテーマ曲なんです。
・(拍手)流石、お上手です。
ヨロコンデのオリジナル曲も、沢山歌おうと思っています。
それと、「手のひらを太陽に」「しりとり歌」「上を向いて歩こう」「ビリーブ」
「糸」など、皆さんご存じの歌も織り交ぜて、親近感のあるらいぶにしたいです。
そして勿論、目の前の人たちを見て感じた事を即興で歌にする、
ヨロコンデぶっちの十八番、「即興歌」もありますよ。
・主に、楽曲披露が中心なんですか。
はい。
歌と話が目玉となっていますが、「紙芝居」も出来たらと、考えています。
「芝居屋らいぶ」ですから、いろんな面白さが詰まったらいぶなんです!
・当日のスケジュールが決まっていたら教えて下さい。
「昼の部」と「夜の部」の2回のらいぶです。
昼の部は14:00〜15:00まで、18:30〜20:30までが夜の部となっています。
どちらも、30分前に開場するつもりです。
夜の部の方が少し長いんですけど、初めの1時間は、ヨロコンデぶっちのソロらいぶを、
続いての1時間が、ヨロコンデ全体でのらいぶと考えています。
昼の部の方は、終わってから、ロビーで「紙芝居のおっちゃんらいぶ」と言う企画を、
現在検討中なんです。
らいぶが観たくなって来た方、明日の後編に期待を。

700声 第700声記念特別企画「ヨロコンデがいる場所は笑顔があふれる」前編

2009年11月30日

この日刊「鶴のひとこえ」、気付けばもう第700声。
と言う事で今回は、恒例の記念特別企画。
今回は、第300声の時にも出演頂いた「ぶっち」さんこと、
「岩渕健二」さん率いる、「芝居屋らいぶヨコロンデ」のボーカリスト、
「三友千春」さんにインタビュー。
ヨロコンデは、群馬県内を中心に、福祉施設やイベント会場など、
年間200回を超えるライブ活動を行っている。
そのパフォーマンスは多彩。
ギター1本での弾き方語りから、野外ステージでの司会までこなす。
そして、2010年1月24日(日)、長年の夢であった、
「群馬県民会館」での芝居屋らいぶが決定している。
当日への意気込み溢れるインタビューを収録して来たので、早速。
(抜井)ではまず、「芝居屋らいぶヨロコンデ」を初めて知った方もいると思います。
ヨロコンデとは、どの様なライブ活動の日々を過ごされているんですか。
(千春)そうですね、主に老人施設や、様々なイベント会場で歌を歌ったり、
話をしたりしています。
また、イベントの司会から、紙芝居まで、色んな事をやっています。
イベントでは、ヨロコンデぶっちがギターを持って歩き回り、
目の前にいる人の歌を即興で作って歌っていますが、とてもよろこばれていますね。
どんな場所へも、一声かけて頂ければ、ヨロコンデ行っています。
・表現方法が多岐に亘っていますが、現在のメンバー数は。
5人です。
この内、2人がステージでの演者の中心を担っています。
・2人とは、ぶっちさんと、千春さんですね。
はい、そうです。
その他に、「ときどきヨロコンデ」の方も沢山いるので、
時間が合えば駆けつけてくれるんです。
・そのヨロコンデが今回、「群馬県民会館」と言う、
規模から言っても「ハードルの高い場所」でのらいぶになると思いますが、
開催するきっかけは、どう言ったものだったのですか。
県民会館の主催する「県民芸術小劇場」に応募した事からなんです。
そうしたら、ヨロコンデが選ばれたんです。
いつものらいぶでは、「いつかは県民会館、その先は武道館で!」
なんて言っいました。
その夢が、活動を通して形になって、初の「県民会館らいぶ」が出来る事になりました。
・ヨロコンデの活動が、「県民の芸術」として相応しいと選定されたんですね。
当日はきっと、喜びが溢れるらいぶになりますね。
さて明晩は、当日のらいぶ内容に迫って行く。
乞うご期待で、ひとつ。

