夕暮れ、勤め先からの帰り道。
十字路で信号に捉まり、車列で信号待ち。
何気無く、前歩の歩道に視線を移すと、歩道に徒然と立っている、
年頃20代前半と思われる、ハイカラな女子。
徐に腰を落とし、前の車に近付いたかと思うと、ニコリと白い歯をこぼして、
運転席のドライバーにペコリと会釈。
釣られて、ドライバーが助手席の窓を下げると、そのハイカラ女子、
何やらA5判程の小さなチラシを渡している。
そして、2言3言喋ったかと思うと、また例の如く、ニコリ、ペコリ。
やがて、信号も青に変わり、車列が進む。
そのハイカラ女子、当然、私にはチラシも一瞥すらも、くれない。
以下、私の勝手なる推測。
彼女は、最近、近所に出来た、新規美容室チェーン店の従業員。
この春、美容専門学校を出て、その美容室に勤めている、新米美容師。
その美容室の営業方針に則り、当番の時には、往来で一生懸命、
クーポン券付きのチラシを配っている。
とまぁ、こんな具合かと思う。
駅に近い市街地などでは、良く見掛ける光景だが、
信号待ちの車に配るってのが、自家用車保有台数の多い、群馬県らしい。
私は子供時分から床屋、俗に言う理容室で頭を刈っており、未だに、
美容室で調髪した経験が無い。
そんな調子なので、美容的髪型関係の話は分からないのだが、
往来でチラシを配る大変さは、一寸分かる。
浅き我人生を振り返ると、駅でイベントのチラシを配ったり、
店舗入口で商品を売ったりした経験が、少ないながらも思い出せる。
そのハイカラ女子の一心な、ニコリ、ペコリを思い出しつつ、
現在、ささやかな願を認めている。
本日は、七夕。
短冊に走る筆、「幸あれ」と記す。