699声 ぬーん

2009年11月29日

「カピバラの入浴」
と言うニュースが、本日のニュースの中で、唯一心を和ませてくれた。
カピバラってのは、世界最大のネズミ。
丁度、中型犬くらいで、性格が穏やかな上に、ネズミとカバを足して二で割った様な、
なんとも愛らしい顔が特徴。
鼻の下が長く、全体的に「ぬーん」とした雰囲気である。
埼玉県に在る「こども動物自然公園」で、このカピバラ一家の入浴が公開されており、
大勢、見物客が詰めかけている。
と言うニュースだった。
不況に心中に殺人。
とどめに新型インフルエンザの猛威。
「もういい」などと、親父ギャグもぽろりと出てしまうくらい、
朝から晩まで暗いニュースばかり。
これから師走。
更に慌ただしくなる巷を思うと、あの風呂に浸かって、
「ぬーん」となっているカピバラ一家が羨ましい。
そう言えばたまに、露天風呂の岩の間で、それに酷似している人間もいるなぁ。

698声 此処は鉱泉銭湯也

2009年11月28日

先日、慌てて行って来たのが、富岡に在る、「大島鉱泉」と言う鉱泉宿。
この「鉱泉」ってのは、平たく言えば冷たい温泉の事。
日本の温泉法によると、25度以上でなければ「温泉」と定義されないので、
それ未満の湧水は鉱泉となる。
この大島鉱泉は、日帰り入浴もやっている。
料金は360円。
「群馬県公衆浴場業生活衛生同業組合」に加盟している、公衆浴場。
つまりは、鉱泉宿でもあり、銭湯でもある。
と、私が勝手に定義したので、行って来た。
女将さんにとても親切にして頂いて、写真を沢山撮らせて頂いた。
宿には、番台こそ無いものの、タイル張りの浴室、カラン、ケロリン桶、そしてタイル絵。
設えは、まさしく銭湯のそれ、であった。
鉱泉なので、やはり普通の井戸水とは一味違う湯心地。
湯上り、瓶コーラを飲んでいると、近所のおばちゃんが白菜を取りに来た。
女将さんとおばちゃんが、外に干してある白菜を見繕っている間に、
そっと声をかけて、なだらかな坂道を上がる。

697声 いつまでたっても

2009年11月27日

自らの性質の所為で、四苦八苦する事、多数ある。
四苦が八苦してくると、五苦五苦、いやゴクゴクと、麦酒を飲む。
からみ酒。
これも自らの性質の所為で、人にからむ事、皆無、なのだが、自分にからむ。
いつまでたっても、溜飲が下がらない。
夜半のコンビニ。
流行歌が鳴り響く店内。
客は私一人。
奥の冷蔵庫の扉を開けて、缶麦酒を一つ二つと、手に取る。
手に取ったまま、一瞬、茫然と考え事をしてしまって、
「ドスン」
と、冷蔵庫の硝子戸が重たい音と共に閉まる。
その瞬間、「ハッ」として我に返り、体を返し、レジへ向かう。
レジの横。
煮詰まったおでん。
財布の小銭をかき集めていると、クリスマスケーキのチラシ。
その派手なチラシに、一瞬、目を奪われた。

696声 宝くじ浪人

2009年11月26日

「この売り場から出ました」
なんて惹句の看板が掲げられている、宝くじ売り場に、行列。
郊外の大型スーパーなどで、よく見られる光景である。
先日発売された、年末ジャンボ宝くじを買い求める為、
また今年も恒例の宝くじ売り場に、恒例の行列が出来ていた。
私の住んでいる街でも、数年前、特に目立たぬ郊外スーパーの売り場から、
一等と前後賞が出た。
途端に、街は噂で持ち切り。
近所のラーメン屋で、床屋で、飲み屋のカウンターで憶測の域を出ない話が延々と続く。
無論、当選者は誰か、と言うその一点が皆、気になる。
そして、憶測や推測は、飛び交っている間に、事実無根な結論に達してしまう。
「この間のアレ、あそこの団子屋だってね」
「いやいや、俺が聞いた話じゃね、団子屋じゃなくて、
ほら、あそこの団地の一家だって」
私の得た情報では、結局、事実は真実に結び付かなかった。
今日、その売り場の横を通ったら、もう一等が出たのが数年前だと言うのに、
売り場前は宝くじ浪人たちの行列。
当たった時の用心の前哨戦が始まっているのだろうか。
売り場に並んでいる人は皆、心なしか、他人の眼を避ける様に、
こそこそ買っては、いそいそと黄昏時の駐車場の喧騒に消えて行く。

695声 色とりどりの俳句たち

2009年11月25日

「第12回ワルノリ俳句ing」の参加募集を昨日、締め切った。
次回の開催日は、1月2日と言う、およそ模範的日本人ならば、
炬燵でテレビを見ながらおせちの残りでもつついている日である。
ほんの片手ぐらいの人数でも、集まれば幸いと弱気になっていた。
ところがどっこい、である。
私もいささか驚いてしまったのだが、参加希望者が非常に多かった。
ワルノリ俳句ingとしては、過去最高人数での吟行になる。
なんだか来年の予定が決まってしまうと、一年を振りかえざるを得ない心持になる。
俳句と四季は密接に関係していて、俳句は、心象を四季の色絵の具でスケッチした、
画用紙の様だと感じている。
そのモチーフとして、「新年」と言うのは、一癖あって面白い。
新年を迎えた日本人の感情と言うのは、「めでたい」と言う一語に尽きる。
染之助染太郎では無いが、何はともあれ世間では、
「おめでとうございます」なのである。
それは句にも反映され、めでたい句が出来る。
めでたい句が沢山詠まれる句会ってのは、楽しい。
それにはまず、12月と言う箱根の山を無事に登り切らねばならない。

694声 百鬼園断腸録

2009年11月24日

悩み過ぎて、こめかみが痛くなって来た。
地震が来たら、両脇の本棚に押し潰されてしまうだろうと思われる、
鰻の寝床の如き古本屋で、煩悶していた。
買うかどうか、をである。
本の劣化を防ぐ為か、単に不精なだけか、半分切れかかった微弱なる電燈の淡い光の下、
時計の針が午後7時を鋭く指す。
悩みの種となっている本は、内田百?作品の旺文社文庫。
以前から探していて、古本屋で安く手に入れば、と思っていた本なのだ。
偶然見つけて、それも状態の良い物がまとまって7、8冊置いてある。
それならば直ぐにレジへ持っていけばよいのだが、
この手の作品は容易にそれをさせない。
立ちはだかっているのは、ただ一つの壁、価格である。
1冊500円。
文庫の古本で、これは高い。
いやむしろ、内田百?作品の相場にすれば妥当な価格なのだろう。
しかし私は、表紙が多少汚れていようが、本文に少々落書きがあろうが、
読めれば良いのである。
綺麗な本の500円よりも、劣化した本の250円を取る。
そう言う料簡の人間なので、煩悶の末に購入を断念して店を辞した。
後ろ髪を引かれる思いで、持っていた本を陳列棚へ戻して去る時、
振り返って本棚を一瞥した。
旺文社文庫の黄緑色の背表紙が、何だか怒っている様に見えた。
メガネをかけたじゃが芋みたいな百?先生のふくれっ面が、一瞬、頭に浮かんだ。

693声 国民酒権

2009年11月23日

先日参加した会は、ワインを味わう事が主題となっていた。
赤や白、若いのから熟したものまで、様々なワインを楽しむ。
私生活において、ワインだけをゆっくり味わいながら飲む、なんて状況は稀有だが、
キチンとしたワインはキチンと美味い。
と言う事が分かった。
私が酒席でワインを敬遠して来たのは、
今まで、正体不明のワインを飲み過ぎていたのかも知れない。
宴も酣。
ワインをひとしきり楽しんで帰り際、最後の一杯で、こっそりと生ビールを一杯。
サウナの後の水風呂。
夏山の清水。
そんな清涼感を思わせる、程良く冷えたその生ビールが、実に、美味い事美味い事。
風雅なワイン党は魅力なのだが、この分だとまだまだ、
ビール党からは離党出来そうにない。

692声 100km越しの一杯

2009年11月22日

いやはや、流石に遠い。
と、改めて今日の道中を振り返りつつ、晩酌をしている。
今日行って来たのは、栃木県は鹿沼市。
場所は宇都宮市の隣り。
私の住んでいる高崎市からは、片道約100km。
交通手段は自家用車で、全て一般道を走行した。
その程度の距離ならば、普段、県内でも走行しているのだが、
知らない土地で目的地を探す場合は、甚だしく疲労する。
しかも、目的地が銭湯なので、入浴後の帰路はより疲労が増す。
銭湯から出て、頬を撫でる夜風が気持のよい事。
いっそ、宇都宮辺りで一泊してから帰ろうかと、
気持まで銭湯の熱い湯で軟化してしまった。
風呂上がりの一杯を餌に、また100kmの道のりを帰って来た。
と言う訳で今、100km越しの一杯に喉を鳴らしている。
今日の銭湯はとても良い銭湯だった。
鹿沼市にただ一軒残る伝統銭湯で、特筆すべきはその立地。
栃木県では有名な「福田屋百貨店鹿沼店」から、道を挟んだ向かいに建っているのだ。
豪壮な建物の脇に、煙突から煙をたなびかせている銭湯。
入口には、明るい家族の絵が描かれた暖簾が揺れている。
その光景は、赤松の根に生える松茸。
その薫り高い松茸で、今日も地元の人等が憩う。

691声 まにまにうとうと

2009年11月21日

からっ風。
吹きすさぶ日は、空が澄んで、赤城山の長い裾野まで、輪郭がはっきりと見える。
しかし、この音。
軒先で切れる風の音や、騒ぐ木々たちの音を聞いていると、
なんだか非常に行動意欲を削がれる。
机の前にいて、音楽を聴いて珈琲等を飲みながら、目の前の窓に広がる青空を眺めても、
いまいち興が乗らない。
ぼんやりと往時茫々とした記憶をもてあそんでいても、
粗ぶる風の音に、気が散らされる。
頬杖ついて、どうしたものかと考える。
考えてるまにまに、うとうと寝ている。

690声 折れた赤ペン

2009年11月20日

校正を見ている。
今度発売する予定の、「銭湯の本」の校正である。
進行状況をざっくり言うと、現在10分の5割あたりまでは出来ている。
いやいや、4割あたりかな。
書籍化とは言っているものの、私の様な出版素人が自費でやろうってんだから、
時間が掛かる。
そして、その作業の大変さ、手続きの煩雑さを実感している。
原稿作り、写真選定、校正確認などの作業が、一向に進まない。
机上の紙面には、珈琲の染みばかり増えて行く始末。
やがて、堪忍袋の緒、凧の糸、なんでも良いが、兎も角、切れる。
癇癪。
赤ペンをへし折り、そのままコートをひっ掴んで憤然として表へ飛び出す。
そうやって、夜な夜な近所の本屋へ行っては、
目に止まった本の奥付あたりをチラチラと見て、参考にしている。
参考になりそうな本の頁を捲っていて、
「本屋に並んでいる本は、流石にどれも良く出来てる」と、改めて感心する。
いくらか気持ちも落ち着き、コンビニで赤ペンと缶珈琲を買って、家へ戻る。

689声 夜空の口論

2009年11月19日

マラソンの開催日が、とうとう近づいて来ていると言うのに、
一向に体が仕上がっていない。
仕上がりは勿論、当日の10kmを完走できる体力を備える事だが、
現在の私の目測では、5,6kmが限界かと思われる。
当日は知人等数人と一緒に出場するのだが、その中の一人である肝臓女史などは、
仕事帰り、スポーツジムへ行ってトレーニングしているとの事だ。
話を聞いていると、なるほど、ジムには運動設備が整っていて、
トレーニングをする環境としては最適である。
しかし、エアコンで快適な室温に調節された室内で、
ルームランナーに乗っかってペタペタ走るのも良いが、それでは得られない事がある。
私は、ここでも頻繁に書いている様に、夜、自宅近所を走っている。
それは、毎日ではなく、距離も2,3kmと短いものだが、
社会人となって運動と縁遠くなった現在、非常に新鮮な体験をしていると実感している。
まず、真冬の寒風吹きすさぶ田圃の畦道を、よろよろと走ってると、
否が応でも体と対話する事になる。
「体が重い」
「何故重い」
「昨日の疲労が残っているのか」
「いや、夕食を食べ過ぎみたいだ」
「もう少しペースを抑えろ」
「分かった分かった」
「よし、体が温まって来たぞ」
「じゃ、ペースを少し上げるぞ」
「あと一周走れるか」
「いやいや、もう無理だ」
「おいおい、そこをなんとか」
最終的には、対話が口論になってくる。
それでも、対話によって、相手の機微を捉える事は、より良い連携に繋がる。
単にスポーツジムに行くお足が無い為に、裏の田圃を走る羽目になっている。
冬の夜空の下、寒風に煽られ、鼻水垂らして走っている最中、
温かいジムをひがみながら口論の日々を過す。

688声 猫と流れ星

2009年11月18日

今宵は月の姿が見えない為か、星の数が多く、瞬いて綺麗に見える。
日中、冬晴れだったので、日が沈んでからは放射冷却で一層冷え込みが強くなっている。
こう寒いと走るのも億劫なるが、半ば習慣となっている手前、
靴の紐を締めないと、何だか寝つきが悪い。
深いため息と共に、裏の田圃へと吸い込まれる。
いざ走り出すと、いつもより体が重い。
気温が寒くて、中々体が温まらない事もあるが、最大の要因は昨日の深酒だと推察する。
マラソン練習を、雨天中止にした昨日、この機会とばかりに缶麦酒を積んでしまった。
それがボディーブローの如く効いていて、足腰が覚束ない。
そんな時に、前方の暗がりから、「サッ」と道を横切る白い影。
驚いて、心臓が一寸飛び上がってしまったが、よく見てみれば、
いつも出くわす猫ではないか。
「まったく、人間を馬鹿にして居やがる」
憤然として縺れる足を進める。
彼方の夜空には、無数の星が瞬いている。
星座の名称には疎いが、それでもオリオン座と冬の大三角形ぐらいは見当がつく。
冬の大三角形に向かって走って行くのだが、誰かが夜空を後に引いて行く様で、
一向に星たちに近づかない。
走っては引いて、引いては走って、どんどん逃げて行く。
そんな事を続けていると、左方向に煌めきを感じて振り向いた。
瞬きの間に煌めいて消えた、流れ星であった。
白い夜空の星たちに比べると、いささか暖色で、誰かが夜空の後ろから、
ナイフで斜めに切り裂いて光が漏れた様にも見える。
一瞬だったので、あるいは自らの疲労による幻覚ではなかろうかと思ったが、
やはり現実に流れた方に分があると感じる。
次回は瞬間を逃さぬ様、しっかりと見たい。
流れ星を掴まえる事は出来ないが、今度、あの白猫が現れたら、
ケツを蹴っ飛ばしてやろうと決めている。

687声 夜更けの俳句仕分け作業

2009年11月17日

政治家のセンセイ方は、行政刷新会議ってので、事業仕分けに躍起になっている。
と言うテレビニュースが、現在、私の部屋の14インチアナログ式テレビに流れている。
一方私の方も、マラソン練習を雨天中止とした為、俳句仕分けに没頭している。
これは、先日開催された「第11回ワルノリ俳句ing」の句。
結果の掲載予定は今週末なので、今の内からぼちぼち句を拾って書き始めている。
毎度の事であるが、夜更けに麦酒を飲みながら、
ミミズがのたくったかのごとき字が書いてある短冊を、仕分けている。
参加者の名誉の為に補足すれば、飲んでいるから手元が覚束ないだけで、
それでも、のたくり具合が一等尋常でないのが、私の短冊である。
今回は、古風な銭湯へ行く、と言うだけの単純かつ濃密な内容にも拘らず、
初参加者の方、2名に来て頂いた。
銭湯の入浴料が360円で、其処へ行く片道電車の乗車券が430円である。
つまりは、860円かけて銭湯へ入りに行った事になる。
860円の価値を道中に見出せたか否かは、私の知る由は無いが、
上毛電鉄と言う路線は、非常に稀有なローカル線であった。
その点を羅列して述べよ。
と言われたら、述べられない事も無いが、麦酒の泡を減らす様な野暮はしたくないので、
止めておく。
兎も角、群馬県にも面白いローカル線が残っているのだ。
仕分け作業で、目に止まった、参加者の句を一つ発表して終わる。
・何も無い何も無いけど落ち着くね
俳句にも川柳にもなっていないけれど、良い。
おそらく、大胡駅の駅舎を出た風景か、銭湯までの道のりか。
飾り気が無いけれど、人情に厚くてどこかほっとする、大胡の銭湯を連想させる。
こう言う句は、侘び住まいで独り背中を丸めて飲んでいる時に見ると、染みてくる。